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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)


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91話 シルヴァネール

 深く切り立った崖の上で、俺は金ぴかのドラゴンと睨み合う。

 こいつは、執拗にルゥシールを狙う敵だ。

 ルゥシールの背に乗っているからか、はっきりと分かる。


 ルゥシールは、こいつを怖がっている。

 いつも笑顔の、あほのルゥシールからは感じられない、本物の恐怖。

 そんなものを、この硬く冷たい鱗を通して感じるのだ……



 だったら……


「……ルゥシール」


 俺はルゥシールの首に手を乗せ、そっと囁く。


「俺に任せとけ。お前のことは、俺が守ってやる」


 一瞬、ルゥシールの体が反応したように感じた。

 首の長いダークドラゴンに、今の囁きが聞こえていたとは思えないのだが。


 まぁ、どちらでもいい。


 俺の目の前に浮かんでいるいけすかねぇ野郎をぶっ飛ばしてやる。それ以外にやることが思い浮かばない。



 ジャシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 金ぴかが俺を威嚇するように大口を開ける。

 鋭い牙が整然と並ぶ、生き物に恐怖を与える口だ。……ふん、虫歯になれ、そんな牙。


 空中戦はどうやったって分が悪い。

 前回は洞窟の中でこいつが身動き出来なかったから素手でぶっ飛ばせたんだよな。

 けど、今の状況じゃリーチが絶対的に足りない。

 なら……


「メイベル」

「なにさぁ、変態ぃ」

「頼む」

「ん~…………あ、そゆことぉ? 分かったよぉ!」


 アゴでついと金ぴかを指すことで、メイベルには俺の意志が伝わったようだ。

 んじゃ、よきところで頼むぜ!


 俺はルゥシールの背を蹴り、金ぴかのドラゴン目掛けて飛び上がった。

 飛び乗ってやるのだ!


 が、金ぴかは俺の接近を察すると翼を羽ばたかせふわりと上昇していく。

 金ぴかに飛び乗れなければ、俺は崖を真っ逆さまでジ・エンドだ。

 が、そのためのメイベルだ!

 メイベルの風で俺の体を持ち上げて追撃だ!


「メイベルっ!」

「うん! がんばれぇ~!」

「………………は?」

「ふれぇ~ふれぇ~、王子ぃ~!」


 メイベルが、可愛らしい声で声援を送ってくれる。

 わぁ、頑張らなきゃ~!

 とか言っている間も、俺の体がギュンギュン落下していっている。


「メイベルゥ~~~~~~~っ!?」

「なによぉ? 応援してほしいんじゃないのぉ?」

「そんなもんで空が飛べるかぁ~~~~~~~~~~~っ!」

「もぅ……しょ~がないなぁ!」


 メイベルが腕を振ると、谷底から肌を刺すような冷たい風が吹き上げてきた。


「冷たっ!? 耳、痛っ!?」


 髪の毛の一部を凍らせつつ、凍てつく突風が俺の体を押し上げる。


「もうちょっと温かい風がよかったなぁ!」

「も~ぅ、男ってもんくばっかりぃ」


 メイベルの小言が近付いてきて、そして遠ざかっていく。

 谷底からルゥシールたちを追い抜いて、俺はぐんぐん上昇していく。

 そして、俺の体は金ぴか野郎に急接近する。


 にもかかわらず、金ぴか野郎は余裕の雰囲気を醸し出していやがる。

 まぁ、風に乗って直進しか出来ない俺だ。

 金ぴか野郎がほんの少し横へ、前へ、後ろへずれれば余裕でかわされてしまう。

 …………そう、思うだろ?


 俺の接近に、金ぴか野郎は翼をひとつ大きく羽ばたかせる。

 逃がすかよ。

 お前らが派手に暴れてくれたおかげでな、完全とは言えないまでも……ルスイスパーダに魔力が戻ってるんだよ。

 俺はルスイスパーダを振りかざし、金ぴか野郎に電撃を放つ。


「ジャァシャアッ!?」


 金ぴか野郎が全身に電流を流され一瞬硬直する。

 その一瞬が命取りだ。

 俺は、メイベルの風から離脱し、金ぴか野郎の背中へ飛び乗る。

 途端に暴れ始める金ぴか野郎。だが俺は、振り落とされまいと首にしがみつく。


「ジャシャア! ジャァァアッ!」


 不快そうに鳴きながら、金ぴか野郎はアクロバティックな飛行を繰り返す。

 おいおいおいおい、やめろやめろ! こんなもん、フランカじゃなくても酔う!

 背中に剣でも突き立ててやろうかと思ったのだが……これだけ暴れられるとまともな攻撃も出来やしない。

 なら……ドラゴン特有の弱点を突くか。

 ルゥシールが一瞬で弱体化する場所……首の付け根にある『他とは少し質感の違う鱗』を遠慮なく撫で回す!


「みゅっ!?」


 金ぴか野郎がルゥシールみたいな声を出し、全身を硬直させる。

 これは、イケルッ!


 俺はこれでもかとばかりに、執拗に、ねちっこく、容赦なく、めくるめく、『他とは少し質感の違う鱗』を撫で回してやった。


「きしゃぁぁああああああああああっ!」


 金ぴか野郎がこちらに首を向けて威嚇してくるが、『他とは少し質感の違う鱗』をむにむにと揉んでやると「ぅにゃぁ……っ!?」と、脱力して情けない声を上げる。

 よぉし、効いてる効いてる!

 そうと分かれば……


 コスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスコスッッ!!


「みゅぅぅぅううううううううううううううううううううううううううううっ!?」


 擦りに擦って擦りまくってやった結果、金ぴか野郎は完全に脱力し、真っ逆さまに谷底へ向けて落下し始めた。


「って!? おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいいぃっ!?」


 気絶してんじゃねぇよ!

 飛べよ!

 落ちたらシャレにならねぇだろうが!?


 あっ!?

 こいつ、魔力欠乏症になってやがる!?

 そう言われれば、こいつの魔力が物凄ぇ流れ込んできてると思ったんだよな!?

 くっそ、起きろコラ!

 飛べ!

 飛べよっ!


「あ…………やばっ…………バインする……」


 と、思った時にはもう遅かった。

 落下していく金ぴか野郎の背中の上で、俺は行き場を失った膨大な魔力を暴発させた。

 バインッ! と、盛大な爆発が起こり、俺と金ぴか野郎は渓谷の谷底付近で爆風に煽られた。

 そして、そのまま着水……


 着水直前に爆風によって落下速度が急激に落ちたことと、谷底が運河に繋がるような深い河だったことが幸いし……俺、なんとか生きてた。

 今のは、マジで死んだと思った。

 まぁ、とどめ刺しそうだったのは俺の「バインッ!」だけども!


「……ぷはっ!」


 つい最近も、こんな風に川に流された記憶がある。

 体を動かしてみるが、どこも異常はない。金ぴかが盾にでもなってくれたのだろうか。

 自分でも驚くほどにダメージがない。怪我もないし、打ち身も捻挫もない。

 これなら、なんの問題もなく岸まで泳いでいけるな。

 そう思った矢先、俺の視線の先。川下の方向へ約30メートルほど離れた場所に「ぷかぁ」と浮かんできた肌色の物体があった。

 それは、小さな、子供のお尻。そして、小さな背中、金髪の頭。

 THE・土左衛門。


「大問題だぁ!?」


 大慌てでクロールを開始する俺。川の流れに乗ってぷかぷか流れていくその子供の尻を追いかける。

 えぇい、桃みたいに川を流れていくと川下でババアに拾われちまうぞ!


 バッシャバッシャと水を掻き、素っ裸の子供へと追いつく。泳ぎが得意でよかった。


「おい、大丈夫か!?」


 抱き起こし、体を反転させて顔を水面から出してやる。

 そいつは、まだあどけなさの残る幼い女の子だった。

 目鼻立ちがシュッとしているが、頬がふっくらとしていて可愛らしい。

 メイベルと同じか、少し下くらいか。オルミクル村のちびっ子ルエラほどではないだろうが、見る限り八歳か九歳程度に見える。

 ……なぜこんなところに幼女が?

 しかも素っ裸で。

 もしこんな姿をドーエンに見つかっていたら、この子の人生無茶苦茶になるところだぞ。

 なんて危険な……


 って、流石にそこまでお目出度い頭はしていないさ。


「……こいつが、金ぴか野郎の正体か……」


 ルゥシールがそうであるように、ドラゴンは魔力を失うと人間の姿になるようだな。

 金ぴか野郎は野郎じゃなかったのか。

 しかし、こんな小さいのにあんなに強力なブレスを吐くとか……ドラゴンってのはどうなってやがんのかね。


「とにかく、こいつを放置するわけにもいかないか」


 俺は、金髪幼女を小脇に抱えて、ゆっくりと岸に向かって泳ぎ始めた。

 背中に乗せて泳いだ方が楽なのだが、そんなことをして途中で目でも覚まされたら厄介だからな。

 背中の上でドラゴンに戻られたら、流石に死ぬ。


 素っ裸の幼女をじっくりと観察する。

 胸、ちっさ!?

 いや、そうじゃない。

 俺は魔力が見たいのだ。

 金髪幼女の心臓付近……まぁ、おっぱいな……に、魔力が戻りつつあった。

 拡散された己の魔力を掻き集めているかのような速度で急速に魔力が回復している。

 ……回復力も常識外れだな。

 魔力が戻れば、こいつは再び目を覚まし、そしてドラゴンの姿に戻るだろう。

 それは厄介だ。


「…………しょうがねぇなぁ」


 しょうがない。

 仕方がない。

 他にやりようがないからな。

 うんうん、しょうがない。


 そんなわけで、仕方なく、俺は金髪幼女の胸を揉みながら岸へと泳いだ。

 集まる魔力を吸収し、そして、定期的に魔法を放ってあたりへ拡散させる。

 こうしないとまたドラゴンが大暴れするのだから、しょうがないだろう。


 ふと、岸の方を見ると……


「ご主人さぁ~ん!」


 ルゥシールが手を振っていた。

 周りにはフランカやテオドラ、四天王もいる。

 ルゥシールはなぜか服を着ていた……なぜだ!?

 あ、確かバプティストが荷物を谷底に落とせとか言ってたな……それで運よく荷物が回収出来たのか………………くそぉ、バプティストめ!? なんて余計な『正しい判断』をしてくれたんだ!?

 そこら辺の水草を巻きつけて「これしかなくて……」みたいな展開があってもよかっただろうに!?


「ご無事ですかぁ~!?」


 両腕をブンブン振るルゥシール。

 その下でぶるんぶるん揺れる巨乳。

 まるで、早く戻ってこいと言われているようだ。

 急ぐとしよう……そこに、山があるのだから。


 金髪幼女から奪った魔力を推進力へと変換し、岸へと急いで戻る。

 足が届くところまで来ると、俺は立ち上がり、抱えた金髪幼女をお姫様抱っこで持ち運んだ。

 もちろん、揉み揉みしつつだ。


「ご主人さん! よかった、無事だったんで………………一大事ですっ!?」


 俺の腕に抱かれた金髪幼女を見て、ルゥシールが悲鳴を上げる。 

 そうか。ルゥシールはこいつを心底怖がっているんだ。この金髪幼女の生存を知れば、そんな反応になるのも頷ける。


「安心しろ。こいつは気絶してる」

「ご主人さんが、気絶している幼女のおっぱいを揉み揉みし続けています!?」


 ん?

 なんか、思ってるのと反応が違うぞ?



「いや、これは、あれだ。しょうがなかったんだ」

「ご主人さんが、己の性衝動に抗えなくなっていますっ!?」


 んん?

 あれれ~、おかしいぞぉ~?


「……【搾乳】、言い残すことは?」

「介錯は、任せてくれたまえ、主よ」

「まてまて! いいから話を聞け!」

「いや、いいから揉み揉みをやめてください、ご主人さん!」


 金髪幼女をルゥシールに取り上げられてしまった。


「俺、助けたんだよ?」

「……生きてさえいればそれでいいということではない」

「主よ、節操という言葉を学んではくれまいか?」


 言われ放題だ。

 俺は絶対に最良の選択をしているはずなのに……


「あの、バプなんとかさん!」

「バプティストっす!」

「荷物の中に何か着るものはありませんか? この娘に着せてあげたいんです」

「あぁ、それならメイベルの着換えが」

「えぇ~、なんであたしのヤツなのぉ?」

「……メイベル、お願い。貸してあげて」

「ぅう……お姉ちゃんがそう言うなら……」

「……これ以上、【搾乳】の犯罪者フェイスは見ていられない」

「そうだねぇ! 今すぐに貸してあげるよぉ!」


 お~い、こらこら。お嬢さん方。


 なんとなく、俺から幼女を守るような布陣が形成されつつある。

 ……なんでだよ。


 ルゥシールが金髪幼女に服を着せ、そして河原に寝かせる。

 そして、頬を軽く叩きつつしゃべりかける。


「シルヴァネール! 大丈夫ですか? しっかりしてください、シルヴァネール!」


 シルヴァネールというのが金髪幼女の名前らしい。


「なんなら、俺がちょっと魔力を供給しようか?」

「ご主人さんはシルヴァネールへの接近は禁止です!」


 なんでだよぅ。

 ルゥシールのおっぱいを揉んでシルヴァネールにチューすればシルヴァネールも目を覚ますと思うぞ?

 人命救助なんだけどなぁ。


「…………んっ」


 シルヴァネールが小さなうめき声を漏らす。


「シルヴァネール!?」


 ルゥシールがガバッとシルヴァネールの顔を覗き込む。

 本当に心配しているように見えるのだが……お前、こいつに殺されかけたんだよな?

 この二人の関係がよく分からない。


「……んん…………ここは……」

「シルヴァ!? よかった、気が付いたんですね!?」

「ルゥ…………はっ!?」


 シルヴァネールが飛び起き、ルゥシールから距離をとる。

 が、体に力が入らないようでガクッと膝から崩れる。


「まだ動いちゃダメですよ! 水を飲んでいるかもしれないし……ね?」

「…………ルゥシール」


 シルヴァネールはルゥシールをジッと睨みつけている。

 対してルゥシールは、両腕を広げて敵意がないことを全身で表現している。不安げな笑みが心細そうに見える。


「……私は、闇を止めるために……」

「うん。そうですね。分かってますよ……」


 ルゥシールが、柔らかい口調で言う。少し涙声になっている。


「わたしを殺すのなら、そうすればいいです……でも、今は。もう少し横になりましょう。シルヴァの体が壊れてしまいますから……」

「…………ルゥ」


 シルヴァネールの瞳に宿っていた警戒心が徐々に薄れ……そして、シルヴァネールは静かに歩き出す。

 ゆっくりと、ルゥシールのもとへと近付き、そして、広げられた腕の中に、その小さな体を預けた。


「……シルヴァはいい子ですね…………ありがとう」

「…………うん」


 それは、どっからどう見ても仲のいい姉妹のようで……命を狙う者と狙われる者の姿ではなかった。


「ルゥシール。そいつは一体何者なんだ?」


 抱き合う二人に近付き、俺は静かに問う。

 ルゥシールは微かに体を固くし、そして、ゆっくりと俺を見上げた。

 不安が見え隠れするルゥシールの瞳と、警戒心丸出しのシルヴァネールの瞳が俺を見上げてくる。


「この娘は、わたしの…………妹のような存在というか……」


 言い難そうに言葉を濁す。

 視線が俺から逃げ、その言葉が真実ではないことを物語っている。

 いや、真実なのかもしれないが、それがすべてではない……そんな雰囲気だ。


 視線をシルヴァネールに移すと、シルヴァネールは人形のような整った顔をくっと持ち上げ、薄い唇から透き通るような声を漏らした。


「私は、ルゥシールと相反する存在……そして」


 感情の薄い瞳が俺を見つめ、平坦な声で言う。


「ダークドラゴンを葬るために生まれた者」



 端正な顔を少しも変化させずに放たれた言葉は、それだけで真実だと分かった。








いつもありがとうございます。



というわけで、

42話にチロッと登場した幼女、シルヴァネール再登場です。


ルゥシールを狙う謎のドラゴン。

ご主人さんはオスだとばかり思い、結構全力で殴ったりしています。

酷いですねぇ……

でも、相手ドラゴンですし。

そこは仕方ないのです。


で、幼女だと分かるや否や、

揉みましたねぇ~。

でも、相手美幼女ですし。

そこは仕方ないのです。


あと、ご主人さんがいるのは東京都ではありませんので、

条例もそこまで厳しくないので……まぁ、セーフ!



明日あたり、

この作品のページがなくなっていたら、

「あぁ、セーフじゃなかったんだ……」と、思っておいてください。



法律が許す限り続けます!




今後ともよろしくお願いいたします。


とまと

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