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ゾッコン6

「ねー先輩。シノコウって私立だったんですねー」


「うん?あぁ確かに、どこか公立っぽいもんね」


2人は学食で適当な話をしていた。


しかし、やはり異様な空気が漂っているため視線を集めていた。


そして、やはりナンパされることがあるわけで……


「すいません!こちらの方に出てくれませんか!」


「ごめんね〜、人待ちなんだー」


「あの!俺と一緒に廻りませんか!」


「ごめんね〜。彼氏いるんだー」


「俺と!付き合ってください!」


「ごめんね〜。初対面の人とは付き合えないなー」


次々に対処するところをみて望月も感心していた。


「……流石、繁華街で働くだけはあるわね」


「私の世界ではこれくらい日常茶飯事ですよ、先輩」


すると、突然部屋の隅の方が騒然とした。

そこを見ると、1人の男子生徒をリンチして、あからさまに文化祭荒らしをしている不良生徒がいた。

東雲はその中に京野が巻き込まれていないところを確認して取り敢えず安堵した。


「それにしても、あの子たちここの制服じゃん。母校荒らす子もいるんだ」


「……私行ってこよっかな」


「ええっ!やめときなよ」


すると、東雲は椅子を立った。


「だいじょーぶですって、ああいう子に限って大抵がウブなんですよ」


そう言い残し東雲はリンチの現場に向かって行った。



「こらこらー、やめなよー」


東雲は呑気に不良生徒に話しかけた。


もちろん体制は前のめりである。


「だ、誰だよ!」


「……どうしたの?顔赤らめて……」


すると、東雲はシャツの襟元を引っ張った。


それを見た不良生徒は体を後ろにそらした。


東雲は面白くなり、シャツのボタンに手を伸ばした、そのとき。


「何やってんですか、東雲さん!!あの!すいません!ではあの、お暇しますんで!」


一息でこれだけ叫んだ京野は東雲の手を握り、去っていった。



望月も追いかけ、学食を出たところで京野は壁にもたれ掛けた。


「……え、り、リンくん?」


「……な、何してるんですかぁ!」


見ると京野の目が少し涙目になっている。

……まぁヘタレが不良生徒の前に飛び出したのだから当たり前だが……


「で、でも、私なら大丈夫だし!それに、この文化祭を荒らそうとしてたのに黙っていられないって!」


「そんなの知りませんよ!……とにかく、不良は生徒会の友達に言ったので指導が下ると思います」


京野がキツく話を続ける中、タイミングをみて望月がフォローに出た。


「……え、えっとね、京野君だっけ。梨々香ちゃんは淫行を働こうとしたわけじゃないんだよ?」


「……でも、なりかけたじゃないですか。……それに、梨々香さんにもしものことがあったら……そんなの、僕が彼氏なのに情けないです……」


「……リンくん」


「……京野君」


京野の言葉に東雲と望月は反省の色を見せた。


「リンくん、ごめんね。……年上なのに。お姉さんぶれないや」


「……私も、梨々香のこと止められなかった。ごめん」


すると我に返った様に京野は焦りを見せた。


「そ、そんな謝らないでください!らしくありませんし、そちらの方も悪くないじゃないですか!」


2人は一瞬キョトンとしたのち、ふと笑い出した。


「さてと、京野くんはご飯食べた?」


「あ、はい。賄い食べてきました」


「あっ!それって執事のトロッとしたやつ?」


「し、シチューです!変な言い方しないでくださいよ!」



とりあえず移動している間に望月は自己紹介を始めた。


「ごめんね、挨拶遅れちゃって。私は梨々香の先輩の望月 恵里子」


「先輩って……仕事のですか?」


すると、望月は両手をぶんぶんと振って否定した。


「そんな、私には体を売るなんて出来ないって!先輩っていうのは高校の。今はただの看護師よ」


「へぇー!高校の先輩ってことは梨々香さん部活してたんですか?」


思わず東雲に京野は問いた。


「うん、まぁえっと、応援部」


「……なるほど」


京野は東雲の体つきからして、運動部なのは予測していたが、応援部とは思いもしなかった。


「……学ラン……ですか?」


「えっ!ち、違うよ!?チアの方だって!」


「あぁ、そうですね。そりゃそうか、はは」


「東雲ね、あの時もキンキラのギャルでさ。まさか変わらずに成長するとは思わなかったな」


望月の苦笑に東雲は否定を求めた。


「そ、そんなことないです!金髪は私に似合わないですからやめました!」


「……でも、髪、染めてますけど」


「これは、仕事だから」


結局望月も含め「なるほど」というしかない京野だった。



「か、帰りますっ!」


「何で〜!?デジャヴ?」


京野が東雲たちに誘われてきたのは学校定番のお化け屋敷だった。


しかも……


「……それにしても、スケール大きいんだね。3階丸ごと使ってるよ?」


詳しく説明すると長くなるが簡単に言えば、三階のクラスが偶然にも全クラスお化け屋敷をすることになり、先生間の間で相談した結果纏めてしまえという結論に至ったからである。


「はーい、大人2人と学生1人ね」


「は、はい。どうぞ」


受付はバランスの悪い3人を見ながらも入場を許可した。



「……やっぱり怖いです……帰りま……ひゃっ!?」


「大丈夫だってー、どうせ高校の作る様なものでしょ?」


「それもそうですけど……ひいっっ!?」


凄い勢いでヘタレっぷりを連発する京野に望月はため息を漏らした。


「……言って悪いんだけど、梨々香。なんでこの子と?」


「ん?だって面白いじゃないですか〜。ほら、リンくん右見ててね」


「えっ?……ひえやあああああっ!?」


京野は飛び出した案山子に驚き、東雲にしがみついた。


「……梨々香?普通立場逆だよね」


「でも、面白いですよ」


東雲は京野を軽く抱きしめながら歩いていった。


「……梨々香しゃん。これはこれで恥ずかしいでふ」


「……んー?」


望月は何度ついたかわからない溜息を漏らして忠告した。


「……梨々香、あとで阿ること忘れない様にしなさいよ?」


「分かってますって」


ちなみに、この後空気を読んだ妖怪幽霊はあまり出てくることはなかった。

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