25話 遺跡侵入 口を開ける不気味な通路
古の遺跡。
結界の施された石門をくぐり、鬱蒼と茂る魔力を帯びた植物林が広がる庭を突っ切る石畳の上を歩くこと数十分。ようやく、石造りの古い建造物が目の前にその姿を現した。
「おじゃましま~す」
「その掛け声、違くない?」
礼儀正しく挨拶をする俺に、躾のなってないお子様エイミーが茶々を入れてくる。
まったく、育ちを疑うね。
ベルムドとアーニャは何をしていたんだ。
ヤギの乳ばっかり絞ってないで、少しは娘の乳の発育にも気を向けてやれってなもんだ。
「今度ちゃんと言っといてやるからな」
「『何を』かは知らないけど、なんかイラッてするから絶対やめて」
そうか?
本人がもう諦めてしまったというのなら、俺は何も言わないけどな。
まぁ、母親があれだからなぁ……遺伝子って、怖いよなぁ。
「……憐れんだ目で見ないでくれる? 射るわよ?」
こいつは、優しさというものに慣れていないのかもしれないな。
俺がもっと優しくしてやろう。
こうして一緒に遺跡に来ているのも、何かの縁だしな。
「……で、だ」
俺は、俺とエイミーによる先行部隊から大きく距離を開けたはるか後方をとぼとぼ歩いている残り二人に視線を向ける。
「お前らはいつまでだらだらしている気だ?」
ルゥシールは分かりやすく落ち込み、デリックは真っ青な顔でふらついている。
「うぅ……わたしのことは、しばらく放っておいてください……」
「テ、テメェは……遠慮ってもんを知らねぇのか……」
ルゥシールはアルコール木苺での醜態をいまだに悔いており、俺から距離を取ろう取ろうとしている。
まぁ、確かに、あれだけの醜態をさらせば恥ずかしくもなるのだろうが、『サービス精神』という言葉に置き換えればさほどでもないだろうに。
そして、デリックは魔力欠乏症のようだ。
途中、遺跡の結界とは違う、もっと作為的な結界がいくつも張られており、それの解除のためにデリックの魔力を俺が使ったのだ。
……アルコール木苺をダメにされた八つ当たりも込めて、徹底的に搾り取ってやったさ。
「けど、なんだったの、あの結界?」
ルゥシールと、他一名を待つ傍ら、エイミーがそんな疑問を口にする。
確かに、眉根を寄せたくなるほどにしつこく、結界は幾重にも張られていた。
「部外者を中に入れたくない誰かが存在するんだろう」
言いながら、そびえ立つ古の遺跡を見上げる。
その『入れたくない部外者』というのが、特定の人物……つまり俺である可能性が極めて高い。
解除の難しくない簡単な結界を複数枚というのが実にいやらしい。
普通の魔導士相手なら煩わしいだけで足止めにすらならない。
しかし、魔力がない俺なら?
俺が入口の結界を解く方法は、魔導士の協力を取りつけるか、魔力を供給し得る何かしらのアイテムを手に入れるかのどちらかしかなかった。
魔導士は俺への協力を禁じられている。しかし、中には「入り口の結界くらいなら」という者がいるかもしれない。そういう者にこっそり協力してもらって遺跡に乗り込んだとして、内部にあれだけ幾重にも結界が張られていれば俺は出端をくじかれていただろう。
アイテムの場合も然りだ。
ここで無駄な魔力を消費させておけば遺跡内部の探索を妨害出来る。
実にいやらしい。
「この中にいるヤツは、非常にいやらしいヤツに違いない」
「え……あんた以上に?」
「俺なんか足元にも及ばないいやらしさだよ」
「ド変態じゃない!?」
話が噛み合っていない上に、とてつもなく失礼だぞエイミー。
まぁ、そんなことくらいでは怒らないけどな、俺、大人だし。
「大丈夫だ。お前の絶望的なまでに平らな胸では狙われもしない」
「誰の胸が絶望的よ!? 希望てんこもりよ!」
ぷぷ、ムキになってやんの。子供め。やーいやーい。
「あんたって、ホンット子供よね!?」
子供に子供呼ばわりされてしまった。
負け惜しみか? ふふん、可愛いらしいヤツめ。
そうこうするうちに、ようやくデリックが俺たちのもとへとたどり着いた。
「はぁ……はぁ…………マジで、辛い……」
「おいおい。遺跡に入る前からへばってどうする? 貧弱なヤツだな」
「誰のせいだ、誰の!?」
誰のせいかと言えば、それは結界を張ったいやらしい魔導士のせいだろう。
本当に煩わしい。
その度に、汗臭いデリックの魔力を我慢して使用していた俺を称賛するべきだ。
さぁ、者ども、俺を褒め称えやがれ。
「褒めてもいいぞ」
「お前、頭大丈夫か!?」
デリックが盛大に肩を落とす。
こうも感情にムラがあると疲れるだろうな。冒険者に向かないんじゃないか?
常に冷静な判断が出来ないというのは、冒険者として問題だぞ。
「で、ルゥシール。お前はいつまでそんなところにいるつもりだ?」
ルゥシールは、いまだに遠くでもじもじとしている。
「いいから早く来い」
「でも…………」
……まったく。
過ぎたことをいつまでも引き摺るのも、冒険者としては問題なことのひとつだ。
しょうがない。
俺がナイスなフォローでもしておいてやるか。
「酔っぱらってゴロニャンしていた様は、なかなか可愛かったぞ」
「やめてくださいってばっ!」
物凄い速度で突進してきたルゥシールに電光石火の早業で口をふさがれた。
あぁ、久しぶりの手のひらぷにぷに……略して『ひらぷに』
「分かりました。さっきのことは一旦忘れて、遺跡探索に精を出しますから! ですからどうか、ご主人さんも忘れてください!」
うん。
なんかよく分からんがルゥシールが前向きになってくれてよかった。
流石は俺、ってところだな。
そして、やはりいいものだな、『ひらぷに』。
「うっし! 【搾乳】に言われたからじゃねぇが、俺も気合い入れるかっ!」
デリックがデカい身体を起こし、体の筋を伸ばし始める。
バキボキと、景気よく骨を鳴らす。
「あたしだって」
エイミーが弓の弦をぴんと弾き、張り具合を確認する。
「で、では、わたしも!」
俺から離れ、ルゥシールも元気よく挙手する
……あぁ、『ひらぷに』が離れていってしまった…………はぁ……やる気がそがれた。
「……まぁ、みんながんばってね」
「お前が一番気合い入れろよ!」
「しゃんとしなさいよね、アシノウラ!」
「まぁまぁ、みなさん。これがご主人さんのスタイルですので」
各々のやる気が、今、ひとつになる!
「なってないわよ。主にあんたのが」
ま~た人の顔色を読んで、そういう気分を削ぐようなことを言う。
「ぶつぶつ言わないの!」
いや、言ってないし……
「顔が言ってんの!」
顔がぶつぶつ言うってなんだよ!?
書いてあんのか、顔に「ぶつぶつ」って!? ニキビか!? ぶつぶつだけに。
「……ちょっと分かりにくいか……もっとこう、スマートな比喩が…………」
「ご主人さ~ん。そろそろ行きますよ~!」
「ん? おぉ」
知的な思考に没頭していた俺をルゥシールが優しく呼び戻す。
うん。いい感じに普段通りだ。
これでようやく、遺跡に踏み込める。
積み上げられた石壁に、ぽっかりと開いた大きな穴。
ドアも取りつけられていない、遺跡への入り口の前に俺たちは整列した。
俺を中心に、横一列に並ぶ。
全員が遺跡の入り口を睨みつける。気合いは十分だ。
「じゃあ、行くぞ!」
俺の言葉をきっかけに、全員が同時に足を踏み出す。
ゴツッ!
ぽっかりと口を開いていた遺跡の入り口だったのだが、見えない壁――結界が張られていた。
全員がそこに頭をぶつけ、これまた全員で揃って頭を押さえうずくまる。
……だから、くじくなよ、出端を。
「……これも、いやらしい魔導士の仕業なの?」
「いや、これは遺跡本来のトラップだろう……結界の種類が石門のと近い」
「じゃあ、また鼻血が必要なんですか?」
「いや、それはないだろう」
ざっと見る限り、魔法陣も聖水を入れる台座もない。
開錠の魔法で行けるだろう。
「というわけで……、デリック」
「もう勘弁しろよ!」
四の五の抜かすデリックを取り押さえ、汗臭い魔力をいやいや吸い取り、結界を解除する。
「……はぁ、はぁ…………テメェ、覚えてろ」
気合いを入れ直した直後だというのに、デリックが地面にうずくまっている。だらしのないヤツだ。
っていうか、男に胸触られてハァハァするんじゃないよ、気持ち悪い。
「この光景を見慣れてしまった自分が悲しいわ」
「……同感です」
女子二人が遠い目をしている。
うん。全部デリックが悪い。
こいつが美少女と見紛うほどの美少年だったらならば、絵的にはここまで酷くなかったはずだからな。
俺はうずくまるデリックに心からの言葉を贈る。
「デリック、サイテー」
「お前、ホントぶっ飛ばすぞ……っ!?」
そんな息切れした声で言われても怖くねぇーよ、ぷぷぷ。
と、いうわけで、ようやく古の遺跡へと足を踏み入れることが出来た。
中は割と普通だ。
石を並べて作られた床に、石を積み上げて作られた壁。そして、石の柱に石の天井。
遺跡を構成するすべてが石で出来ている。
昔の人の根気強さが窺える。
石を一つ一つ運んできては積み上げていったのだろう……
「昔の人は、よほど暇だったんだろうな」
「暇だから作ったわけじゃないと思いますよ……」
歴史の流れに思いをはせる俺に、ルゥシールが適当なことを言う。
暇じゃなけりゃこんなもの作らないだろう?
少なくとも、俺は作りたくない。
「あんたの作る遺跡なんて、三日と待たずに崩壊するに決まってるでしょう?」
「バッカ、エイミー。俺が造りゃあ、こんな遺跡なんか目じゃないほど後世に残るっての! 千年は固いな!」
「たしか、この遺跡は千数百年前の物なんですよね?」
「じゃあ二千年!」
「……張り合ってんじゃねぇよ」
どいつもこいつも俺を否定しやがる。
よし、じゃあ造ってやろうじゃねぇか! 歴史に名を遺すほど偉大な遺跡をな!
「一番奥の神聖なる部屋には、メッチャ巨乳の女神像を……」
「三日以内に叩き壊すわ」
「協力させていただきます、エイミーさん!」
「だよな? 巨乳よりつるぺたの女神像のが神聖だよな?」
「黙れロリコン筋肉」
「賛同します、エイミーさん!」
ルゥシールとエイミーのコンビに凹まされたデリックが肩を落とす。
えぇい、さり気にこっちに近付いてくるな。知り合いだと思われるだろうが。
お、そうだ。
俺の作る遺跡に関してグッドなアイディアが浮かんだぞ。
こいつらに教えてやろう。
「なぁ、いいことを思いついたんだが」
「いいことなわけないから、聞きたくない」
「壁に二つの大きなくぼみを作るんだよ」
「聞かないって言ってんでしょ!?」
「まぁ、まぁ、エイミーさん。聞いてあげてください。それに、きっと最後までしゃべらせた方が早く済みますよ?」
「……しょうがないわね。で、くぼみがなんだって?」
「そのくぼみの奥に扉を開けるスイッチを設置するんだ。二つ同時に押さなきゃ開かないタイプのヤツだ」
高さは床から120~140センチってとこか?
二つのくぼみを並べて設置する。
「そのくぼみに巨乳を押し込むことによって、二つのスイッチは押され、扉が開く仕掛けだ!」
「さぁ、みなさん。先に進みましょう」
「聞くだけ無駄だったわね」
「つるぺた差別は許せねぇな」
「待てよ! 聞けよ! 画期的なんだから!」
俺を無視して先に進もうとする三人を引き止める。あ、別にデリックはどうでもいいけど。まぁついでに聞いていけよ。
「俺の神殿は、巨乳を祀る神殿なわけだろ?」
「いや、わけだろと言われましても……」
「そしたらやっぱ、巨乳しかたどり着けないわけだよ! 神聖な場所だからな」
「物凄く不純な空気が充満している気がしてなりませんが?」
「くぼみは結構深いからな、最低でもFカップはないとスイッチまで届かないんだ」
「まだ続くんでしょうか、この話?」
常人では決して思いつかない、高度なからくりの構想を披露してやっているというのに、誰一人食いついてこない。
こいつらは建造物に造詣がないからな。しょうがないか。
理解出来ないのだろう、庶民脳では。
「……っていうかさ、胸が入るほどのくぼみなら、手、入れられるんじゃないの?」
「…………………………はっ!?」
「そうですね。普通に指で押せば開きますね」
「いやいやいや! 指ではダメだ! 柔らかさセンサーがついていて巨乳以外は黒こげになる」
「そんな怖いところに胸を押しつけられませんよ……少なくとも、わたしは嫌です」
くそぅ……っ!
俺の完璧な計画が……っ!
二千年以上も語り継がれるはずだった崇高な遺跡の構想が……っ!
「っていうか、そんなくだらないこと、今はどうでもいいでしょう?」
「いや、敵もトラップも何も出てこなくて、暇だったもんでな」
うん。
やっぱり、遺跡って暇つぶしで造るもんなんだろうな。
よく分かったよ。
そうして、敵にも罠にも遭遇しないまま。俺たちは突き当たりへと到着した。
ここまで一本道。迷うはずがない道のりだった。
だというのに……
「行き止まりだと!?」
「どうなってんのよ、アシノウラ!?」
デリックとエイミーが眼前の石壁に驚愕の表情を浮かべる。
俺たちは行き止まりに行き当たった。袋小路と言ってもいい。
しかし、断言してもいいが、脇道や隠し通路なんてものはなかった。
と、いうことは、この壁に何かしらの仕掛けがあるはずなんだ……
「ご主人さん、あれを見てください!」
何かを見つけたのか、ルゥシールが大きな声を上げる。
ルゥシールの指さす方向に目を向けると、そこには、他の壁には無いある特徴的なものがあった。
くぼみだ。
床から130センチ程度の高さにあり、二つ並んでいる。
……これは。
「ま……まさか、ご主人さんの言っていた……?」
「パクられた!?」
「いや、こっちの方が先だから」
「先っていうか…………マジかよ?」
くっそなんだよ!?
結局、人間の考えることなんて一緒なんだな。
みんな、頭の中は同じなんだ。
「こんなアホなことを考えるなんて……ご主人さん以外いないと思ってましたのに……」
「男って、最低ね」
「待て待て! 俺はつるぺた派だぞ!? 成長しきっていない膨らみかけが最高なんだ!」
「「最っ低!」」
「おぉぅ!? 女子二人が声を揃えて!?」
デリックが見事に最低認定を受けたところで、俺は話を先に進める。
「よし、じゃあルゥシール。押しつけてこい」
「イ、イヤですよ! こんな得体のしれないものに押しつけるのは!?」
え?
じゃあ、得体のしれているものになら押しつけてくれるの?
たとえば、俺とかどう?
「きっと、胸以外の何かをあのくぼみに入れるんですよ!」
「アホのルゥシールめ」
「なんでアホなんですか!?」
「胸以外で、二つ並んで大きくて柔らかくてたゆんたゆんしたものがあるわけないだろう?」
「柔らかくて以降、条件に入ってませんよ!?」
聞き分けのないルゥシールが抵抗を見せる。
「ねぇ、アシノウラ。くぼみの下に何か書いてあるわよ?」
エイミーの言葉を受け、俺はその場所へ視線を向ける。
そこには石板が埋め込まれており、次のような言葉が刻まれていた。
『 選ばれし者の証を示せ
この世界の始まりと終わりを共にかかげよ
それは、命の源となるべきものなり―― 』
この文章は、おそらくこのくぼみにはめ込むものを指し示す暗号だ。
だとしたら……正解はあれしかない。
「やはり、おっぱいだな!」
「なんでそうなるのよ!?」
と、エイミーが吠える。
まぁ、お子様には難しいか。
いいだろう。俺が分かりやすく説明してやろう。
「まず、『選ばれし者』とは、巨乳に恵まれた者のことだ!」
「たぶん、もうすでに違うと思います」
「まぁまぁ、聞いてやれって。っていうか、お前が対応してくれ。俺らの手には負えん」
ごちゃごちゃしゃべるルゥシールとデリックを無視して、俺の華麗なる解読ショーは続く。
「根拠だってあるんだぞ? 巨乳は男女問わず羨望の眼差しを向けられるが、貧乳は全人類に後ろ指を差されている」
「差されてないわよ! ……………………誰が貧乳よ!?」
誰も何も言っていないのに、エイミーが一人で騒いでいる。
忙しいな、貧乳は。気の毒に。
「そして、次の文章だが……『この世界の始まりと終わり』だが、この部分がまさにおっぱいを意味しているわけだ」
「……すみません。もう、ついて行ける気が……」
さっそく顔を背けるルゥシールに、俺は熱心に語りかける。
大事なところだから!
「人間は、生まれて間もない赤ん坊のころにおっぱいにむしゃぶりつくだろうが!」
「むしゃぶりつきはしないわよ!」
「もうちょっと表現を選べ、【搾乳】!」
そんな意味の分からん要求は却下だ!
話を続ける。
「そして、幼少期から思春期を経て成人するまでの間、頭の中はおっぱいのことでいっぱいだ!」
「それはご主人さんだけです」
「おっぱいでいっぱいだ!」
「韻とか踏まなくていいので!」
目を剝くルゥシールの言葉を軽く受け流し、俺の解説は加速していく!
テメェら、しっかりついて来いよ!
「そして、結婚をすると、嫁のおっぱい揉み放題だ!」
「あんた、結婚をなんだと思ってんの!?」
「そうは言うがなエイミー。ベルムドだって毎晩アーニャさんの……」
「やめて、人の両親を使ってそういうこと言うの!」
「そうですよ、ご主人さん! それに毎晩そうなら、もう少しは育っているはずです!」
「さらっと失礼なこと言うんじゃないわよ、ルゥシール!」
「あぅ……ごめんなさい」
ルゥシールが首をすくめて頭を抱える。
その際も、ばっちりたゆんと揺れていた。
「で? 結婚が終わりなのか?」
デリックが疲れ切った顔で尋ねてくる。が、甘いな。結婚が終わりなわけないだろう。
終わりというのは、精一杯人生を駆け抜けて、そして燃え尽きる時だ。
「いつか……、この命が尽きる時、俺は……俺はな…………おっぱいに挟まれて死にたいと思っているっ!」
「知らねぇよ!」
全力で突っ込まれた。
デリックよ。お前は本当の幸せというものを知らないようだな。
可哀想に。
終わり良ければすべて良しと言う言葉があるんだぞ?
つまり、終わりがおっぱいなら、俺の人生はすべておっぱいだったということになる。
……最高じゃないか!
「つまり、『この世界の始まりと終わり』とはおっぱいのことだ!」
「違うと思う人、挙手をお願いします」
ルゥシールの声に、俺以外の全員が手を上げる。
が、しかし、俺は特別な人間なので一人で五票持っているのだ!
残念だったな! 俺に多数決は通用しない!
「だいたい、『命の源となるべきもの』なんて、おっぱい以外に有り得ないだろう!? 人間はおっぱいのために生きているのだから!」
「そのために生きているのは、ご主人さんだけですってば」
何を言われようが、聞く耳持たん!
「そういうわけで、ルゥシール! 今すぐあのくぼみにおっぱいを差し込むのだ!」
「本当にやるんですかぁ!?」
「むぎゅっと、一思いに行け!」
「………………分かりましたよ」
俺の完璧な推理に納得したのだろう、ルゥシールは壁のくぼみに向かって立ち、諦めたような顔でそこへ胸を押し当てた。
「あ、あの、ご主人さん……ちょっとしたトラブルが……」
「なにがあった!?」
「…………は、入りきらないです」
「…………入りきらない……だとっ!?」
割と大きめのくぼみだったはずだぞ!?
赤子の頭くらいはあったはずだ。
それに、入りきらないなんてことが…………と、視線を向けると、確かに、くぼみに収まりきらなかった柔らかそうな物体がくぼみの脇へとはみ出していた。
俺に状況を見せるためか、肘を高く持ち上げてこちらを向いているルゥシール。その脇腹の向こうに、押し潰された、服の上からでも分かるほどの、何とも柔らかそうな横乳が視認出来る。
「なんか、エロッ!?」
「ご主人さんがやらせてるんですからね!?」
と、その時。
ゴゴゴゴ…………
低い音を響かせて、くぼみのある壁のすぐ隣りの壁が開き始めた。
「え、えぇっ!? 正解だったんですか!?」
「マジかよ……」
「……信じられない……ううん、信じたくないわ」
ちょこっとばかり教養の足りない三バカ共が驚愕の声を上げる。
ふふん。
まぁ、俺様の手にかかれば、この程度の謎、謎でもなんでもないのだ。
「さぁ、ひれ伏せ、愚民ども!」
「調子に乗り始めたわね……」
「けど、マジで開いたしよぉ……」
「あのぉ、わたしはもうここから離れてもいいんでしょうか?」
愚民ども三人が勝手に何かをしゃべっているうちに、隠し扉は完全に開ききった。
奥へと延びる通路が出現する。
そして……
それと同時に……
けたたましく警報が鳴った。
「な、なんだ!?」
デリックが咄嗟にエイミーをかばう。
ルゥシールは慌てて俺の隣へと駆け戻ってくる。
そして、俺とエイミーは臨戦態勢だ。
「何か出て来るわよ!」
エイミーの言葉に視線を向けると、先ほど開いた隠し扉の向こう側、延々と延びる通路から夥しい数の魔物が湧き出してきた。
……なるほど。そういうことか。
「おい、お前ら!」
俺は、声を張り上げて全員の意識をこちらに向けさせる。
緊急事態につき、とても簡潔な言葉で告げる。
「ごめん。違ったみたい」
「「「最初から分かってたわぁー!(ましたよぉー!)」」」
俺以外の三人の声が揃い、そうして、古の遺跡第一のトラップが作動してしまった。
……………………てへぺろ。
ご来訪ありがとうございます。
外には魔導ギルドの妨害が、
内部には遺跡のトラップが……
ここから、やっと、冒険者っぽくなっていく……はずです。
明日も更新します。
よろしくお願いします。
とまと




