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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)
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13話 ルゥシールとは、そういうんじゃねーし

微妙に長かったので分割した結果、

今回凄く短いです ^^;

「まぁ、つーわけだから協力しろ」


 長々と話をして渇いた喉を安い茶で潤して、俺はドーエンに要求を告げる。

 この村のガキどもに魔法を教えろなどという無茶な要求の見返りなのだ。多少の無茶は許してもらおう。


「ジェナかフランカを2~3日貸してくれ」

「アホか、お前は」

「黙れ、貸せ」

「一回、その腐った脳みそを新鮮なものと入れ替えてもらってこい」


 俺がこんなにも丁寧に頼んでいるのに、ドーエンの糞ジジイは横柄な態度でそれを突っぱねやがった。


「糞ジジイ」

「なんじゃと!? 小童が!?」


 ドンッ! と、テーブルに拳を打ちつけて、ドーエンは俺のささやかな抗議の声を封殺する。なんたる横暴か。


「捕らえた犯罪者を外に放せるわけがないじゃろうが」


 鼻息荒く、ドーエンが俺を睨む。


「遺跡まで行って、入り口の結界を解いてもらうだけだ」


 ほんの少し魔力を借りられればそれでいいのだ。


「逃げられたらどうするんじゃ?」

「俺がそんなヘマをするわけないだろうが」


 俺の監視下に置いて、あいつらが好き放題出来る可能性などありはしない。

 しかし、ドーエンは納得していないようで、シワだらけの顔をズイッと近付けてきた。

 近い。キモイ。ちょっと加齢臭がきつい。


「もしもじゃ、あのボインの姉ちゃんが、『このボインを好きにしていいから見逃して』と言ってきたら、どうする?」


 加齢臭がツンとくるジジイ、略して『加齢ツン』の問いに、俺はしばし黙考する。


「………………うむ。世の中には、不幸な事故というものがあってだな」

「逃がしちゃダメですよ、ご主人さん!?」


 ルゥシールに物凄い勢いで腕を掴まれた。

 隣国に密入国して速攻で追い出された時の勢いに似ている。現行犯逮捕というやつだ。

 なんだよ、まったく。まるで俺が犯罪者みたいに……

 だって好きにしていいとか………………なぁ?


「連れ出すのは危険です。ドーエンさん、絶対に協力しないでください!」

「お前は俺の足を引っ張りたいのか?」

「ご主人さんが人の道から外れないように配慮しているんです!」


 まぁ、捕まった犯罪者を故意に逃がしたら俺もまた犯罪者か。

 でも、それが故意ではなく恋なら?

 お、いい言葉思いついたな。よし、言ってみよう。


「でもな、ルゥシール。もしもそれが故意ではなく……」

「ダメですよっ!」


 ……まだ何も言ってないのに。


 どうあっても、ルゥシールは俺の意見を認めないつもりらしい。

 仕方ない……


「じゃあ、胸のない方でいいや」

「フランカさんに失礼ですよ、ご主人さん!」


 一層強く怒られた。……納得いかない。


 しかし、俺の考えは理に適っているはずなのだ。

 つまりは……


「俺が古の遺跡を攻略すればこの付近の魔力も薄まり、強力な魔物もいなくなるし、ガキどもの魔力も安定するだろう」


 俺が遺跡に納められている宝を手に入れれば、それでことは済むのだ。

 魔法を教える必要もなくなる。

 いいこと尽くめじゃないか。

 それに、グーロが姿を見せ始めた時期から遺跡付近で目撃されていたという不審者も気になるし……遺跡探索は急を要する。


「そのために、ジェナかフランカの魔力を借りて遺跡の結界を解除して、遺跡で何か怪しいことをやっているヤツをぶっ飛ばす。これで万事解決だ」


 おまけに、うまくいけばあのボインを好きに出来るかもしれないおまけつきだ。

 やらない理由がない。


 俺の完璧な計画に、ルゥシールは反論の余地もなく「ぐぬぬ」と唸り声を上げる。

 ようやく観念したのか、ルゥシールは「……分かりました」と、俺の意見に同意した。


「そういうことでしたら、フランカさんに協力を仰ぎましょう」

「お前も大概酷い奴だよな、ルゥシール」


 巨乳が危険だからとフランカを推薦するあたり、毒が効いている。


 そんな感じで協力を要請する俺とルゥシールを、ドーエンは交互に見つめた。

 そして、腕を組んで首を傾げると、おもむろに口を開く。


「この嬢ちゃんじゃダメなのか?」

「「えっ!?」」


 ドーエンがルゥシールを指さして俺に問う。

 つまり……ルゥシールの胸を揉んで魔力を奪えと?


 自然と首が動き、ルゥシールの方を向く。

 同じタイミングでこちらを向いたルゥシールと見事に視線がぶつかり、しばし沈黙したまま見つめ合う。


「……ぁう…………いえ、……あの……」

「…………」


 ルゥシールの顔が赤みを増していく。

 薄紅から桃色、そして真紅へと変化していく顔を見つめながら俺は思う。


 ……いや、無理。


「ぉいっ、じじい! おまっ、おまえっ! な、なな、なにいっちゃってんだよ!?」


 想像より高い声が、俺の喉から漏れていく。


 ルゥシールの胸を揉む。

 それは、初日に放棄したことだ。

 責任を取るとか、そういった束縛は、俺の旅の枷になるからと。

 だから、今更そんなことは考慮する必要もなく、当然、そのようなことをするつもりも最早なく…………まぁ、ルゥシールの方からどうしてもと言うのであれば、考えてやらなくもないが…………とにかく、無理だ。無理なのだ。


 ……なぜだ。心臓が破裂しそうなほど鼓動が速い。


「べ、別にっ、ルゥシールの胸なんか揉みたくねーしっ!」

「そ、そんな言い方は酷いです、ご主人さん!」

「え……………………じゃあ、揉んでほしいの?」

「ふにょっ!? ちがっ、ちがががが、違いますよ! ほ、欲しいだなんて、はしたない! わたしは、ただ……………………にゃあぁぁあ、なんでもないですぅっ!」


 ルゥシールが両腕で顔を覆い、うずくまる。


「ご主人さんのバカ……エロ助さん……」


 謂れのない非難だ。言い出したのはジジイなのに……

 てか、エロ助さんって誰だよ……


「とっ、とにかくっ! ……揉むなら、別のヤツのだ」

「それは、それで、ちょっと看過しかねますけども!?」


 俺の妥協案に、ルゥシールが食ってかかるが、ここは無視だ。

 それ以外に方法がないのだから。


 だって、そうだろう?

 でなきゃ、俺が、その、ルゥシールの胸を揉…………いや、つまり、その……そういう感じで? まさぐる、的な? しかも、ほら、誰もいない森の中で、二人っきりで………………………………………………ごきゅりっ!


「ご主人さんっ!? 今物凄い音がしましたけど!?」

「べ、別に何も変なこととか考えてないから!」

「っていう弁解をするということは、変なことを考えていたんですねっ!?」

「ぎくぅっ!? …………いいや?」

「嘘が下手にもほどがありますよ!?」


 なかば泣きそうな顔で、ルゥシールが声を荒げる。

 顔の色は、マグマのように赤熱色で、時折発光しているようにすら見えた。


「あぁ、もう! こんな話はやめだ! 不毛だ、不毛!」

「不毛というか……不純です」


 呟くルゥシールの言葉を耳にしながらもそっぽを向く。

 なんとなく、今はルゥシールの顔を見たくない気分なのだ。

 別に意識しているわけではないけどな。

 全然、ないけどな。


「イチャつくなら外でやれや、クソガキども」


 ドーエンが殺気のこもった眼で俺を睨みつける。

 誰がイチャついてるか!

 アホか!

 ただでさえ短い老い先をもっとすり減らすぞコノヤロウ!


 一瞬のうちに浮かんだそんな言葉を、俺はあえて言わずにおいてやる。

 寛大だからだ。

 別に、なんとなく反論したら余計に何か言われそうだなとか、そういう打算的な考えは持ち合わせていない。

 とりあえず、この話題は早く終わりたい。ただそれだけだ。


 ……あぁ、顔が熱い。風邪かな?


「とにかく、協力を要請する」

「罪人は貸せん」


 頑固ジジイは頑として意見を曲げない構えだ。

 これだから老害は……


「分かった。連れていくのは諦める。ただし、協力はしてくれ」

「どうするつもりじゃ?」

「俺に考えがある」


 そして、俺はドーエンに話をつけてジェナ・フランカの両名の協力を取りつけた。

 本人の意思は、ここでは無視だ。

 これもひとつの罰だと思って、強制的に承諾してもらおう。


 そうして、俺たちは場所を移動する。

 ジェナやフランカが留置されているギルドの地下牢へ。

 時間がないので至急向かうことにする。

 ジェナたちの護送までの間しか猶予はないのだ。それまでに、遺跡の結界を解除しなければ。


 逸る気持ちを抑えつつ地下牢で待機する。数十分ほど待たされたあとで、俺たちはジェナとフランカに再会した。









毎度ご覧いただき、ありがとうございます。


今回はとても短かったので、

明日も更新します。


是非、お誘い合わせの上、お越しくださいませ。

今後ともよろしくお願いいたします。


とまと

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