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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)


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90話 急転

 最悪の状況だ。

 つか、何体出て来るんだよ……キリがない。


 倒したら倒した分だけゴーレムは復活してくる。

 しかも、よりパワーアップしてだ。


「なぁ、ふと思たんだがよ、あの黒いの……魔石なんじゃねぇの?」


 ここまで厄介で硬い鉱石を俺は知らない。


「……その可能性は高い」

「なるほど……あれが……」


 フランカとテオドラも納得したようだ。

 オイヴィの話では、疑似魔石なるものの製造法も確立されているらしいが。

 このゴーレムどもを作ったのがマウリーリオの意志を継ぐものであるなら、疑似魔石を生み出すことも出来るのだろう。……厄介だ。


「一度退くか……」

「……けど、どうやって?」


 俺は逃げ道を模索する。


 …………崖、かな。一番可能性があるのは。


「ヤツらを落とすというのはどうだろうか?」

「ダメージないだろう、あいつらなら」


 テオドラが黒いゴーレムを指して言うが、あの強度だ。期待は出来ない。

 それに、土と同化出来るのであれば、苦労して落としてもすぐに戻ってきてしまうかもしれない。

 アルジージャでのミスリスゴーレムの移動速度は速かったからな。


「……崖から逃げる…………飛び込むの?」

「まぁ……そうなるな」


 馬車は諦めるしかないだろう。

 で、銘々飛び込んで、着地直前に風の魔法で衝撃を殺して…………命がけだな。


「ご主人さん!」


 俺を呼ぶ声に、ハッとする。

 もう一個ルートがあるじゃねぇか!


「空だ! 馬車を放棄するなら、空に逃げられる!」

「……ルゥシール?」

「なるほど。……しかし、全員乗れるだろうか?」

「やってみる価値はあるだろう! よし、ちょっと行ってくる!」


 丁度馬車がある。

 あの中でなら、ルゥシールも恥ずかしがることもないだろう。


 と、馬車に向かおうとした俺の両腕をフランカとテオドラにそれぞれ握られた。

 ……なんだ?


「…………いや、今回は、仕方ない……か」

「うむ…………仕方ない……か」


 なんだかよく分からんが、フランカとテオドラは自問自答をし、自分で納得したように重い息を吐き出し、そして俺の腕を解放した。


「……さっさと済ませてきて」

「うむ、さっさとな」


 そして、俺から顔を背けて突き放すように言う。

 ……なんなんだよぉ。


「……足止めは、そう長くもたない」

「四天王とワタシたちで可能な限り抑え込む。ルゥシールによろしく伝えてくれ!」

「分かった! 任せたぞ!」


 俺が駆け出した直後、背後から激しい衝突音が響く。

 戦闘が始まったのだ。時間がない! 急ぐぞ!


「ルゥシール!」

「はい! ドラゴンに変身ですね!」

「あぁ!」

「では、こちらで少しお待ちください!」


 きっぱり告げると、ルゥシールは一人で客室へと入っていく。

 ……って、ちょっとまて!


「おい、ルゥシール! 時間がないんだ、俺も一緒に……!」


 俺が言い終わる前に、ルゥシールはドアを少しだけ開けて顔を覗かせる。


「準備が終わるまで……絶対に覗かないでくださいね…………」

「……お、おぅ…………」


 そして、静かにドアが閉じられる。

 ……なんか、こういう昔話があった気がするな……なんだっけな……なんかの恩返し的な……

 あいつ、鱗で機織りでもする気じゃないだろうな……


 って!

 悠長にしている暇はないんだっての!


 俺は馬車に駆け寄り、ドアを思いっきりノックする。


「ルゥシール! もう時間がない! 開けるぞ!」


 ドアに手をかけ開け放とうとした、まさにその時、内側からドアが開かれた。

 開いたドアからルゥシールが顔だけを覗かせる。


「じ、準備が整いました…………ど、どうぞ」


 そう言って、おずおずと首を引っ込める。

 なんとなく、胸の奥の方がムズっとして、俺は「お、おぅ」と言い、客室の中へと入った。


「…………なに、それ?」


 客室の中で、ルゥシールはおかしな格好をしていた。

 首から下をすっぽり覆うような長い布を着ている。さながら、てるてる坊主のような格好だ。

 てるてるルゥシール?


「こ、これは、テオドラさんが作ってくださったもので……服が破れないようにあらかじめ脱いでおきたいというわたしの願いを聞き、考案された衣服なんです」


 首元はひもで縛ってあり、簡単にほどけるらしい。

 ドラゴンに変身して、体が急に大きくなっても、その紐さえ解けば何も破れないのだそうだ。


 ……ということは、あのローブのような布の下はすっぽんぽんか!?

 じぃ~~~~~~~~~~~~~…………っ!


「あ、あのっ! あまり見ないでくださいっ!」

「くっそ、なんで俺には透視能力が備わってないんだ!?」

「ご主人さんだけには備わって欲しくない能力ですね」


 ルゥシールが恥ずかしげに頬を染める。


「それって、すーすーしない?」

「よ、余計な質問は受け付けていません!」


 頬の赤が濃くなる。


 と、馬車が揺れるような地響きが聞こえる。

 そうだ。時間がないんだ。


「ルゥシール!」

「はい! 急ぎましょう!」


 そう言ってルゥシールの肩に手をかける。

 一瞬、ルゥシールの肩がびくりと震える。


「あ、ごめん!」

「い、いえ! お気になさらずに……さぁ、早く」

「は、早くって、そんな……積極的な……」

「ち、違いますよっ!? 皆さんが大変だろうから、急いで助けに向かいたいという一心で! 決して淫らな気持ちで催促をしているわけでは…………っ!?」

「お、おぉぉう、もちろん分かってるよ! みだ、淫らな気持ち? とか? 俺も、別にないっつうか、特にそんなだし!?」


 いかん!

 これは何回やっても慣れない!

 毎回心臓が破裂するんじゃないかと思ってしまう。


 みんなのピンチです!

 なので大至急ことに当たってください!


 脳内で、自分自身に命令を出す。

 とにかく、時間がないのだ!

 けど……やっぱり緊張するし…………

 時間がないのだ!

 とはいえ……やっぱりなぁ…………

 時間が!!

 でもでもぉ~!

 もたもたしてると、揉み揉みを楽しんでる時間がその分減るぞ!

 やろう! 今すぐやろう! すぐやろう! 今すぐに! そしてたっぷり!


「ルゥシール、行くぞ!」

「は、はいっ!」


 俺は勢いに任せてルゥシールの胸を鷲掴みに…………しようとしたけど、ちょっと待つ。

 立ったままってのはどうなんだろう?

 そばには三人掛けの長椅子もあるわけだし……


 俺はルゥシールの肩を優しく押して、長椅子へと寝かせる。


「ふぇ、あ、あの、ご主人さん……?」

「横になった方が……いいんじゃないかと」

「ぁう…………お気遣い……痛み入ります…………ふぁっ!」


 体を長椅子に倒す際、ルゥシールは短い息を漏らした。

 緊張しているのか動きがぎこちない。そのせいで、勢いよく倒れ込むような形になった。

 ……緊張すんなよ、ウツるんだから、緊張は。


「じゃあ、改めて……」

「は、はい……不束者ですが、よろしくお願いいたします」

「い、いや、こちらこそ……いただきます」

「め、召し上がれ……」


 よく分からない挨拶を交わし、俺はルゥシールの胸に手を乗せる。


「……んくっ」


 短い吐息に心臓が跳ねる。

 しかし、大量の魔力が流れ込んでくると、意識をそちらに向けることが出来た。

 ダークドラゴンの背に乗って、ここから抜け出すんだ。


 徐々に呼吸が荒くなるルゥシール。

 体内から魔力が失われていく感覚に、いまだ慣れていないらしい。少し苦しそうだ。


「大丈夫か?」

「…………ぅにゃい……」


 今のは肯定か否定か…………なんとなく肯定的な響きだった気がする。


「……きゅう」


 そして、魔力が尽きると同時にルゥシールは脱力し、首元から楔が消失する。

 それを確認してから、俺はそっとルゥシールとキスをする。


 預かった魔力をそっくりそのまま送り返す。


 あ、そうだ。

 首のひもを解いておいてやろう。首締まると可哀想だしな。

 蝶々結びのひもを引っ張ると、するりと抵抗なく紐が解け、はらりとローブの前が開く。

 あっ、やべっ! ちょっと早かっ…………………………ぉおうっふ。

 なんつうか………………ごちそうさまでした。


 そして、数秒後、ルゥシールの体が急激に変化していく。


「……き…………キシャ………………」


 ドラゴン化が始まったのだ。


 そして、そこで初めて気が付いた。

 服が破れるのは防いだけど…………ここ、馬車の中じゃん。

 絶対、壊れるよねぇ…………粉々に。あ~ぁ。


 そして、想像通り、馬車の客室を粉々に破壊して、ルゥシールがダークドラゴンの姿へと変身した。



 キシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 劈くような咆哮が空に轟く。

 漆黒の鱗に覆われた、全長15メートルの巨大なダークドラゴン。

 ルゥシールが本来の姿を取り戻す。

 暗黒よりも深い黒。その中で瞳だけが紅く、燃えるように煌めいている。


 その真紅の瞳が俺を捉える。

 遥か頭上から、ジッと俺を見下ろしてくる……そして。


「にゃあ」


 と、アホみたいな声で鳴いた。

 ……こいつは、生物として何か間違ってないか? これが、正解なのか? ドラゴンって、みんなこんな感じなのかな?


「ルゥシール。みんなを乗せて飛べるか?」

「きあぁ!」


 肯定。

 そうハッキリと分かるようにルゥシールは大きく頷く。


「よし、みんな乗れ!」


 馬車の外でゴーレムどもの足止めをしていた仲間たちに声をかける。

 ここから離脱して体勢を立て直す。

 ここには、魔剣を挟めるようなおっぱいもないしな!

 体勢を立て直したら、全部まとめてぶっ壊してやるからな! 覚えとけよ!



 キシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 ルゥシールがゴーレムに向かって漆黒のブレスを吐き出す。

 その間に、みんなが集まってくる。


「荷物は谷底に落とすんだ! 運が良ければ運河で拾えるかもしれねぇ!」


 バプティストが叫ぶ。

 オードゲオルの渓谷の底には川が流れており、その川はジオガドス運河に繋がっているらしい。

 本当に、『運がよかったら』だな。

 メイベルが風を起こし俺たちの荷物を馬車の残骸もろとも崖の向こうへと吹き飛ばす。


 ルゥシールのブレスで牽制しつつ、俺たちはしがみつくようにルゥシールの背に乗る。

 最後にメイベルを引き上げて全員が乗り込んだ。


「ルゥシール、飛べるか!?」

「き…………きあっ!」


 少し重そうにしながらも、ルゥシールは翼をはためかせて空へと浮かび上がる。

 しかし、速度が上がらずゴーレムの追撃を食らってしまう。


「きゃあぁ!?」


 メイベルが振り落とされそうになり、キモ男が咄嗟に腕を掴む。


「グレゴール、火!」

「言われんでも…………っ!」


 俺の指示に、グレゴールが特大の炎を放つ。

 しかし、ゴーレムは一瞬ひるむ程度で侵攻を止めない。


「崖の上へ! 最悪ゆっくり下降するだけでもいい! ここから離脱するぞ!」


 ルゥシールへ指示を出し、ゴーレムが追ってこられない場所へ誘導する。


「キモ男はメイベルを意地でも引き上げろ! テオドラとグレゴールはゴーレムを牽制! バプティスト! フランカが相当辛そうだから支えていてやれ!」


 全員に指示を飛ばす。

 フランカはかなり奮闘したようで魔力欠乏症目前だった。放っておけば落ちてしまいかねない。


 魔力に余裕があるのはグレゴールとテオドラとバプティストか。

 メイベルは、最悪の場合に備えて温存させておきたい。風使いだからな。

 キモ男は体力が本当になくて、幼女一人引き上げるのでひぃひぃ言ってやがる。オイヴィに言って腕立てを日課にさせなきゃな。

 テオドラは狭いスペースながらも、体のバネを利用して器用に剣とカタナを振るっていた。……今のテオドラに頼み事は出来ないか…………えぇい、やっぱりこの状況だと仕方ないか!


「グレゴール! ちょっとこの剣をおっぱいに挟んでくれ!」

「何をトチ狂っておるのだ、バカ王子!?」

「魔力を回復させたいんだよ!」

「百歩譲ってそうであったとして、私にそんな芸当が出来るはずがなかろう!?」

「お前はフランカかっ!?」

「……【搾乳】…………ちょっと話し合いたいことがある……」


 なんてことだ!

 魔力とおっぱいが両方あるのがルゥシールしかいない! 

 でも、そのルゥシールは現在ドラゴンの姿だし…………あれ、確か、敵を切っても魔力を奪えるんだっけ?


「じゃあ、グレゴール。斬っていい?」

「突き落とすぞ、バカ王子!」


 チキショウ、なんだよ、使えねぇな!?



 キシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 ルゥシールが気合いを入れるように咆哮し、なんとか崖の上へと移動する。

 陸地から5メートルほど離れた場所まで来て、ようやく一息つけた。


「これだけ離れれば、奴らも大人しく引き下がるだろう……」

「しかし、投石程度はしてくるかもしれん。油断は禁物だ」


 抜かりないテオドラはカタナをしまい、剣を両手で構え、来るかもしれない攻撃に備える。


「テオドラ、今のうちにちょっとおっぱいを貸してくれないか?」

「少しの間黙っていてはくれまいか?」


 こちらも向かずにバッサリ切り捨てられた。

 流石天才剣士。切れ味抜群だな。


 他の連中に目を向ける。

 メイベルはなんとかルゥシールの背中に這う這うの体で這い上がったようで。

 キモ男は全身汗だくで、メイベルは全身冷や汗塗れで、ぐったりしている。

 バプティストはフランカが落下しないようにしっかりと支えている。

 フランカは少し顔色が悪いが、なんとか身体を起こして座っている。

 グレゴールは――こいつ、律儀なのかな?――、胸が本当に寄らないものかどうか、必死に寄せて確認をしているようだった。

 髭のオッサンがドラゴンの背中で、ゴーレムを前にして、必死に谷間を作ろうとしている図というのも、なかなかにシュールだ。


「……ん?」


 俺たちを乗せたルゥシールが崖から離れるように移動し、おおよそ崖の真ん中まで来た頃、ゴーレムを警戒していたテオドラが声を上げた。

 ゴーレムたちのいる場所から10メートルは離れただろうか。

 ここまでくればゴーレムたちには手も足も出せないと思うのだが…………


「……げっ」


 ゴーレムへと視線を向けた俺は、とても嫌なものを目撃した。

 あの黒いゴーレムどもが二体三体と折り重なり、合体し始めやがったのだ。

 小さいゴーレムが合体し大きなゴーレムに。その大きなゴーレムがさらに合体しもっと大きなゴーレムに……という風にどんどん合体を繰り返し、最初にいた特大サイズのゴーレムが新たに誕生する。その数、実に三体になっていた。

 あの三体が合体したら、どれだけ大きくなるんだろうなぁ……なんて思っていると、その三体が身を寄せるように重なり始めたのだ……

 おいおい、冗談はヨシュア・レイフォードだぜ。あ、ヨシュア・レイフォードってのはブレンドレル王国騎士団の団長の名前な。これ、騎士団では鉄板のギャグなんだよな。冗談はヨシュア・レイフォード。


 で、そんなくだらないことを考えているうちに、黒い巨大ゴーレムは合体を完了させ、もう笑うしかないような超特大ゴーレムへと変身しやがった。


 全長は30メートルほどあるだろうか……とりあえず、ルゥシールよりもデカい。

 普通に考えて、ゴーレム三体の質量よりも多くなってやがる。チートだ、ズルだ、反則だ。

 ありえねぇぞ、マウリーリオ!

 厄介な技術遺してんじゃねぇよ、クソ先祖が!


 その30メートル超の巨体ゴーレムが、崖の上をフラフラ跳ぶルゥシールをしっかりと見つめて、大きく拳を振りかぶった。

 ……う~ん、嫌な予感しかしない。


 そして、次の瞬間、巨体ゴーレムは全身のバネを活かすように腕を振り抜き、神殿の柱のようにぶっとい腕を飛ばしてきやがった。


「避けろぉ、ルゥシール!」

「き、きあああっ!」


 根性で翼をはためかせ、ルゥシールが高速で飛んできたゴーレムの腕を回避する。

 肘から先を切り離して飛ばしてくるなんて、どこで得た発想だ!?

 けど、これで奴は片腕を無くし……………………生えてんじゃん。


「だよなぁ、再生するよなぁ、そりゃあ!」


 どこまでもチートなヤツめ!


「主よ、あれを! また何かをやらかすつもりらしいぞ!」


 テオドラの声に、ゴーレムに視線を向けると、巨体ゴーレムは地面を踏みしめ、己の足を膝まで地中へと埋めていた。……なんだ? 自分で動きを制限して、何をするつもりだ?

 その『何』はすぐに判明したのだが、正直、知りたくなかった。


 巨体ゴーレムの体が一度大きく波打ったかと思うと、胴体がぎゅるんと細くなり、それに向かって、長く長く伸びていったのだ。

 横に広がっていた質量を縦に使っているようだ。

 そして、足を固定して胴体を伸ばしたということは…………


「ルゥシール! 全速前進っ! ヤツはここまで来る気だぞ!」

「きぁぁああっ!?」


 予想通り、巨体ゴーレムは伸びた体を蛇のようにうねらせて、崖の上へとその体を伸ばしてきたのだ。

 凄まじいスピードで、両手を広げた巨体ゴーレムの体が接近してくる。


「迎え撃つ!」


 と、テオドラが剣を構えるが……体格に差があり過ぎる。弾き飛ばされるぞ!?


 こうなったら、俺がなんとかして……と、打開策を考え始めた時、巨体ゴーレムの体が轟音を響かせ叩き落とされた。

 すぐそこまで迫っていた巨大な体が、上空からの力によって勢いよく崖の下に向けて落下していく。

 地面に埋め込まれた下半身と繋がっているため、下方向へ落ちていった巨体ゴーレムの体は限界まで伸び切ると足元の方向へと弧を描くように戻っていった。


 一体何が……


 そう思って視線を上げると…………


「あれは……」


 俺たちよりもっと高い空の上に、黄金色に輝く一頭のドラゴンが浮かんでいた。

 かつて、グレンガルムの丘の上で見た、あの金ぴか野郎だ。


 ルゥシールを殺そうとしていた、あのゴールドドラゴンが、そこにいた。



 キシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 突然、ルゥシールが咆哮を上げ、ゴールドドラゴンに向かって漆黒のブレスを吐きかけた。

 凄まじい勢いで吐き出されるブレスは、夥しいまでの魔力を含んでいて……一目で全力だと分かる。

 見かけるなり即全力。完全に潰しにかかっている。

 ルゥシールがそうするほどに、あの金ぴか野郎はヤバいってことか……?


 世界中の光を飲み込もうとするかのように、漆黒のブレスは容赦ない勢いで広がっていき、金ぴかのドラゴンに達する。


 が――



 ジャシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 金ぴかドラゴンが吐き出した光り輝く黄金のブレスが、闇を振り払う。

 ルゥシールの漆黒のブレスが完全に押し返され、霧散し、打ち破られた。

 そして、漆黒のブレスをかき消して尚、勢いが弱まらない黄金のブレスが俺たちに襲い掛かってくる。



 キシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 ルゥシールが翼を大きく羽ばたかせ、崖の下へと急降下していく。

 俺たちの重みを利用して、通常よりも早い速度で下降……いや、落下していく。


 そこへ、巨体ゴーレムが再び体を伸ばしてくるのだが…………


 ザンッ!


 という、神経を削ぎ落されるような、耳に不快な音を発し、巨体ゴーレムの体が黄金のブレスに飲み込まれ…………そして、消失した。


 あの硬い黒いゴーレムを一瞬で……なんて威力だ。


 崖の下へと急降下していくルゥシール。

 しかし、金ぴかドラゴンはその速度に追いつき、余裕すら感じさせる態度で隣にぴたりと並んだ。

 ドラゴンとしての格は、間違いなく金ぴか野郎の方が上だ。

 ルゥシールでは逃げ切ることも出来ない。しかも、俺たちを背に乗せているこの状況では尚更……。


 金ぴかドラゴンがこちらを見つめる。


 真紅に輝く瞳が俺の姿を捉え、あからさまに顔をしかめやがった。

 ……ほぅ、覚えていてくれたか。


「じゃあ、またぶっ飛ばしてやるよ」


 俺は金ぴか野郎を指さして、ついで自分の頬に自分の拳をぶつけた。

『お前をぶっ飛ばしてやるぜ』と、伝えるために。



 ジャシャァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!



 怒り狂ったように金ぴか野郎が牙を剝く。

 俺はルゥシールの背中の上で久しぶりに再会したバケモノと睨み合った。








ご来訪ありがとうございます。



我が大日本帝国における文化の移ろいゆく様の、何とも目まぐるしきことと言えば筆舌に尽くしがたく、

巷にて若人の話題に上ること頻繁なる「文筆家になるらむ」は、

仮想電子空間にその名を轟かせ、万人の娯楽となるも、

中に多種多様なる創作物の反乱すること暇をみず、

かくいう拙作もまたその八百万の創作物群の末席に名を連ね……



う……




うぅ………………




ぅわぁぁああああああっ!


パイスラァァァァアアアッ!


あと、ふくらはぎと土踏まずぅぅううううっ!


巨乳も貧乳もどんとこぉぉおおおおおおおおおいいいいいいぃぃっ!






……はぁっはぁっはぁっはぁっ………………





固い言葉では何も伝わらない!

私たちは、私たちの言葉で、私たちの本当の想いを伝えるのです!

不格好でもいいじゃない!

間違っていてもいいじゃない!

時には正しくなくたっていいじゃない!


伝えたいことを、

大きな声で、

多くの人に、

自分の言葉で伝えたい!




ちっぱいが好きです! でも、下乳の方がもぉ~っと好きです!




大日本帝国を築き、この豊かで自由溢れる素晴らしい日本を作り上げてきた大先輩方!

なんかすみません!


「いとをかし」と現代語訳して「ちょっ、マジヤバいんですけどぉ!」と表現するような大人になってしまってすみません。


てふ(超)反省します。




というわけで、パイスラを我慢したらなんか色々違うのまで出てきてしまったので、次回からはまた自由にいきたいと思います。



どうか、今後とも飽きれずにお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。


とまと


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