黒を追いかける
3日間ぶりの青空はきれいだった
ここがどこだろうとか考える前に思った
ヨーロッパ風な町にたっていた
TVでよくみるヨーロッパの市場はこんな感じだったかな
現実逃避だった、かも
道行く人々は、赤や黄色、緑に紫、変わった髪色ばかりだった
「なんで、こんなとこに、もしかして、魔法?」
でも、だれの?
「もう、わけわかんない」
結奈にヒステリックに叫んだ勢いはなく、その場に座り込んでしまった
自分の髪が垂れて、下を向いた視界に入った
・・・ごく普通の焦げ茶色の髪
中学のときは頭髪検査のたびに注意された
地毛なんだけどな
「大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「えっ、あっはい」
おばさんに声をかけられ、顔をあげる
・・・紫の髪色だった
「おやまぁ、転移に失敗したんだねぇ」
「転移?」
「ここは第3地区だよ、署はここから近いから」
「おいっ!黒の子だぞっ!」
おばさんの声をさえぎるように男の大声が聞こえた
おばさんの後ろからだ
「あらやだよ、嫌なもん見ちまった」
振り返ったおばさんがそう言った
まわりをみると通りにいる人々もおばさんと同じように顔をしかめている
あんなに賑わっていたのが嘘のような静けさだ
みんな何かをみている
おばさんの陰に隠れて見えなかったので、座ったまま首だけで覗いた
視線の先には黒髪の男の子がいた
この世界に来てからカラフルな髪色しか見かけなかったから、なんだかほっとする
でも、顔立ちは外人さん寄り
日本人顔の自分は浮いてるんだろうなぁ、と思いつつ、男の子をみていた
人々の視線を釘付けにしていることなんておかまいなしに彼は早足で歩いてた
まるで、何かから逃げるかのように
ふっと視線を上げた彼と目が合った
長い前髪から覗く鋭い目
なんでだろう
きれいだと思った
「お嬢ちゃん、目を合わしちゃだめだよ!」
「えっ、おばさ」
『なぜ、ここにいる』
「はっ?」
「ほら、署に案内するから、こっちに」
『城に行け、この地区の署は危険だ』
「えっちょっとだれよ!」
「何言ってるんだい?」
「だ、だれって」
『そいつには聞こえない、お前に{声}を届けてるんだ、頭で念じろ』
「頭で・・・」
聞こえる?
『あぁ』
あんた誰?
『・・・目の前にいる』
「はぁ!?」
「お嬢ちゃん、本当にどうしたんだい?ま、まさか、目が合ったせいで」
「はっ?違う違う」
目の前って、あっ、黒髪の男の子
もう一度、彼をみるとこの大通りを随分進んでいた
後ろ姿も小さくとしか見えない
『・・・この先に空間を創る、そいつを撒いて入ってこい、城に送る』
「えぇー、っと、ここから家近いから帰るね。じゃあね」
あーもー
なんで親切なおばさんより
みんなに嫌われてそうな子信じるなんてバカみたい
さっき裏切られたところなのに、ね
でも
おばさんは怖い
やさしく声をかけてくれたのに
男の子をみたとき、声が変わった
汚らわしいものをみたかのように
それがもし、黒髪に対してだったら・・・
男の子の後を追いかけた
もしかして、彼は
私と同じ地球から来たのかもしれないと期待しながら