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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)
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131話 深夜の出会い

 気が付けば、空には夕闇が広がっていた。

 地龍との戦いが随分と長引いてしまったようだ。


「……【搾乳】、魔力の暴発はしないの?」

「あぁ。何とか抑えられるようになった。まだ、長時間は無理だけどな」


 ドラゴンどもから奪った大量の魔力は、その都度飛行や攻撃として活用させてもらったが、戦闘が終わった今も少しだけ俺の体内に残っている。


「……寝ている時に漏れてきたりしないでしょうね?」

「なんね? お婿はん、いまだにオネショしよると?」

「するかっ!?」


 俺の尊厳を著しく踏みにじるのはやめてもらおうか!


「……大丈夫。もししちゃっても、怒らないから」

「だからしねぇってのに!」


 やめろ!

 優しい瞳で見つめるな!

 知らない人が見たら本当かと思われる!


「したっけ、今晩はこの辺りで野宿ばぁするだかね」


 俺たちは、地龍と戦った岩場を離れ、現在は岩山の中腹辺りに来ていた。

 戦闘後、フランカたちと話したのだが、「魔法で飛ぶから、その魔力を察知されているのではないか」という仮説にたどり着いた。

 ドラゴンどもは【ゼーレ】を感知する能力を持っている。

 ならば、魔力を察知する能力も、多少は有しているのではないか……と、推論を立てたのだ。


 そこで、しばらくは徒歩で移動することにした。

 そうすることで、フランカの魔力を節約することも出来るしな。


 なにせ、ここは龍族の住処。


 地龍レベルのドラゴンがわんさか、それ以上の強力なドラゴンがゴロゴロいると考えた方がいい。

 全員を相手にしていては、エンペラードラゴンにたどり着く前に力尽きてしまう。

 魔力の節約は重要だ。


 それに、地龍を見ていて思ったのだが、きっと奴らは今回のように住処の各場所に部隊を置いて俺たちを待ち構えているはずなのだ。

 その付近を俺たちが『飛行』していけば、全員で出て行って襲いかかる。そんな作戦を立てていることだろう。

 なので、その裏をかいてやろうというわけだ。


『徒歩』で気付かれないように山を越え、ルゥシールのいる場所までたどり着いてやれば、住処のあちこちで俺たちを待ち伏せしていた連中を出し抜ける。

 俺は龍族を殲滅しようなどとは思っていない。


 俺は、ルゥシールさえ帰ってきてくれればそれでいいのだ。

 まぁ、ルゥシールの今後の平穏のために、エンペラードラゴンだけはぶっ飛ばしておかなければいけないだろうが、その他のドラゴンは正直どうでもいい、

 向かってくれば潰すけどな。


 そんなわけで、俺たちは現在登山を敢行している所なのだ。

 この岩山を越えれば、この龍族の住処の中心部へと出られるはずだ。



 そこにエンペラードラゴンがいる。



 俺の目が、そう言っている。

 この山の向こうにとんでもなくデカい魔力を持った者がいると。


 剥き出しの岩肌が高く高くそびえている。

 頂上を見上げてみるが、まだまだ窺うことは出来ない。

 山を越えるには、随分と時間がかかりそうだ。


 広がる闇に浮かび上がる巨大な岩山のシルエットは、見ているだけで腹の底の恐怖心を刺激されるような……うすら寒い印象を与える。


 同じ闇でも、随分と違うもんだな。あいつの闇とは……


「なぁ! ちょっと、コレば見てぇ~!」


 トシコが遠くで俺たちを呼ぶ。

 あいつ、いつの間にあんなところまで行ったんだ?


 トシコのシルエットを目指して歩いていくと、岩肌にぽっかりと大きな穴が開いていた。

 洞窟だ。


「ここ、今日の宿に使わせて貰ぅたらどやろか?」

「……洞窟…………ドラゴンの巣だったりしないでしょうね?」


 フランカが怖いことを言う。が、魔力の反応はない。

 ただの洞窟のようだ。


「お婿はんが大丈夫ち言うんなら、問題なかよね。屋根と壁ばぁあるだけで、随分違うでなぁ」


 確かに。

 洞窟のように囲まれた場所にいれば、警戒するべき方向が限られてくる。

 その分安心して休むことが出来るだろう。


「ほだら、サクッとご飯ばぁ作るっけぇ、ちこ~っと待っとってねぇ」

「いや、待て。お前は作るな、トシコ」

「えぇ~! なしてぇ~!?」


 魔界を出てからここにたどり着くまでの三日間、俺はトシコの料理を食い続けてきた。

 三日食えばもう十分だ!

 って言うか、もう食いたくない!


 狩猟民族であるトシコは、森で捉えた獣をその場で捌いて食すのだ。

 獣の血をソースに、獣肉を食らうのだ。


 ……獣臭いなんてもんじゃない。


 あと、基本的にトシコは『調理』というものをしない。

 そこにあるものを、『切る』『千切る』『折る』くらいしか出来ないのだ。


 あんなもん、料理じゃない。

 コンパクトにして積み上げただけだ。


「何が気に入らんがぁ?」

「お前の作るもんには味がないんだよ。調味料くらい使え」

「使うとるよぉ! 最高の調味料を!」

「何だよ、最高の調味料って?」

「愛だべ!」


 お前の愛、生臭ぇなぁ……


「フランカ。すまんが頼めるか?」

「……私が作るの?」

「蛇の踊り食いとか、嫌だろう?」

「………………作るわ」


 嫌だったようだ。

 途中野宿するために立ち寄った森で、トシコが蛇を捕まえて「うん、いけるだ!」とか言い出した時は本気で置き去りにしようかと思ったほどだ。

 ルゥシールのカエルといい、トシコの蛇といい……

 俺はそういうの食わねぇから!


「……途中で集めておいた木の実と、保存用の魚があるわ。少し待っていて」


 そう言って、フランカは洞窟の前で火を起こす。

 なんてしっかり者なんだろう。


 魚は魔界で獲ったものに違いない。

 魔界にも湖があり、そこでは大きな魚が獲れる。

 魔力が渦巻く魔界で干物を作ると、何とも言えない深いうま味が生まれるのだ。

 それを保存食にして持ってくるなんて……フランカのヤツ、分かってるな。

 よかった。同じ感性を持っている人がいて。


 そうして、待つこと数十分……


「……見た目は悪いけど」


 そう言って出された物は、真っ黒い棒と、黒い玉だった。

 …………炭?


「……焼き魚よ」

「焼き過ぎだろう!?」


 見た目が悪いとか、そんなレベルじゃない!


「……味で勝負」

「勝負見えちゃってるよ、もう既に!」

「……害はない」

「料理の評価で有害無害っておかしいよね!? 分かるよね!?」

「……たぶん、ない」

「しかも自信ないのかよ!?」


 っていうか、何故木の実まで焼いた?

 せめて木の実くらいまともに食いたかった。


「……私は、生モノがダメだから…………しっかり火を通そうと」

「通し過ぎだよ」


 なんてことだ。

 トシコはどこまでもレアで、フランカはどこまでもウェルダンなのだ。

 生と炭。

 なんだ、その二択……


 あぁ……


「……テオドラのご飯が食べたい」


 そんな、本心からこぼれ落ちた何気ない呟きが、……目の前の二人の美女に火をつけたらしい。


「……料理くらい、その気になれば余裕で出来る」

「オラだって、ほっぺた落っこちっくらい美味しいご飯ば作れるだ!」


 そんな、謎の宣言を残し、二人は洞窟から飛び出していった。


 外はすっかり夜になり、少女の一人歩きは危険な時間帯だ。

 しかもここは龍族の住処。

 二人を引きとめようと腰を浮かせた時、外から悲鳴が聞こえてきた。



 ギャァァァアアアアアアッ!



 …………ドラゴンの。


「……邪魔!」

「どかねぇと、怪我するだぞぉ!」


 何ともたくましい声と共に、フランカとトシコは夜の闇に姿を消す。

 ……あいつら、身を隠すために徒歩移動してるって分かってんだろうな?


 なんとなく出遅れた俺は、一人その場に残り火の番をすることにした。

 一応、フランカとトシコの魔力は追跡しておく。何か異常があればすぐにでも駆けつけられるようにしておかないとな。


「とりあえず、食い物は粗末にしないようにしなきゃな……」


 俺は、目の前に転がる炭の棒と炭の玉を口に放り込み、租借を試みる。

 …………食い物じゃないようなので、粗末にしてもいいだろうか?

 焚火にくべれば、燃えないだろうか? ………………ダメだった。


 時間が空いたので、少しこの場所について分かっていることをまとめてみる。


 ここは、ブレンドレルの北方に位置する険しい山岳地帯だ。

 居並ぶ山々がどれも切り立った岩山で、おまけに強力な魔獣が生息していることから、これまでろくに調査もされていなかったのだが……その先に龍族の住処があるとは思ってもみなかった。

 この場所は、お袋を通じてシルヴァネールに教えてもらったのだ。

 そうでなければ発見出来なかっただろう。


 というのも、俺の目を持ってしても、龍族の魔力を発見することは出来なかったのだ。

 おそらく、エンペラードラゴンが無の【ゼーレ】の力で龍族の魔力が外に漏れないようにしているのだろう。

 俺でなくても、高位の魔導士になれば強力な魔力の反応を感じ取ることが出来るからな。

 これまでこの場所が発見されなかったのは、歴代のエンペラードラゴンのおかげなのだろう。


 しかし、フランカ曰く、俺たちの魔力は感知出来たのだそうだ。

 原理は分からんが、無の【ゼーレ】が隠せるのは龍族の魔力に限られるらしい。

 この付近一帯に結界を張っているわけでもなさそうだし、龍族の体に何かしかけがあるのかもしれない。

 例えば、龍族の魔力はこの地に存在する何かしらの要因により外部に感知されないようになる、とか。確証はないが。

 ただ言えるのは、この地に足を踏み入れた瞬間に感じた、あの感覚は筆舌に尽くしがたいということだ。

 龍族の住処に入った瞬間、ここにいるすべての龍族の魔力が一気に感じられたのだ。獣のテリトリーに踏み行ってしまった時の独特のあの緊張感。

 魔力と殺気が渦巻く、異世界に紛れ込んでしまったかのような不安感に全身を支配された。

 そりゃ、他の動物は寄ってこないわ。


 ……あいつら、獲物取りに行ったみたいだけど、多分見つからないだろうなぁ。


 ブレンドレルから乗り込んだ龍の住処は、切り立った岩山と剥き出しの岩肌ばかりが目につく死の大地と呼ぶにふさわしい環境だった。

 こんな場所に食える物などなさそうだ。


 龍族は一体何を食って生きているんだ?

 …………あ、土ガエルか?


 天を支えているかのような標高の高い山がつらなり、飛行でも飛び越えるのは困難だった。

 気温が急激に下がり、体が動かなくなり、耳は痛くなって、肺まで凍りつきそうだった。

 おまけに、山頂付近はどす黒い雲に覆われていて、天候も悪いことだろう。雷が鳴り続け、激しい風が吹き荒れている。さながら、嵐に守られているようなものだ。

 ドラゴンの強靭な翼と鱗でもない限り、あの嵐は越えられないだろう。

 なので俺たちは山の中腹付近を通り、山を迂回していくことにしたのだ。


 何にせよ、急がなきゃな。


 だが、俺たちが急げば、その分テオドラが苦労することになるのか……

 一人で俺たちを追ってこなきゃいけなくなるんだよな……


 ここいらでちょっと待ってやるか?


 そんなことを考えていると、洞窟の外が騒がしくなった。

 あの二人が戻ってきたのだろう。

 テオドラを待つかどうか、少し話し合ってみよう。

 どうせ、獲物なんか捕まえられていないだろうし。


「お婿はん! イカーッ獲物ば捕まえてきただ!」

「……私も。大漁」


 そう言って二人が抱えていたのは、グレーの鱗をした、小さなドラゴンだった。


「お前らは悪魔かっ!?」


 フランカとトシコ、それぞれに抱えられたグレーのドラゴンは、二頭とも酷く怯えた目をしていた。

 グレーの鱗ってことは、ニヒツドラゴンか?

【ゼーレ】を持たない、無力なドラゴンだ。


「そいつらは食べられません。すぐに解放してやりなさい」


 不満顔の二人に、説教するような口調で言ってやる。

 えぇい、うるさい! ぶーぶー言うな!


「お前らだって、別に食べたいわけでもないだろう?」

「……むしろ、私は食べたくない」

「オラも」

「それを俺に喰わせようとしてんじゃねぇよ」


 龍族は、見た目こそ爬虫類だが、ルゥシールと同じ一族なのだ。

 食べるという発想は湧いてこない。……もっとも、中には好んで食いたがるヤツもいるんだが……ドラゴンの肉は高額で取引されている。まぁ、それを言えば、人肉も売られているところはあるんだけどな。種族によって、何を食い何を食わないかはそれぞれだ。そこに口出しは出来ない。


 が、俺はドラゴンを食べない。絶対にだ。


「離してやれよ」

「……抱っこして寝たい」

「なに可愛いこと言ってんの、急に?」


 料理しようと持ってきたくせに。


「オラも抱っこして寝ようかなぁ!」

「あぁ、はいはい。可愛い可愛い」


 張り合わなくていいから。


「にしても、なんで子供だけでこんなところにいるんだ?」


 二人が抱えているニヒツドラゴンは、どう見ても子供だった。

 体調が80センチほどしかないのだ。…………実は親がいて、「ガオー!」なんてことにならないだろうな?


「……ピッピは、私と出会うためにここにいた」

「勝手に名前つけてんじゃねぇよ。あと、運命の出会いで押し通すには、ドラゴンが怯え過ぎだから」

「タメキチはオラと出会うために……」

「俺の話聞いてた!? そして、やっぱりお前の付ける名前はそうなるのか!?」


 ピッピとタメキチは不安そうな顔で俺を見ている。


「ほら見ろ。唯一まともそうな俺に助けを求めてるじゃねぇか」

「……それはない。助けを求めてもいないし、あなたがまともであるはずもない」

「タメキチ。えぇだか。あぁいう大人にはなるでねぇぞ」


 お前らな……


 そんなバカなやり取りをしていたせいか、二頭のドラゴンの表情が少しだけ柔らかくなってきた。


「元の場所に返してやれ。ニヒツドラゴンは龍族みんなで守ってるってルゥシールが言ってたろ? こいつらは、人間が触れていい存在じゃないんだよ」


 まぁ、こいつらが大きくなって俺に牙を剥くようになったらぶっ飛ばすけどな。


 フランカとトシコがニヒツドラゴンを地面へ降ろす。と、ニヒツドラゴンは俺の足に頭をこすりつけてきた。

 甘えるように頭を摺りつけては、ちらりと俺を見上げてくる。


 なに、これ。

 超可愛いんですけどっ!?


「お前たちっ! パパだよ!」


 勢い余って抱きしめてしまった俺を、一体だれが責められよう。


「……ピッピに触らないで!」

「タメキチにお婿はんがウツるだ!」


 責めるヤツらがいた。身内に。

 誰がウツるんだよ、コラ。


 ニヒツドラゴンはすっかり警戒心を無くし、俺たちの足元で遊び始める。

 少々不安になるね、この無防備さは。


「こん子ら、この姿で生まれただかな?」

「ん? どういうことだ?」


 タメキチの腹を撫でながら、トシコがそんな疑問を口にする。


「ルゥシールはいっつも人間の姿でおるだべ?」


 ルゥシールが人間の姿でいるのは、人間の世界で生きていくためだと思うんだが…………いや、待てよ?

 シルヴァネールと戦った際、意識を失ったシルヴァネールは人間の姿で倒れていた。

 ルゥシールも、魔力を使いはたしてぐったりしている時は人間の姿で、フルパワーの時に始めてドラゴンへと変身している。


 ドラゴンがあいつらの本性だということは間違いないだろう。

 だとすれば、こいつらはもっとも魔力消費の少ない姿をベースにしているのではないか?

 成人したドラゴン、もしくは、【ゼーレ】を得たドラゴンは、その姿を維持するだけで魔力を消費する。だから、魔力が尽きかけると人間の姿に戻る……とか。

 それで、生まれたてのニヒツドラゴンは、人間に変身する能力がない。もしくは、このくらいのサイズの時は人間の姿よりも魔力消費が少ない……とか。

 恐らくそんなところなのだろう。


 人間の姿になるか、複数の【ゼーレ】を手に入れないと、ドラゴンは言葉を話さない。

 こいつらとは会話は出来ないんだろうな。

 それはちょっと残念だ。


「きあ!」

「きあきあ!」


 可愛らしい声で鳴き、ピッピとタメキチは洞窟の中を駆け回っている。

 翼はあるが、まだ小さく、とても飛ぶことは出来ないだろう。

 焚火の炎が照らす中、二頭のニヒツドラゴンは元気よく遊んでいた。


 これが、エンペラードラゴンの守りたい世界。

 なるほど。

 分かる気はするよ。


 だがな。


 そのためにルゥシールを犠牲にするのは納得できねぇ。

 そこだけは、一生かかっても分かり合える気がしない。


「……ルゥシールとシルヴァネールも、きっとこうやって一緒に過ごしていたのね」


 ぽつりと、フランカがそんなことを言う。

 幼馴染で仲のよかったルゥシールとシルヴァネールは、やがて【ゼーレ】を受け取りダークドラゴンとゴールドドラゴンへと成長してしまう。

 命をかけて、お互いを守ろうとしたルゥシールとシルヴァネール。


 なぁ、エンペラードラゴンよ。

 お前は何も思わないのか?

 そんな風習が間違っていると考えたことがないのか?

 これまで通りの習慣を貫くことで幸せになれると、本気で思っていやがるのか?


 気が付くと、ピッピとタメキチは眠っていた。

 遊び疲れたのだろう。

 こいつらの親はどこにいるんだろうな?


「……この子たちも、大人の都合で【ゼーレ】を与えられたり、奪われたりするのかしらね」


 ピッピを撫でながらフランカが言う。

 現在、俺たちに対抗するため複数の【ゼーレ】を与えられたドラゴンが多数存在している。

 その数倍、【ゼーレ】を奪われたドラゴンがいるのだ。


「……本当の意味で、幸せになって欲しいわ。この子たちの世代には」

「あぁ……そうだな」


 俺も、そう願う。


 ずっと一緒にいたいところだが、エンペラードラゴンとの決戦にこいつらを連れていくわけにもいかない。

 今晩一緒に寝たら、明日にはお別れだ。

 こいつらはここに残して行こう。


「タメキチ~。いい夢ば見るだぞ~」


 タメキチの頭をぽんぽんと叩きながら、トシコが愛おしそうな声を出す。

 こいつ、飯のこととかすっかり忘れてそうだな。

 まぁ、今晩はもう諦めるか。

 道中、木の実でも見つけて食えばいいしな。


 俺もごろんと横になり軽く瞼を閉じる。

 深く眠るつもりはない。

 焚火の気配を感じつつ、仮眠で済ませるつもりだ。


 フランカも、ピッピを抱くようにして横になる。


 そして、静かな時間が訪れる。

 ニヒツドラゴンの寝息と、ぽそぽそとニヒツドラゴンに話しかけるフランカとトシコのささやきが聞こえるだけだ。


「……きっと、あなたたちは幸せになれるわ。私たちが、そうなるようにしてあげるから」


【ゼーレ】に縛られない自由な未来。

 そんなものが来ることを、願わずにはいられない。


「タメキチ~、オメさは強くて立派なドラゴンになるだぞ~」


 トシコの囁きは、完全に母親のそれだった。

 少し、教育ママさんの気があるのかもしれない。


「タメキチキール…………ふふ」

「エンペラードラゴンにする気なのっ!?」


『キール』は、エンペラードラゴンに付けられる龍名だ。

 トシコのヤツ、とんでもない野望を抱えてやがる……


「……【搾乳】、静かにして。この子たちが起きちゃうでしょう」

「あ、あぁ。すまん」


 なんでか怒られた。

 俺、悪くないのに。


「……さぁ、安心して眠りなさい。ピッピキール」

「お前もかよっ!?」

「……【搾乳】」

「お婿はん」

「「しーっ!」」


 だから、なんで俺が怒られるんだよ……


 もういい寝る。

 寝てやる。


 この世の不条理をすべて忘れるように、俺は眠りに就いた。…………仮眠だけど。












いつもありがとうございます。




80センチくらいのもふもふしたものって、いいですよね。

特に、腕を回した時にフィットしたりする感じだともう……


ニヒツドラゴンは、鱗もまだ柔らかく体温調節も苦手なため(ドラゴンは爬虫類っぽいですが、この世界では恒温動物です)

うっすらと産毛が生えていたりします。


感触で言えば……ブタ?

いや、馬に近いかもしれません。

馬の表面に、ちょっとした凹凸があるような、

そんなイメージです。


慣れて来るとお腹を上にして寝転がり「撫でろ」と催促してきます。



そんな動物が欲しいです。


最終的に15メートルにまで成長するとしても。

東京の狭い住宅事情を鑑みずに、欲しいです。



そんな癒し系生物を前に、

フランカとトシコはちょっとしたママさんフェイスを垣間見せていました。

割とどちらも親バカタイプで、教育ママの要素もありつつ、でしょうか。


ただ、フランカは絶対子供に黒着せますね。

可愛い私の娘が大好きそうなイメージがあります。

ただ、炭を食卓に出すのは勘弁していただきたい。



トシコは、ある程度大きくなったら放任主義に走りそうな気がします。

田舎のお母さんって、「怪我しても放っておけば治る」ってイメージですので。

でも、悪い子とは悪いと、きちんと叱るいい母親になりそうな気がします。



ルゥシールとテオドラだとどうでしょうか?



ルゥシールは躾とは縁遠い親になりそうですね。

逆に子供にダメだしされるかもしれません。

でも、きっと嫌われないでしょう。



テオドラは、幼い時から厳しくしつけをしそうな気がします。

姿勢やしゃべり方まで徹底的に。

でも、叱る時は優しく、子供目線で忍耐強く話を聞いてくれそうな気がします。



さて、みなさんは誰の子供になりたいですか?



私はルゥシールがいいです。

おっぱいが大きいので。


数年は独占ですので。



母親の資質?



えっと…………それって、おっぱいよりも大切なことですか?








今後ともよろしくお願いいたします。


とまと

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