15と言い張ってみる
黒髪の男の子を追いかけてきたはいいけど
「空間って、どうやって入るのよ」
まっすぐ追いかけてきたはずなのに
いつのまにかひとけのない道にでてしまった
「大体、空間を作るってどうゆうことよ」
「・・・もう空間に入ってる」
「うわぁ!」
背後から声がした
振り返ると男の子がいた
「ちょっと、いるならいるっていいなさいよ!」
「っ!?」
「いやいや、なんで驚くのよ」
「・・・城に連れて行く」
「無視か」
ってちょっと待ってよ、
王さまのとこに行くってことは
結奈に
会っちゃうよね?
私って食べさせられた果実のせいで帰れなくなって、泣き叫んで来たんだ
それなのに、のこのこ会いに行くとか・・・
「いやいや、自分で食べたし、泣いてはないんだけど、ね」
「早くつかまれ」
「そう!あんた誰よ!」
「・・・城の人間だ」
「いや、そーじゃなくてさ、名前とか」
「・・・」
「はぁ、私は凛々子、15歳、高校1年生」
まぁ、もう16歳だろうけど
「次女か」
「いや長女だけど」
「?」
きょとんとした顔でみてくる
「かわいいな、おい」
これが母性をくすぐられるってことか
「18だ」
スルーしてたけどイケメン、だなー
大きな黒い目に鼻のバランスも完璧
まぁ、カッコいいよりも可愛いが勝っちゃってるけど
それにしても痩せ過ぎ
18歳にしては小柄すぎだし中1ぐらいに見える
年齢的には男の子、じゃないよね
「ねぇ、この世界で黒髪って嫌われ者なの?」
「別に。・・・黒髪は上区にはほとんどいないが、下区にはいる」
「じょうく?それってどうやって書くの?」
彼は地面に字を書いた
「へー、字は一緒なんだ。ヨーロッパ風なのに変なの」
「厳密に言えば、異世界と文字は違うはずだ。無意識のうちに魔力による言語変換を行っているんだろう」
異世界、と言った
そういえば、どうして、
「城に行く、つかまれ」
彼は私に手をさしだした
「・・・ねぇ、なんで私が異世界から来たってわかったの?もしかして、あんたも私を騙そうとしてるの?」
「纏っている魔力が白いから、王の子だとわかった。女で白を纏うのは異世界に送られた三姉妹しかいない」
「魔力?ってか三姉妹って・・・私、兄しかいないけど」
「まだ見えないのか。・・・魂が完全に安定していないな。リリスの実は食べたのか」
「た、食べたわよ!すっごくおいしい果物ならねっ!騙されて!」
「騙され?何を言っている?」
「何って、あれを食べたせいで私は家に帰れなくなったのよ!」
「食べたから、元気でいられるんだろう」
「えっ?」
「リリスの実には大地と魂のつながりを強化する効力がある。魔力を一時的に不安定にさせる副作用があるが・・・めったに手に入らない果実だ。肉体に問題がなければ亡くなった者を呼び戻せるほど強い力をもつ。異世界で過ごしていた魂は大地とのつながりが薄れていたはずだ。食べなければ、魂は肉体から離れていた」
「肉体から離れる?それって、死ぬってこと?」
「あぁ」
じゃあ、結奈は騙したわけじゃなかったんだ
「そっか、・・・ひどいこと言っちゃったな」
「・・・悪いことをしたなら謝ればいい」
「ははっ、うん、そーする。ねぇ、城まで連れてってくれる?」
今度は私から手をさしだした
彼は驚いたような、泣きそうな顔で笑った
「あんた笑うときれいだね」
「きれい?」
「そ、元が美少年だし、笑うといいよ。色々得だよー」
「・・・そんなこと言われたことがない」
「まっとりあえずは太ることと髪型を変えることをおすすめするけどね、男が長髪ってどうかと、ってあれ?毛先バラバラ過ぎない?」
よくみると彼の髪は所々大きな段差ができている
「もしかして自分で切ってるとか?」
その問いに
彼は答えなかった