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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)


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85話 三者協定 そして……

「随分と大量よの、ヌシよ」


 街の入り口まで出迎えに来てくれたオイヴィが、悪戯っ子のような笑みを浮かべて俺に言う。

 まぁ、サフラージャンバリーも四天王も予想以上に持って帰ってきちまったからな。


「なんでお前らが姉さんと一緒にいるんだよ!? 離れやがらねぇか!」

「僕にそんな口を利くとは、随分と偉くなったものだな、バプティスト!? お姉さまの威を借るムシケラめ!」

「もぉ~う! 二人ともうるさいしキモイし臭いぃ! お姉ちゃんに臭いがウツるから近付かないでぇ!」


 魔導ギルド四天王の三人は再会するや否や口論を始めていた。……あぁ、ウルセェ。


「ロ、ロリだ! 完璧なまでに可愛らしいロリっ子フェイスだ!」

「しかし、きょ、巨乳だぁぁ!?」

「完全無欠なロリっ子フェイスなのに、非常識なレベルの巨乳っ!?」

「んなぁぁあああっ! 歓喜するべきなのか、嘆くべきなのか、分からないぃぃぃっ!」


 カジャの町のアホな町民どもは、メイベルの登場に己らの中の絶対正義が揺らぎもだえ苦しんでいた。

 ロリ巨乳は、彼らにとって猛毒だったようだ。

 アイデンティティが崩壊しかねない、恐慌状態に陥っている。

 ……が、くだらないので無視しておく。


「くふふ……ヌシらが戻った途端この賑わいようじゃ。ほんに、飽きん連中じゃの」

「俺らのせいじゃねぇよ」

「ほぅ、自覚がないのかえ? これだけの影響力を持ちながら無自覚鈍感男とは……これはまた、どこかで罪作りなことでもしとらんか心配になるの」

「してねぇよ」


 まったく、オイヴィは俺のことを誤解しているのではないか?

 俺は、生まれこそ稀有な状況だったが、人間的には普通なのだ。

 わざわざ好んで騒ぎを起こすわけではない。平穏を愛する男なのだよ。


「オイヴィ。ただいま戻りました」

「うむ。テオドラよ、無事で何よりじゃ」

「無事…………はい、まぁそうですね」

「んん? 顔色が優れんの……何かあったのかや?」

「いや……」

「なんじゃ、水臭い。ワとヌシの仲じゃろう。胸に秘めておることがあるのなら素直に申してみぃ。そうしてくれるとワは嬉しいぞ?」

「…………では、お願いがあります」

「ふむ、言うてみぃ」


 町の入り口に停車している馬車のステップにちょこんと飛び乗り腰掛けるオイヴィ。

 足を組み、腕を組んで、話の続きを視線で促す。

 テオドラは少し考え込んだ後で、ちらりと俺に視線を向ける。……なんだ?


 深く息を吐き、テオドラがオイヴィを見つめる。


「今度の旅が終わったら、ここに帰ってきてもいいだろうか?」

「ふむ。ワは歓迎じゃが……なぜそのような話を?」

「いや…………ワタシはもう、お嫁に行けない身体になってしまったので……」


 言いながら、再度テオドラの視線が俺に向く。………………え?

 テオドラの視線を追うように、全員の視線が俺に集中する。………………えぇ?

 なんでか、魔導ギルド四天王の三人と町民の視線も俺へと集まってきている………………えぇぇ?


 なに?

 なにこれ?

 ドッキリ?


「…………ヌシよ」


 深いため息を吐いた後、オイヴィが重い口調で呟き、俺を見つめる。


「遂に……か」

「なんのことかはよく分からんが、俺に信用がないらしいことはなんとなく察したぞ」


 何が「遂に」だ。


「ち、違うのだ! ダーリ…………か、彼は悪くないのだ!」


 テオドラが俺の前まで駆けてきて、背に庇うようにして立つ。

 背を向けたテオドラが目の前に立ち、後頭部がよく見える。あ、つむじが二つある。

 で……何、この状況?


 オイヴィに対してはいつも敬語のテオドラがいつもの口調に戻っちゃってるし、なんだか必死というか……


「ワ、ワタ、…………っ、ワタシが気絶している彼を襲ったのだ!」

「「「「「なにぃーーーーーーーっ!?」」」」」


 誰の声だか分からない声が、とにかく沢山、同時に同じ言葉を発した。


 え、今、何言った、こいつ!?


「テオドラ、少し来るのじゃ」

「でも、オイヴィ……!」

「いいから、来い。ヌシはきっと何か思い違いをしておるのじゃ。ちと二人きりでゆっくり話を聞かせてくりゃれ、の?」


 オイヴィはテオドラの手を引き、半ば強引に引き摺っていく。


「というわけじゃから、ヌシらは荷物を持ってワの家に戻っておってくりゃれ。間違っても盗み聞きに来ぬようにの!」


 それだけ言い残して、オイヴィはテオドラと共にスラムの方向へと消えていった。

 オイヴィは、スラムの連中とは顔見知りらしいので、スラムに行くこと自体は問題ないだろうが…………むしろ問題があるのは俺の方だ。


「ご主人さん……」

「……説明を求める」


 ルゥシールとフランカをはじめ、その場にいる全員から冷たい視線を浴びせられている。

 ……いや、俺が聞きてぇよ。


 その後、ず~っと冷たい視線を浴びせられつつ、俺は荷物を引いてオイヴィの家へと戻っていった。

 上り坂が異様に辛く感じたのは、きっと気のせいではないだろう。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「はぁ、膝枕じゃと!?」


 事の成り行きを素直に話すと、オイヴィは驚いたような声を上げ、その後に盛大なため息をついた。……ワタシは、何かおかしなことを言ったのだろうか?

 先に二人でオイヴィの家へと戻ったワタシたちは、居間で向かい合って座っている。

 オイヴィの表情が、呆れたように歪んでいる。


「それで?」

「ですから……、後悔などはしていないのですが……、彼はワタシを守るために負傷したのであり、ワタシは彼を守りたいと……ですので、その行為自体について、ワタシは責任と覚悟をもって…………」

「ヌシの気持ちはよう分かったわ。して、どうしたいのじゃ?」

「後悔はしていませんが……あの、嫁入り前に、その……そういうことをしてしまったふしだらな女は、もう嫁のもらい手などないであろうし……いや、それはいいのです! 別に、そもそも、ワタシは嫁に行くつもりなどなかったわけで…………ですが、いざ、そう確信すると、なんというか……不安? の、ようなものが湧いてきて…………」

「それで、ワの家に置いてくれと?」

「ご迷惑なのは重々承知の上です! ですが、ワタシはオイヴィに身内以上の親しみと尊敬の念を抱いておりますし、お仕事のお手伝いをさせていただければと……」

「あぁ、うむうむ。ヌシがそう言うてくれるのは嬉しいんじゃがの……」

「『じゃが』…………なんでしょうか?」


 オイヴィが口を閉じると、途端に室内は静寂に埋め尽くされる。

 ワタシも、これ以上何も言えずに黙っているしか出来なかった。


「のぅ、テオドラよ」

「…………はい」

「ヌシがワの家にいたいというのであれば、ワは迎え入れることにやぶさかではないのじゃ」

「……っ! ありがとうございます!」

「まぁ、待て待て! そう急くな」


 思わず立ち上がりかけたワタシを、オイヴィは片手で制する。

 浮かした腰を再び床におろし、オイヴィの言葉を待つ。


「しかしの、どうもヌシは選択肢を自分で切り捨てておるように感じていかん」

「選択肢……ですか?」

「うむ、そうじゃ。のう、ヌシよ…………小僧と共におるという選択肢はないのかえ?」

「……っ!?」


 自分の顔が真っ赤に染まったことを、ワタシは自分で理解した。

 目の周りが熱を帯び、鼻の奥に詰まるような違和感が生まれる。

 今口を開けば、きっと熱せられた熱い息が漏れることだろう……


 オイヴィは何を言っているのだろうか……


 ワタシが、彼と一緒に…………

 そんなことが…………


「そ、それは…………有り得ません!」

「なぜじゃ? 無くはないじゃろうに」

「けど……ワタシは…………ワタシですよ? か、彼の周りには素敵な女性が数多くいますし、ワタシの出る幕など……」

「戦わずに逃げるのかえ?」

「に……っ!?」


 逃げる……

 戦わずに、背を見せて……逃げる?

 ワタシがしているのは、そういうことなのか……?


 けど、ワタシなど……


「ワ、ワタシが、そのようなことを考えれば、彼の迷惑に……」

「そんなもんは、かけてやればええんじゃ」

「人様に迷惑をかけるなど……!?」

「何を他人行儀な。ワや小僧には迷惑などかけまくっていいんじゃよ」

「オイヴィにそう言っていただけるのは嬉しいですが……彼は……」

「他人かえ?」


 他人……

 ワタシと彼は…………他人?

 きっとそうなのだろう。

 何を知っているわけでもない。

 ワタシは、彼のことを何も知らない…………彼にとってのワタシも、きっと……


「他人………………とは、思いたくないです……」


 そんなのは、悲し過ぎる。

 まるで無関係だなどと……思うだけで胸が張り裂けそうになる。


「テオドラよ。瞼を閉じてみよ」

「へ?」

「ほぅれ」

「……はい」


 言われるままに、ワタシは瞼を閉じる。


「ワの顔は思い浮かぶか? 声は思い出せるか?」


 もちろんだ。

 忘れるはずがない。

 ワタシは頷いてみせる。


「では、小僧はどうじゃ?」


 言われた途端に、彼の顔が瞼の裏に浮かんでくる。

 彼はよく笑う。呆れたような表情を見せることも多いが、その後には必ず笑顔を見せてくれる。

 見ていると、ホッとするような、ワタシの好きな笑顔だ。

 そして、声……


『力になれることがあったら、協力してやるっつってんだよ』


 懐かしい風景が思い浮かんだ。

 あれは、彼に初めて会った時のこと……

 彼を、オイヴィを誘拐した犯人だと勘違いして襲い掛かってしまった時のことだ。

 高所で動けなくなったワタシを、彼が助けてくれた。

 そして、その後もずっと、彼はワタシを助け続けてくれている。


「顔と声を鮮明に思い出せるうちは、他人ではないじゃろう。その分だけ、その相手がヌシの頭の中を占領しておる証拠じゃからの」


 今、鮮明に思い出せる分だけ、ワタシの頭の中に彼がいるのか……

 それは、なんだか嬉しいことのように感じる。


「聞けば、テオドラよ。ヌシ、小僧を庇いながら崖を落ちていったらしいの」

「はい」

「高所恐怖症で、高いところに行けば足がすくんでいたヌシが、その時は動けたんじゃろ?」

「あ…………」


 思わず、ワタシは瞼を開いた。

 そうだった。

 ワタシは高いところが苦手で……それで、最初に会った時も彼におんぶしてもらって崖を降りて……「お尻を揉ませる揉ませない」と大騒ぎをして……


「あ、あの時は、必死でしたので……」

「小僧を守りたい一心で、じゃろ?」

「………………はい」


 オイヴィに嘘は吐けない。

 すべてお見通しなのだから。


「ヌシをそこまで変えてくれた男じゃ。これから先、多少世話をかけたところで、小僧が迷惑に思うもんかい」

「けれど……!」

「もう少し信じてやったらどうじゃ?」


 ワタシの言葉を、オイヴィは静かな口調で制止する。

 そして、優しい笑みを浮かべて、こう言った。


「……ヌシの、惚れた男をの」


 そう言われて、ワタシは何も言えなかった。

 どんな言い訳も、口に出来なかった。

 そう、言い訳だ。これまでワタシが口にしてきたのは。

 結果を知るのを怖がって、言い訳を並べて、なんとか逃げ出そうとしていた。


 けれど、もう無理だ。


 オイヴィの前では、言い訳も出来ない。


「確かに、相手は強敵じゃの。ルゥシールとフランカは……」


 ルゥシールと言いながらオイヴィは両手で胸元に大きな膨らみを作り、フランカと言いながら胸をつるりと撫でる。……フランカに脅威を感じない……胸囲だけに。なんて。


「けどの、堂々とぶつかってこい。ぶつかって、もし玉砕してしもうた時は、ワと二人で酒でも飲み明かそうではないか」


 にししと、オイヴィは歯を見せて笑う。

 幼く無邪気なのに、どことなく大人で余裕のある笑み。

 そんな不思議な笑みを向けられて、心が軽くなった。


「玉砕するとは、限らないじゃないですか」

「ほぅ。言うではないか」


 そうだ。まだ、何も始まってはいないのだ。

 何を恐れることがあるのか。


「では、ヌシがどこまで食らいつけるか、ワに見せてくりゃれ?」

「はい! 必ずや彼を…………その、…………籠絡して……みせま……」

「そこで照れてどうするのじゃ」


 がははと笑い、オイヴィは膝を叩く。


「それからの、『彼』はいいとして、ヌシが小僧を呼ぶ時の『君』はいかんな」

「ダメ、ですか?」

「うむ。色気がないからの。もっと特別な呼び方を考えておくのじゃ」

「特別な……ですか」


 やはり、ダーリン…………いや、それは、無理だ。

 なにより、人の意見を拝借しているようで……それでは勝てない気がする。

 もっと、ワタシらしい、ワタシだけの呼び方を…………


「ま、なんにしても安心したぞ」


 オイヴィはすっくと立ち上がり、ワタシの隣を通り過ぎると、そのまま居間の隅まで歩いていき、ドアに手をかける。


「……と、言うことじゃ」


 そう言いながらドアを開けると、ドアの向こうにルゥシールとフランカがいた。

 ……いつの間に!?

 いつから聞かれていたのだ!?

 知らず、全身が熱くなっていく。

 まさか、彼もいるのでは…………!?


「小僧はどうした?」

「……外で四天王の相手をさせている。彼には、聞かせる必要のない話」

「ふむ。流石は、よく気が利くの」


 どうやら彼はいないようだ。

 ひとまずは安心だ。だが、どこかで残念に思っている部分もある。


「膝枕でしたか……」


 ルゥシールが安堵の表情を浮かべている。


「すまない。抜け駆けするような真似を……」

「いえ、大丈夫ですよ。膝枕くらい」

「『くらい』!? 膝枕を『くらい』だとっ!?」


 なんと言うことだ……

 男女間におけるもっともエッチな触れ合いである膝枕を『くらい』呼ばわりとは……


「ビッ乳……」

「流行ってるんですか、それ!? 違いますからね!?」


 その後、オイヴィから『膝枕はそれほどエッチな行為ではなく、それによって赤ちゃんが生まれることはない』と教わり、ワタシの常識は覆された。

 ルゥシールやフランカに確認をとってみたが、どうやら真実らしい。

 …………なんということだ。

 あんなに、緊張していたのに…………


「ただし、ご主人さんには内緒にしておいてくださいね」


 話の後で、ルゥシールが両手を合わせてそう言ってきた。

 彼には、あまり知識を与えたくないのだという。

 知ればやりたがるから、だとか。

 ……確かに、ワタシに求められても応えられる自信はまだないし、かといって他の女にやられるのも癪か…………よし、秘密にしておこう。


 こうして、何とも歪な協定が結ばれた。

 戦いは正々堂々。

 ただし、抜け駆けはありで。


「ふふ、いいな。こういうの」

「自信満々ですね?」

「いや、そうではなくて……同志というのかな……初めてなのだ、こんなおかしな関係は」

「それは、わたしもですよ」

「……ただ、その相手がアレだというのが…………世の不思議」

「ははっ、違いない!」


 顔を寄せ合って、共通の思い人を少しだけ悪く言ってやる。

 これだけの面子に想われているのに、まるでその気配に気付きもしていない彼への、ささやかな反抗だ。


「よし。話はこれで終わりじゃ。サフラージャンバリーを工房に運び込んで鍛冶の準備をするぞ。皆のもの、手伝ってくりゃれや?」

「はい!」

「分かりました、師匠!」

「……任せるわ」


 ワタシは元気に返事をし、ルゥシールはビシッと敬礼をして、フランカは力仕事を丸投げしてきた。

 ワタシたちは三者三様だ。

 彼女たちと出会えたことを、誇りに思う。


 高鳴る胸も悪くはないのだが……今は、もう少しだけ、みんなでこのまま楽しく……そんなことを願わずにはいられなかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 俺だけ除け者だ。……不愉快だ。


 オイヴィの屋敷に戻るなり、ルゥシールとフランカは居間へと向かった。俺も追従しようかと思ったのだが、フランカに「……絶対来るな」と言われ、凄い怖い目で睨まれた。

 なんだよ、新作下着の試着会をするわけでもあるまいし、別に一緒に行ったって…………もしかしてやってたのか、新着下着の試着会!?


「おいお前ら!」


 俺はその場にいた魔導ギルド四天王の面々に、凄く大切な質問をする。


「どんな下着が好きだ!?」

「変態めぇ! 話しかけるなぁ!」


 メイベルが微妙にうざい風力の魔法を顔面に向けて放ってくる。

 前髪が乱れ、呼吸がちょっとしづらくなる程度のいや~な風力だ。


「姉さんに穿いてもらうなら、自分は断然白っす!」

「真っ黒シスターのフランカに白か?」

「だからですよ! ギャップです! 真っ黒でドSなのに、下着は清純な白! そこがいいんです!」

「なるほど。お前、変態だな」

「王子に言われるとマジでヘコむっすよ!?」


 バプティストはギャップ萌えらしい。


「まったく、くだらないな、貴様らは」


 キモ男が髪をかき上げて、俺たちの話を一笑に付す。


「お前は興味ないのか、下着に?」

「あぁ、ないね。まったくない」


 カッコつけているわけでもなく、無理をしている風でもない。

 キモ男は正真正銘、女性の下着に興味を示していないようだ。

 割と真面目君なのか?


「女性は、下着をつけていないのが一番いいに決まっているだろう!?」

「お前、爽やかに言えば何でも許されると思うなよ!?」


 訂正。

 この中で一番の変態だった。

 髪の毛サラサラ~、ってしてんじゃねぇよ!


「……何をくだらない話をしているの?」

「うぉうっ!? ビックリしたぁ!?」


 いつの間にか、俺のすぐ後ろにフランカがいた。

 こいつは、気配とかそういうものがないのか……ちょいちょい背後に立ちやがって……


「……それからバプティスト」

「はい、姉さごふぅるぁああっ!?」」


 何の前触れもなく、バプティストの腹部で爆発が起こる。

 フランカの超高速詠唱によるものだ。

 ……こいつ、また速くなりやがった。


「……私を使って変な妄想をしないように」

「は、はい…………ありがとうございます……」


 なぜお礼なのか。

 謝罪する場面だろう、そこは。


「……【搾乳】も」

「お、おう」

「…………ほどほどに、ね」

「お、……おう…………?」


 ちょっとはいいのか?

 とは、聞ける雰囲気ではなかったので聞かなかったけれども…………いいのかな?


「ご主人さん」


 屋敷の中から、ルゥシールとテオドラが出て来る。


「オイヴィさんがサフラージャンバリーを鍛冶場へ運んでほしいそうです」

「そうか。じゃあ、四天王、よろしく」

「ふざけるなよ、王子!」

「そうだ! 僕にはこういう力仕事は向いていない! 貴様がやれ!」

「女の子に力仕事させるなんて、変態はやっぱり最低だよねぇ!」

「……みんな、よろしく」

「はい! 姉さん!」

「任せてくださいお姉さま!」

「あたしも頑張るよぉ、お姉ちゃん!」


 フランカの一声で、魔導ギルド四天王が一斉に動き出す。

 もう、『フランカ四天王』に改名しちゃえよ。


 あ、そう言えば。


「なぁ、ちょっと聞きたかったんだが」


 俺は、サフラージャンバリーを抱える四天王を呼び止める。

 特にメイベルとキモ男。


「お前らさ、なんでか俺たちの居場所を的確に把握してたよな?」


 こいつらの登場の仕方は少し異常だった。

 まるで、俺たちがそこにいることが分かっているかのように現れたのだ。

 そいつがずっと引っかかっていたんだよな。


「あぁ、そんなことぉ」


 メイベルがさも当然なことのように答えを教えてくれる。


「【魔界蟲】には、仲間の【魔界蟲】の居場所が分かる能力があるんだよねぇ。だからぁ、その反応が途切れた場所を調べれば、王子たちの居場所が分かるってわけぇ」

「なるほどな…………ん?」


 ってことは……


「見つけたぞ、王子よ」


 俺がそのことに気が付き、物凄く嫌な予感を抱いた瞬間、その予感が現実のものとして目の前に現れた。

 すなわち……


「あいつが、魔導ギルド四天王最後の一人か?」


 俺の問いには、魔界ギルド四天王の三人が頷くことで応えてくれた。

 ……あぁ、やっぱり厄介ごとが向こうからやってきたのか…………


 にしても、魔導ギルド四天王の三人の顔色が悪い。

 先ほどまでのふざけムードが一瞬で払拭されている。


「どしたんだよ、お前ら?」

「王子……覚悟をしろよ」


 バプティストが震える声で言う。


「あの人はねぇ……魔導ギルド四天王最強にして無敵の【魔界蟲】を持つ男……グレゴールだよぉ」


 メイベルが息をひそめて言う。

 額からは脂汗が大量に浮かんでいる。


「貴様たち……そうか、そちら側に『寝返った』というわけか……」


 グレゴールの言葉と同時に凄まじい殺気があふれ出してくる。

 それと同時に、グレゴールが魔力を解放させた。

 凄まじいまでの魔力が、嵐のように荒れ狂う。


「いいだろう。殺してやろう……むろん、抵抗がしたいならば好きにすればいいぞ」


 グレゴールの魔力は、魔導ギルド四天王のほか三人の魔力をすべて足したものよりも、もっとずっと巨大なものだった。

 これは、魔神クラスと言っても過言ではない。

 魔導ギルド四天王の三人が束になったところで歯が立つ相手ではない……


「王子……」


 キモ男のかすれた声が俺を呼ぶ。


「あらかじめ宣言しておいてあげるよ……」


 そして、キモ男が引き攣った笑みを浮かべて、からからに乾いた声で告げる。


「この場にいる者は、もう誰も助からない…………絶望の始まりだ…………」



 キモ男の言葉が終わると同時に、グレゴールは笑みを浮かべ、そして世界を焼き尽くすような紅蓮の炎を生み出した。








ご来訪ありがとうございます。


最近、『引き』過ぎでしょうか?

大丈夫でしょうか?


なんだかんだで魔導ギルド四天王最後の一人にして最強、【炎のグレゴール】登場です!


手に汗握るバトルが、今、始まr……あ、そう言えば、テオドラがついに真実を知りましたね!


四天王とかどうでもいいんです。

どうせオッサンでしょ?

後、後! 後回しです!



脱処女のつもり満々だったテオドラですが、実は単なる膝枕。

これを知らされた時…………恥ずかしかったでしょうねぇ。


皆さんも、そういう経験があるかと思います。


………………ないか。うん、ないな。



でも、ほら、恥ずかしい勘違いとかはありますよね?


「二日目でも安心!」っていうCMのキャッチフレーズを聞いて、

「いや、毎日取り換えろよ」とか思いましたよね? ね?


そういう感じですよ、きっと。



あの、ほら、あれですよ。

野菜の切り方の一つで、『乱切り』っていうやつ。

あれを『みだれ切り』だと思って、

「うっわ、なんか必殺技みてぇじゃね!?」つって、

「よぉーし、カレーでも作んべか」つって、

「ふははははっ! 貴様が人参か!? 我の必殺剣で葬ってやろう!」つって、

「喰らえ、必殺ぅ~……(←溜め)みだれ斬りっ!(切りは斬りに変換、かっこいいから)」つって、

したらオカンに「『らんぎり』」つって、すっげぇ素のトーンで言われたような、

そんな青春時代の恥ずかしさがあったに違いないのです。



まぁ、恥ずかしい!



でも、今日からテオドラはちょっと大人になりました。

お互いをライバルと認め合った三人娘が、今後どう動くか……

乞うご期待です!



あ、ロリ巨乳に苦しむカジャの町民たちはスルーの方向でOKです。

お薬、多めに出しておきましたので。




というわけで、


今後ともよろしくお願いいたします。



とまと

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