89話 それぞれのレベルアップ っつっても、限界はあるけどね!
決して広くはないオードゲオルの渓谷に面する崖の上。馬車一台が多少の余裕をもって進める程度の道幅しかない、崖と山肌に挟まれたこの場所で、体長3メートルあまりのゴーレムたち二十体超に囲まれてしまった。
……多いわ。
逃げようにも、右手はそびえる様な山肌。この場所自体の高度が高いのか、見上げると霞みつつも辛うじて山頂が見て取れる。
ということは、左手に広がる崖の下は、気が遠くなるほど下の方にあるってことだな。
切り立った崖は、一度足を踏み外すだけで絶望にまみれながら人生の終了に向かって真っ逆さまに転げ落ちていくことだろう。
ゴーレムの群を回避しながら馬車を進められるほどの道幅もない……
「ご主人さん……前回、どうやって倒しましたっけ?」
ルゥシールが壁のようにひしめき合うゴーレムどもを睨みながら俺に体を寄せてくる。
確か前回は、地面を凍らせて逃げられないようにしてから、ミスリル製のゴーレムに魔力を流し込んで『魔法剣』の要領で崩壊させたんだっけか。
この数を崩壊させるのは骨だな……つか、ミスリル以外のヤツも混ざってるみたいだな。アイアンゴーレムにステンレスゴーレム、カッパーゴーレムに、あいつはダマスカスゴーレムか?
『魔法剣』では対応出来ないヤツもチラホラいやがる……
「まぁ、これくらいの数なら何とかなるのではないか?」
テオドラが腕を上げ、肩周りのストレッチをしながら言う。
「……魔力の核を破壊するだけの、簡単なお仕事」
フランカが指で何体かのゴーレムを指さして呟く。
やる気満々だな。
「じゃあ、俺らもやるっすかね!」
「ふん……ゴーレムなど…………美しくもない」
「えっとぉ、一人二体ずつくらい倒せばなんとかなるのかなぁ?」
「ふん、鉄屑共め……私の炎で溶解してやろう」
四天王もやる気に満ちた表情を浮かべる。
ゴーレムは約二十体。こっちは八人。けど、ルゥシールは決定力のある攻撃を持ち合わせてないから数に入れないとして……一人あたり三から四体ってとこか。
じゃあ、俺が五体潰せば楽になるよな。
「ルゥシールは馬車を守っていてくれ」
「はい! ……お力になれず、すみません」
自分がゴーレムを倒せないことを知っての発言だろう。
ルゥシールは寂しげな表情で頭を下げる。
もう、そんな顔すんなよ……
「気にするなよ」
俺はルゥシールの頭に手を乗せて言ってやる。
「お前は切り札なんだから、ここぞって時まで温存しとけ」
「……切り札…………」
いざという時はこいつの力が――ダークドラゴンの規格外のパワーが必要になるだろう。
「今はその時じゃない。ただそれだけのことだ」
「……はい。ご主人さん、ありがとうございます」
静かに頷き、そして眩しいほどの笑みを見せてくれる。
俺が頭から手を離すと、ルゥシールは一度深く頭を下げて馬車へと駆け寄る。
そんな俺たちのやり取りをじっと見ていたフランカが、すっと俺の隣へやってくる。
「……【搾乳】、私も力になれない……」
「いや、お前は力になれよ。目一杯なってくれ」
「…………」
何が気に入らないのか、じぃ~っと俺を見上げるように睨んでくるフランカ。
機嫌を損ねている場合ではないのだが……
「そんな顔すんなよ。期待してるんだからよ」
そう言って、フランカの頭をぽんぽんと叩く。
「……期待…………」
俺の言った言葉を繰り返し、そして柔らかな笑みを零す。
「……そう」
短く言って、俺に背を向ける。
どうやら機嫌が直ったようだ。背筋がしゃんと伸び、顔は見えないが機嫌がよさそうなオーラを全身に纏っている。
「……期待には、きっちり応える」
瞬間、フランカの周りに無数の魔法陣が展開する。
そして、間髪入れずにその魔法陣から一条の光が発射される。
一斉照射される光の筋が複数のゴーレムの胸に突き刺さる。と、光線がゴーレムを貫通するや胸に開いた穴から雷を纏った風が発生し、ゴーレムの全身を包み込むと一気に爆発した。
……何、この魔法?
「……核の崩壊を確認」
フランカに射貫かれたゴーレムは粉々に崩れ落ち、再生することはなかった。
……すげぇ。
「ほほぉ! やるなぁ、フランカ。これはワタシも頑張らないとな!」
フランカの魔法を見て、俄然やる気を見せるテオドラ。
俺の肩に手を乗せ、俺越しに覗き込むような格好でフランカに視線を向けている。
「うんうん。頑張らないとなぁ」
うんうんと頷き、同じ言葉を繰り返す。
「頑張らないとなぁ~」
徐々に、首が傾いでつむじがこちらに向いてくる。
あ、つむじが二つある……じゃなくてさ。
「よぉ~し、が~んばるぞぉ~!」
「いや、早く頑張ってこいよ」
「……………………」
首を回し、こちらへジトッとした視線を向けてくるテオドラ。
なんだよ。俺、何か間違ったこと言ったか?
「…………頑張らないとなぁ」
ふいっとそっぽを向き、再び俺につむじを向けてくる。
なんなんだよ、もう。
「ほら、いい子だから頑張ってこい」
向けられたつむじを力任せにグシャグシャと掻き乱してやる。
「ぉほっ」と、嬉しそうな声を漏らすテオドラ。髪の毛がグチャグチャに乱れてしまったにも拘らず、満足そうな表情でこちらを見上げてくる。
「ワタシは勝てると思うかい?」
「ん? まぁ、オイヴィ製の武器と、お前の腕があれば余裕だろ」
「だよね! よし! 今度こそ本当に頑張ってくる!」
ニカッと力強く微笑み、テオドラは駆け出す。
剣とカタナを抜き、空中へ舞い上がると踊るように二本の剣とカタナを振るう。
美しい流線を描き、巨大なゴーレムを撫でるように刃が走る。と、次の瞬間には硬質な金属の体を持つゴーレムがスパッといともあっさり切断されているのだ。
二度三度と刃がゴーレムを撫で、その度にゴーレムの体は小さく、細かく切り刻まれていく。
「これで、仕上げだ!」
グッと溜めを作った後、テオドラは二本の剣とカタナを広げて鮮やかに回転する。
刃が空気を切り裂いたとでもいうのか、突風が発生し、分厚い空気の層に飲み込まれて、切り刻まれたかつてゴーレムだったものたちは完全に消失してしまった。
……人間業じゃねぇな。
「貴様、あの二人に何をした?」
グレゴールが眉間にシワを寄せて俺に尋ねてくる。
いや、俺は何もしてないが?
「貴様に頭を触られた直後、あの二人の魔力が跳ね上がったように見えたが」
いや、別に俺が魔力を分け与えたわけでもねぇし。
気のせいだろ?
「試しに私の頭も撫でてみてくれんか!?」
「ふざけんな髭オヤジ!」
誰が髭オヤジの頭など撫でるか!
「いい子いい子してくれなきゃ嫌だもん!」
「『嫌だもん』じぇねぇよ、髭! いいからさっさとお前らも行ってこい!」
気持ちの悪い髭オヤジのケツを蹴り飛ばし、ゴーレムの方へと押し出す。
つんのめりながらもゴーレムに接近したグレゴールは、ゴーレムにぶつかる直前に魔法陣を展開し、瞬きをする間もないほどの一瞬でゴーレムを丸呑みにするような巨大な炎を発生させた。
が、オイヴィにも言われた通り、金属の体を溶かすには温度が足らず、ゴーレムを倒すにまでは至っていない。
「ジェイル、今だ!」
「了解だ! 僕の華麗な魔法を味わうといい!」
グレゴールの合図に、キモ男が魔法陣を展開させ、グレゴールがゴーレムを覆っていた炎をかき消すと同時に大量の水を浴びせかけた。
その途端、ゴーレムの体に無数の亀裂が走り、激しい破裂音と共にゴーレムが砕け散った。
……なんだ?
「激しく熱した石を急激に覚ますと粉々に砕けるのさ」
得意げにキモ男が説明をする。
おぉ、キモイ癖に凄いことをやってのけるじゃねぇか。
「その調子でがんばれよ髭キモコンビ」
「誰が髭だ!?」
「誰がキモイというのだ!?」
同時に不平を漏らす髭とキモ男。……いや、お前は髭だろう、グレゴール。
「こっちも行くぜぇ! メイベル!」
「も~ぅ、命令しないでよぉ、バプティストのくせにぃ!」
メイベルの竜巻がゴーレムを捕らえ動きを封じると、バプティストがゴーレムの体を構成する土を改変させていく。
瞬く間に砂粒へと変わり、ゴーレムはメイベルの風に飲み込まれるように掻き消えてしまった。
このコンビはゴーレムに関して言えば最強かもしれないな。相性がいいのだろう。
「やるじゃねぇか、ロリ巨乳コンビ!」
「それ、俺入ってねぇじゃねぇかよっ!?」
「ロリとか巨乳とか言うなぁっ!」
うん、元気があってよろしい。
あとはよろしく。
と、そうこうしている間にも、フランカとテオドラが大活躍してゴーレムを次々に屠っていく。
こりゃあ、俺の出番はないかもなぁ。
なんて思っていたのだが……
「ご主人さん、援軍が来ます!」
馬車を守り、周囲を警戒していたルゥシールが叫ぶ。
そして、その言葉の通り、山肌から、地面から、巨大なゴーレムがにょきにょき生えてきやがった。……折角いっぱい倒したのに、振り出しに戻された気分だ。
「まさか、この山にある土が尽きるまで湧いてくるのではあるまいな?」
テオドラが笑えない冗談を言う。……そんなことないよな?
「ゴーレムを作るのだって相当な技術と魔力が必要なんだ。無限に出来るわけじゃない」
俺は、オイヴィに鍛えてもらったルスイスパーダを抜き、構える。
フランカや四天王が魔法を連発してくれたおかげで魔力は十分集まっている。いける!
「一匹残らず叩っ斬ってやる!」
ルスイスパーダに魔力を込める。
オイヴィの屋敷の奥の間で感じた火の精霊の香りを思い起こし、ありったけの魔力でルスイスパーダに炎を纏わせる。
ほぼ透明で外周部だけが微かに黄金に輝く炎は揺らめくこともなく、静かに、しかし荒々しく、凶悪な熱を発生させる。
ちょっとでも触れれば、溶けちまうぞ、石っころ野郎ども!
俺は新たに現れたゴーレムに向かって走り出し、接近したものから順に斬り捨てていった。
ミスリル、ダマスカス、鉄、銅、亜鉛、石、泥、ダイアモンド……ありとあらゆるゴーレムを次々に斬り裂いていく。
炎を纏ったルスイスパーダに触れたゴーレムは、抵抗する間もなく切断され、切断面から夥しい熱量を持った炎を吹き出させ、次々に溶解していく。
き………………気持ちいい……っ!
「ふ…………ふふ…………ふはははははは! 我、無敵ナリッ!」
思わず高笑いを発し、使ったことがないような口調で叫んでしまった。
それくらいに切れ味が最高だ。
この剣、いい! 最高!
「オラオラオラァ! テメェらまとめて消し炭にしてやんよぉ!」
ざっと見た限り、一番堅そうな漆黒のボディをしたゴーレムに狙いを定め、俺はルスイスパーダを振りかぶり、全力のもとに振り抜いた。
が!
まったく気が付かなかったのだが、ルスイスパーダの魔力が尽きていたようで……刀身を包み込んでいた炎は完全に消失していた。
ガッッキン!
と、鈍い金属音が響き、俺の腕に強烈な衝撃が走る。
骨を伝って腕全体が痺れる。
神経を直接こすられたような不快な痛みが全身を駆け抜けていく。
「いっっっっっ……………………だぁっ!?」
ジンジンする腕を押さえ、俺はその場にうずくまる。
……なんで? ちょっと調子に乗ってただけなのに……酷くない、この仕打ち?
そして、蹲る俺に巨大な影が迫る。
漆黒のゴーレムが図太い腕を振り上げ、俺に向かって振り下ろしてきた。
やばっ、今から立ってたんじゃ間に合わ…………
「危ない、主っ!」
俺の頭上を跳び越えるように、テオドラがゴーレムの前に躍り出る。
そして、体をひねって二本の剣とカタナを漆黒のゴーレムの腕に叩き込む。
「……くっ!?」
また、鈍い金属音が響く。
ゴーレムの巨大な腕を弾き飛ばしたテオドラが着地をし、苦痛に顔を歪める。
……ゴーレムの腕が斬れていない。
「不覚……っ! ここまで硬いとは……」
バランスを崩したゴーレムだったが、すぐに体勢を整え、今度はテオドラに向かって腕を振り上げる。
「……させない」
俺の背後から声がして、三本の光線が駆け抜ける。
が、光線は漆黒のゴーレムにぶつかると屈折しあらぬ方向へと弾き飛ばされてしまった。
「……硬い」
あの黒いヤツは、これまでのゴーレムとはワケが違うらしい。
くそ、俺の『魔法剣』が使えればあんなヤツ……
ルスイスパーダに視線を向けるが、魔力を使い果たしたルスイスパーダは静かに眠っているように見えた。
こいつの魔力を回復させるには…………おっぱいに挟むしかないっ!
「おい、フランカ! この剣をおっぱいに挟んで、いや、ごめん! なんでもない!」
フランカになんて酷なことを頼むつもりだったんだ、俺は!?
フランカの人生を滅茶苦茶に壊す気か!?
しっかりしろ、俺!
「…………よく、聞こえなかったのだけれど……もう一度言ってくれるかしら?」
フランカがスゲェ怖い顔でこっちを見ている。
「いや、だから何でもないって。物理的に無理なんだから」
「…………よく、聞こえなかったのだけれど……もう一度言ってくれるかしら?」
フランカの視線がさらに鋭くっ!
その視線であの黒いゴーレム斬り裂けないかなぁ?
「フランカ! さっきの光線をもう一度お願い出来まいか!?」
暗黒のオーラを纏うフランカに、テオドラから声がかかる。
いいぞテオドラ! いいタイミングだ!
「……えぇ、いいわよ。今なら…………凄まじい威力の魔法が使える気がするもの」
カッと見開かれた目が俺を捉えたまま動かない。
体も顔もテオドラに向いているのに、目だけがこちらを見つめたまま動かない。
怖いよ……怖いよぅ…………
「では、あのゴーレムの魔力の核を探って、そこの装甲に連射してくれ!」
「……多少でも装甲が薄くなれば破壊出来るということね」
「そういうことだ! 頼んだぞ!」
テオドラがカタナをしまい、剣を両手で持ち精神を集中させる。
フランカはこくりと頷くと黒いゴーレムに向かって人差し指を突きつける。
「……四天王は、邪魔が入らないように他すべてのゴーレムを抑えて」
「「「「了解っ!」」」」
綺麗に揃った返事を返し、四天王が銘々魔法を発動させる。
もうすっかりフランカ四天王が板についてきたな、あいつら。
頼りになるよ、限りなくバカだけど。
「……行く」
呟くと同時に、フランカの指先から高密度の魔力を持った光線が何発も撃ち出される。
耳鳴りに似た空気の抵抗を感じる。
光線が空気を焼き、気圧に影響が出ているのかもしれない。
音もなく発射された光線は、黒いゴーレムの左胸を正確無比に捉え続ける。
ガガガ……と、連発する金属音が響き渡る。
「……抉れろ…………お前も胸が抉れてしまえ!」
凄い集中力を発揮するフランカが無意識に言葉を漏らす。
……いや、自分で「お前も」って言っちゃダメだろ……フランカは抉れてないからな。大丈夫だぞ? 自身持て、な?
そして、数十秒に及ぶ連続射出の後、光線はピタリとやむ。
「…………はぁっはぁっはぁっ!」
フランカが膝に手を突き、うなだれる。
アゴを伝い、汗が地面に滴り落ちる。
「…………はぁ…………はぁ…………勝った」
勝ちを確信しての発言か? と、視線をゴーレムに向けると、ゴーレムの胸はべこりとへこみ、抉れていた。…………勝ったって、胸の話!? 確かに、あれよりかはあるけども!
「……テオドラ、後はお願い」
その声が聞こえたのか……テオドラはジッと瞑っていた瞼をカッと見開いた。
瞳の奥に研ぎ澄まされた殺気が感じられる。
「…………あなたの剣で、その超ド貧乳を撃破して」
いや、超ド貧乳って……
「参る……っ」
小さく呟き、テオドラが地面を蹴る。
それは、まるで時間の流れがゆっくりになったのかと錯覚するような、美しい光景だった。
テオドラの体は流れる川のように緩やかに移動し、残像を残しながら真っ直ぐゴーレムへと向かっていく。
黒いゴーレムの前で跳躍すると、テオドラは黒いゴーレムの膝を蹴り、腹を蹴り、一気に頭上まで駆け上がっていった。
そして空中で大きく一回転すると、両手で構えた剣を、フランカがへこませた左胸へと突き立てる。
どんな攻撃も跳ね返していた黒いゴーレムの体に深々と剣が突き刺さる。
そして、黒いゴーレムの胸に足を着けたテオドラが全身の力を込めて剣を振り抜く。
ここまでの時間は、およそ瞬き一回分程度の、あっという間に違いなかったはずだ。
ただ、テオドラの美しい、舞うような剣技が脳内にしっかりと焼きつけられたのだ。
時間の流れが元通りに戻り、途端に耳を劈くような轟音が鳴り響く。
黒いゴーレムがその巨体を崩壊させ地面へと崩れ落ちていったのだ。
やりやがった、こいつら。
「……お見事ね、テオドラ」
「いや、フランカの魔法があったからさ。感謝する」
互いの健闘をたたえ合うフランカとテオドラ。
「……だというのに、こんな状況でもおっぱいおっぱい言っている男がここに一人……」
「ちょ、待て! 違うんだって! この剣はおっぱいがあれば無敵になれる剣なんだ!」
「なんというか……主にぴったりな最低の剣だな」
「最高の剣だよ!? オイヴィ渾身の、他に類を見ない、強力な魔剣なんだぞ!?」
どんなに力説しても、二人の心には届かないらしい。
なぜだ……こんなに素晴らしい剣だというのに…………
「とにかく、またゴーレムが出て来る前に移動をしよう」
「……そうね。私も魔力を使い過ぎて、これ以上は…………」
「みなさん! 上ですっ!」
フランカの言葉が終わる前に、ルゥシールの叫び声が響く。
咄嗟に頭上を見上げると、天を突くような高さを誇る山肌に、無数の黒い塊が…………
「な、なぁ、主よ。あれって、まさか……」
「…………いや、言わないで。考えたくない」
テオドラとフランカが山肌に現れた黒い塊を見て顔を引き攣らせる。
山肌から、さっきの黒いゴーレムが出現していたのだ。
それも、十体近く。
それだけで終わってくれればよかったのだが…………
「……あの頂上に見えるひときわ大きな物は何かしら?」
「うわ…………見つけたくなかったな、アレは」
山頂を臨むように見上げていたフランカとテオドラが深いため息を漏らす。
山頂付近には、他の三倍ほどもある巨大な黒いゴーレムがいた。
ジッとこちらを窺うように見下ろしている。
……あの位置、ヤだなぁ…………
そして、嫌な予感は往々にして的中するもので……
「みなさん、来ますっ!」
ルゥシールの声と同時に、山肌に現れていた黒いゴーレムが一斉に降下してきたのだ。
山頂付近にいた巨大なゴーレムもだ。
落石などというには生温い、命を刈り取るような速度で急接近してくる黒い塊たち。
流石に、これは無理だ……
「逃げるぞ!」
けれど、それすらも遅く…………俺たちはあっという間に黒いゴーレムたちに取り囲まれてしまった。
馬車一台が余裕をもって通れる程度の細い山道。
左手にはそびえるような山肌。
右手には奈落に続いているような切り立った崖。
俺たちの周りには黒々とした不気味なテカりをもつ黒いゴーレムの群。
そして、それを率いるようにでんと構える桁違いに巨大な黒いゴーレムが一体。
おまけに、俺たちはそろそろ魔力が尽きようとしている……
どうしろっつうんだよ、こんなのもん……
ご来訪ありがとうございます。
疲れる毎日にほんのひと時の清涼剤……
『どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです』のお時間です。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
楽しんでいただけたでしょうか?
あ、いえ。
前回パイスラではしゃぎ過ぎましたので、その分も込みで今回は真面目に行こうかと……
でもですね、
ルゥシールも悪いんですよ?
無防備にパイスラとかするから……
おまけに絶対領域ですよ?
そりゃ熱くもなるってもんですよ!
いいですか、世の女性のみなさん!
この世に……
パイスラと絶対領域が嫌いな男は存在しません!!
仮に、
親の仇だったとしても、
それが美少女で絶対領域で巨乳にパイスラだったら許しますもん!
それが、日本という国です!
絶対領域、パイスラという言葉を生み出した国、日本です!!
日本人に生まれてよかったー!!
…………はっ!?
またやってしまった…………
次回は、国営放送の報道番組くらいのテンションでお送りします……
前回と今回の分を取り戻すつもりで……
今後ともよろしくお願いいたします。
とまと
 




