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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)
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106話 追い詰められる王女

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ウルスラは、自然と体に力が入るのを感じていた。

 砲台の間に、ブレンドレル宰相のゲイブマンが現れたのだ。

 陛下にとって最も危険な男。こいつの前ではいつも緊張している気がする。もちろん、いつでも斬りかかれるように、である。

 落ち着いた雰囲気を纏い、顔には少し笑みを浮かべている。本人は、隠しているつもりのようだが、見る者が見れば、腹の底に隠し持った魂胆が透けて見えるのだ。

 少なくとも、ウルスラにはそのように見えていた。


「状況は把握しております。なんでも、突然魔物が王都を襲ったとか……一体、何が原因なのでしょうな……」


 白々しい。と、ウルスラは思った。

 しかし表情には出さなかった。


「理由は、あとで構いませんです。それより今は、王都に蔓延る魔物の対応を優先させるです」

「いいえ、陛下。お言葉を返すようですが、まずは原因を取り除くことが肝心かと存じ上げます」

「ゲイブマン殿! 陛下に意見をなさる気か!?」

「国民と王国の未来を思えばこそ。ベイクウェル殿には、しばし発言を控えていただきたく存じますな」

「なんだと……!?」

「ウルスラさん」


 名を呼ばれ、視線を向けると、陛下は静かに一度頷いた。

 黙っていろという合図だ。

 陛下に言われては逆らうことは出来ない。ウルスラは言葉を飲み込み、一歩体を退いた。

 勝ち誇ったようなゲイブマンの顔が癇に障った。


「何か、原因に心当たりがあるですか、ゲイブマン」

「いかにも」


 にやりと、ゲイブマンが嫌らしく笑う。

 陛下に見せられる顔ではない、そうウルスラは思った。しかし、レイピアを突きつけるわけにもいかず、ただ堪えて、黙っているしかなかった。


「私が仕入れた確かな情報によりますと…………今、この王都にアノ『悪魔』が訪れているそうなのです」


 陛下の顔色が蒼白に変わったのを、ウルスラは見逃さなかった。


「貴奴めが、王都を訪れると同時に、魔物の軍勢が押し寄せてきたのです。原因など、考えるまでもありますまい」

「……おにぃた…………兄上が、魔物の軍勢を率いて王都を襲撃したと?」

「さよう。貴奴めはこの国に恨みを抱いております。で、ありますれば、くだらぬ復讐心に身を焦がしたとて、不思議はありますまい」

「ゲイブマン殿! 仮にもブレンドレル王国の血を引く者に対し、あまりに無礼ではないか!?」


 堪らず、ウルスラは反論していた。

 しかし、それすらも『待ち侘びていた』と言わんばかりに、ゲイブマンは嬉々として受け止める。

「おや、まるで貴奴が犯人ではないと『確信』しているような口ぶりですな、ベイクウェル殿」

「無論だ!」

「貴奴は、かつてこの王城を崩壊させた悪魔ですぞ?」

「だとしてもだ!」

「ほほぅ……では何か根拠がおありなのですかな? たとえば…………」


 ここで、ゲイブマンは人間がなしえる最大級のいやらしい笑みを浮かべる。


「『自室に招き入れ、二人きりで時間を過ごしていた』……とか」

「貴様っ!」

「ウルスラさん!」


 思わずレイピアに手をかけたウルスラを、陛下が止める。

 ここで抜けば、自分は職を追われる。そうすれば、陛下のそばにいることが敵わなくなる。……陛下を、守れなくなる。

 グッと下唇を噛み、ウルスラはレイピアから手を離す。


「たとえ話ですよ、ベイクウェル殿。もしそうであるなら、貴奴が魔族の軍勢を率いて王都を襲撃したのではない証明になると、それだけの話ではないですか」


 嘲笑うように鼻を鳴らすゲイブマンは、ニチャリと音を立て口角を持ち上げる。


「ただし、もしそのようなことがあれば、ベイクウェル殿が手引きしたと糾弾されかねませんがね」

「…………っ!」


 ウルスラはグッと堪えた。

 今、この状況ではどんな言葉もゲイブマンの一助となってしまう。

 沈黙こそが正しい選択なのだ、と。


 マーヴィン・ブレンドレル、およびその一行を王城へ滞在させたことがゲイブマンの優位を決定的にしていた。

 魔族の手引きをしたのが彼でないと証明出来ない以上、その彼らを王城へ招いた陛下が、国家転覆に加担したと言われかねないのだ。

 彼らがここにいたことが、彼らの無実の証明になればいいのだが……おそらくゲイブマンはウルスラや陛下ですらもマーヴィン一行の仲間と見做し、その証言能力を奪う方法をとるだろう。

 彼らがここに滞在していたということを口にすることが出来なくなった。

 故に、彼らは魔物と共に王都に来たのではないという証明がし辛くなってしまった。


「ゲイブマン殿こそ、魔物の軍勢とほぼ同時にお戻りになられたではないか?」


 犯人がゲイブマンだと確信しているからこそ、これこそが動かしがたい証拠になると、ウルスラは思った。しかし、ゲイブマンはそこまで甘くなかった。


「なるほど、確かに。偶然というのは、あるものですな」


 偶然。そんなありきたりな言葉でかわされてしまった。

 魔族の軍勢と同時に城に戻ったのが偶然ではないという証明は、不可能だ。


 では、同じ手法がマーヴィン一行にも使えるかと言えば、答えは否だ。

 彼らには、ブレンドレル王国に立ち寄る明確な理由がない。

 何をしに来たのか。それに対する的確な答えがないのだ。

 なんとなく。気が向いたから。妹に会いに。

 どれもこれも、魔族を使った襲撃の言い訳ととられかねない。


 ゲイブマンが一派を率いて王都を完全に空けたのは、この仕掛けのためだったのか。

 その仕掛けに気付かせないように、普段から城を空けるようにしていたのだとすれば、随分気の長い計画だ。


 ウルスラはこの状況を打破する方法を模索する。

 ゲイブマンが行っている召喚魔法の研究。その非合法性を糾弾すれば、今回の魔族軍の襲撃との関連も取り沙汰されることだろう。

 これまで部下に集めさせていた証拠をまとめて訴えを起こせば……


「そうそう」


 ウルスラの思考を邪魔するように、ゲイブマンが声を上げる。

 ニヤニヤと、癇に障る笑みを浮かべて。


「陛下に、是非にもご紹介したい者がおりまして……おい、入って参れ」


 ゲイブマンの合図に、十数名の男たちがぞろぞろと部屋へと入ってくる。

 謁見の間ではなく砲台の間でのこととはいえ、陛下の許可も得ずに部外者の立ち入りを許すとは、無礼にもほどがある。

 ウルスラはゲイブマンに注意をしようと口を開くが、言葉は出てこなかった。


 入ってきた者が、ウルスラの忠実な部下たちだったからだ。


「紹介いたします。『私めの』忠実なる部下たちです。主に、諜報活動を得意としておりまして、今回の騒動に関する情報も、その多くを彼らから得た次第でございます」

「お前たち……なんで……」


 知らず、言葉が口から漏れる。

 彼らは、父の代からずっと一緒に活動をしてきた仲間だ。家族と言っても過言ではない。

 そんな彼らが、そろいもそろってゲイブマンのそばに並び立っている。


「……ウルスラ様……申し訳ございません。我らは…………」

「陛下の前であるぞ。口を慎め。…………妹さんが、悲しむことになるぞ?」


 その一言ですべてを悟る。

 今、口を開いたのはベイクウェル家に仕える優秀な諜報員で、確か両親を病で亡くしてからは幼い妹と二人で暮らしていたはずだ。

 ……ゲイブマンは、そこを突いたのだ。


 卑劣。

 愚劣。

 卑怯。

 劣悪。

 醜悪。


 どれほどの悪態を重ねてもゲイブマンの汚さを表すことは出来ないだろう。

 ウルスラは、それ以上何も言えなくなり、今後のことに思考を切り替えた。


 完全に嵌められたのだ。

 すべてはゲイブマンの手の上だった。


 おそらく、陛下の『眼』についても、奴は騙された振りをしていたのだ。

 こちらが『ゲイブマンは騙されている』と信じ込んでいた期間だけ、ヤツは自由に行動出来たのだ。

 なんと愚かな……まるで気が付かなかった。


 ウルスラは悔しさで涙ぐみそうになった。

 意地でそれをこらえ、キッと前を睨みつける。

 泣くのは簡単だ。だが、泣いてしまうと立ち直るのが困難になる。

 今は、今出来ることをやらなければ…………


 陛下を守る。

 ……たとえ、マーヴィンたちを見捨てることになったとしても。


「…………おにぃたん様」


 誰にも聞こえない小さな声で、ウルスラは彼を呼ぶ。

 バカでスケベでどうしようにもない男だが…………こういう時に何とかしてくれる。そんな気にさせてくれる、不思議な男だ。


 もし、この状況をひっくり返すことが出来るのならば、彼をおいて他にはいないだろう。

 そしてもし、この状況を見事ひっくり返してくれれば…………クマのパンツくらい、いくらでも見せてやってもいい! だから…………頼む。出来る事なら、貴様も……失いたくなどないのだ…………と、そう思った。


「陛下! 失礼いたします!」


 突然、陛下専属の騎士団の騎士が一人、砲台の間へと駆け込んできた。

 そして、険しい表情で報告を行う。


「先ほど、魔導ギルドの魔導士たち数十名が王城へと避難してまいりました。みな、全身に火傷などの怪我を負っている状況でした」

「なんと! 彼らは、私が王都を守るために派遣した魔導士たちなのですよ」


 恩を売ろうとでもいうのか、ゲイブマンがこれ見よがしに芝居がかった口調で言う。


「それで、魔導士たちは誰にやられたかを言っていたのかね?」


 宰相から見れば、騎士団の騎士などは格下である。にも拘らず、ゲイブマンは騎士に柔らかい声で語りかけている。望む答えを急かすように。


「はい。皆、一様に…………『マーヴィン・ブレンドレルにやられた』と」


 くそったれ……


 思わず、ウルスラは心の中で悪態をついた。

 普段は決して口にはしないような汚い言葉だったが、いっそのことゲイブマンの襟首を掴んで唾棄してやりたかった。


「王都に溢れた魔物を討伐していたところ、突然、マーヴィン・ブレンドレル様より魔法を浴びせられたと」

「君、その男は王国に牙を剝いた反逆者だ。様など付けなくてよい」

「しかし……」

「それとも何かね? ……君は、反逆者に賛同すると言うのかね?」

「い、いえ! 決してそのようなことは!」

「報告は以上かね? では、もう行きたまえ」

「はっ! 失礼いたします!」


 騎士は駆け足で部屋を出て行った。


 マーヴィン・ブレンドレルは反逆者。そんなイメージが植えつけられた。

 これで、彼を擁護する発言がしにくくなる。


 ……陛下の前で、よくもそんな真似を…………ブタにも劣る下衆め。


 ウルスラはまた、これまで口にしたこともないような悪態を心の中で吐き捨てる。

 出来る事なら、陛下を連れてこの忌まわしい男のいない場所へ行ってしまいたい。そう思った。

 しかし、陛下は立場上逃げ出すことが出来ないのだ。



 ウルスラは、たまに思うことがあるのだ。

 もし、世界最高の魔力が陛下ではなく、マーヴィン・ブレンドレルにあったなら、と。

 彼なら、どんなに性根の腐った家臣相手でも一歩も引かずにやり合うことだろう。

 王などというものは、彼にこそ相応しい。

 陛下には、向かないのだ。

 もし、陛下が陛下でなく、普通の女の子であったなら…………


 考えても詮無いことではあるが……思わずにはいられなかったのだ。


「さて、陛下」


 ゲイブマンが動いた。と、ウルスラは直感した。

 また、ろくでもない言葉があの口から飛び出すのだと、嫌というほどにはっきりと分かった。


「今回の一件、陛下はどのように対応をなさるおつもりですかな?」

「無論、魔物の殲滅、並びに国民の救助を最優先とし、復興は事が済み次第順次というつもりです」

「貴奴は……マーヴィン・ブレンドレルに関しては、どうなさるおつもりで?」

「それは…………まだ、兄上が魔物を率いたと決まったわけではありませんですし……」

「魔導ギルドの人間が、数十人も、いいですか、数十人もの人間がですよ? 貴奴に襲われたと証言したのですぞ!? 陛下! 身内を信じたいお気持ちはお察しいたします! ですが! 陛下は一国を担う、いえ、この世界を背負うブレンドレル王国の王女であらせられるのですぞ! 何はなくとも、国民の安全と幸せ、安寧を第一に考えていただきたい!」


 ゲイブマンが熱く語る。

 熱のこもった演説は徐々にヒートアップしていき、身振り手振りも大きくなっていく。今にも陛下に殴り掛かりそうな勢いだ。


「無論、国民のことは第一に考えているです」

「では、マーヴィン・ブレンドレルの抹殺命令をお出しいただけますな?」

「抹殺…………」


 陛下の顔から血の気が引いていく。

 最愛の兄の抹殺命令など、陛下に出せるはずがない。だが、出さないわけにも、いかないのだ。


 だが、陛下は躊躇い、答えを出せずにいた。

 いや、答えはもう出ているが、それを口に出すことが出来ないのだ。


「陛下! ご決断いただけないようでしたら、陛下も逆賊の一味と見做されても文句が言えませんぞ!」

「ゲイブマン! 無礼であるぞ!」

「無礼は貴様だ、ベイクウェル! ワシを誰だと心得ておる!? 口を慎め!」

「陛下の前で、貴様……っ!」


 正体を現したゲイブマンに対し、ウルスラはレイピアの柄を持って威嚇する。

 しかし、ゲイブマンは勝ち誇った表情を崩さず、むしろ煽るように捲し立てる。


「抜きたければ抜け! どちらにせよ、貴様にはここから出て行ってもらうことになるからな!」

「なんだと!?」

「騎士団よ! この女は陛下の心をかどわかす反逆者だ! この女はマーヴィン・ブレンドレルと通じ、王国の転覆をはかった重罪人だ! 証拠ならいくらでもある! のぉ、ベイクウェルの諜報員たちよ?」


 ゲイブマンの言葉に応える者は誰もいなかった。

 しかし、ゲイブマンが一人の諜報員の耳元で何事かを囁くと、その諜報員の顔色が変わり、そして、わななく拳を握りしめて「…………その通りでございます」と、擦り切れそうな声で呟いた。


「聞いたであろう? さぁ、その反逆者を捉えて地下牢へ叩き込んでおけ!」


 ゲイブマンの指示に、二人の騎士がウルスラの前へと歩み寄ってくる。


「触るな! ……自分で歩ける」


 ウルスラの気迫に、騎士は怯み、手を触れることはしなかった。

 ウルスラはそっと振り返り、己の背で守り続けてきた陛下へと視線を向ける。


「………………」


 言葉が出てこない。

 ただ見つめると、陛下はにこりと微笑み、幼馴染に向ける気の置けない声で言う。


「私は大丈夫ですよ、ウーちゃん」

「……パルちゃん」


 かつて、まだ幼かった頃に呼び合った呼び名で呼び合い、二人は視線を交える。

 ふと、陛下の視線が下を向く。

 ウルスラがその視線を追うと、陛下の首には巻貝の貝殻が付いた首飾りがつけられていた。

 あれは、外にいるマーヴィン・ブレンドレルと連絡が取れる魔道具だ。


 ……そうか、ここでの会話はみんな彼に伝わっているのか。


 ウルスラはそれに気が付き、微かな希望を見出す。

 彼なら……あのいちいちとんでもない彼ならば、きっと何とかしてくれる。

 根拠のない、絶対的な確信を胸に、ウルスラは騎士に連れられ部屋を出る。

 その間際、ゲイブマンの顔を窺うと、人間とは思えないような歪んだ笑みを浮かべていた。



 悔しいが、今の自分には何も出来ない。

 だが、必ず後悔させてやる。

 私の大切な幼馴染を利用したことを…………必ず。



 ウルスラは何も言わず、部屋を出て行った。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 魔道具から聞こえてきたのは、何とも胸の悪くなる会話だった。

 あのジジイは、相変わらず腐りきっているな。

 まぁ、そういうヤツだと知っていたので、特に腹も立ちはしないが……


 だが、俺の向かいには鬼神のごとき形相で怒り狂っているヤツがいる。

 ルゥシールだ。


 適当な民家に入り、リビングを借りて魔道具の会話を聞いていたのだ。

 身を隠す意味も込めて、椅子は使わず、壁際の床に片膝をついて、ルゥシールと向かい合うような形でしゃがんでいる。


 なので、割と顔が近い。

 なので、どんな小声も、ばっちり聞き取れてしまう。


「…………………………ゲイブマン、でしたっけ? …………覚えておきます、その名前」


 これまでに見たことがないほど、ルゥシールの目は冷たかった。

 今、目の前にゲイブマンがひょっこり現れたら、目にも見えない一撃であっさり殺されるだろう。

 ルゥシールは普段がぽわぽわしてる分、怒ると本当におっかない。


「ルゥシール」


 魔道具によってこちらの声が聞こえる危険があるため、俺はルゥシールの耳元で、可能な限りの小さな声で呟く。


「落ち着け。怒りは判断力を鈍らせる」

「…………分かっています」


 分かってはいるが、どうしようもない。そんな顔だった。

 ……まったく、しょうがない。


 俺はそっと、ルゥシールの頭を抱き寄せる。

 右腕を後頭部に回し軽く押すと、ルゥシールの体は俺へともたれかかり、俺の肩に顎を乗せる形になる。


「にょっ!?」


 と、ルゥシールがけったいな声を上げる。


『…………今、何か聞こえませんでしたかな、陛下?』

『い、いえ…………その…………お腹が、すいたのです』

『……状況を弁えてくださいね、陛下』

『……申し訳ないです』


 魔道具の向こうからそんな会話が聞こえてきた。

 ……パルヴィ、すまん。


「……静かにな」

「……は、はい。すみません」


 ルゥシールの頭を抱き、頬を寄せる。

 後頭部を優しく撫でて、ルゥシールの怒りを収めてやる。


「お前が怒ってくれるのは嬉しい。けどな……」


 なんと言えば、ルゥシールは機嫌を直すだろうか。

 そう考えた時、真っ先に浮かんだ言葉があった。

 というか、それ以外に浮かんでこなかった。

 浮かんでこなかったのだからしょうがない。

 俺はその言葉を口にした。


「お前には、いつも笑っていてほしいんだ。俺のそばでな」

「っ!? …………………………はい」


 抱き合う格好なので表情は見えないが、きっと今こいつは笑っているのだろう。

 そんな、柔らかい雰囲気が伝わってきた。


「…………う」

「ん?」

「…………うひ…………」

「うひ?」

「…………うひひひひひひひひひひひひひひひひひ」

「……ごめん。微笑む程度でお願い出来ないだろうか?」


 笑っていてほしいとは言ったんだけどね、「うひひ」は勘弁してほしい。耳元では特に。


 その後も、嬉しいのか嫌がらせかは分からんが、ルゥシールの頭を抱いている間はずっと「うひひひ」と笑い続けていた。


 う~ん。向こうに聞こえてなきゃいいけどなぁ。

 パルヴィのお腹の虫が気持ち悪い鳴き方をするとか、変な噂が立つと困るからな。








いつもありがとうございます。


ゲイブマン!

ジジイのくせにムカつく!



難しい言葉でしゃべるなー!


書いてて、


「ん? この表現あってるか?」



って、不安になるんじゃーい!


トシコを見習え!

あの、自由奔放なしゃべり口をな!



そんなわけで、

まんまと泳がされてしまったパルヴィとウルスラ。

もっとも、ご主人さんは何かに感づいていたようですが……



ゲイブマンは、

ご主人さんがマウリーリオの遺跡を巡って神器を手に入れようとしていたことを知っていました。


そして、仲間と呼ぶべき者たちが集いつつあったことも。


そもそも、ご主人さんが生きて王国を出た時点で、何かを仕掛けてくることは予想がついていたので、入念に準備をしていたのです。


そして、今回、ついに動き始めた……というわけです。



ご主人さんたちが王都についてから二週間ほど、

ゆったりとした時間を過ごしていたわけですが、

もちろんこれは、ご主人さんたちへのイチャラブタイムプレゼント、

ではなく、ゲイブマンの都合なのですが……それは、また追々。




なにやら小難しい言葉で論争を繰り広げておりましたが、

今回、

「ここだけ押さえておけば大丈夫!」という、

もっとも重要なポイントは、



ウルスラが、今現在クマさんパンツを着用しているということ!

そして、それを見せてもいいかなと思い始めていることです!


さぁみなさん!

共にご主人さんを応援しようではありませんか!


くまさんパンツのために!!



ちなみに、

もう成人を迎えているウルスラが、

なぜいまだにくまさんパンツなどを穿いているのかというと…………


胸に合うブラがなくてスポブラを使用しているから……なのです。

上下お揃いにしようとすると、どうしても…………


でも大丈夫!

そういう人も需要はきっとある!!




皆様の中で、


「そんなウルスラ大歓迎さっ!」


もしくは、


「むしろ、スポブラこそが我が人生だ!」


という方!

いらっしゃいましたら、挙手を!!



…………あ、お巡りさん、あの人たちです。

え? いえ!

私は関係者ではアリマセンヨ……?




東京都に怒られないお話作りを目指します。



今後ともよろしくお願いいたします!!


とまと。

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