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ゾッコン4

「ただいま」


京野は自宅に帰ると、早速いい匂いがリビングから漂っているのに気がついた。

今日は、シンプルに味噌汁とほうれん草のおひたしらしい。


「あっ!お帰りお兄ちゃん」


「お帰り、ご飯出来てるわよ」


リビングの扉を開けると、京野の母と、妹の愛里琉(アリル)が出迎えてくれた。どうやら父はまだ帰っていないらしい。


母は普通の高校生の親よりも若く見え未だに2、30代に見られることもあり、いわゆる美人妻というところになるだろう。


妹は、10歳なのでまだ体の部分は発達しきっていないが、かなり兄を慕っており俗に言われる『ブラコン』である。

ちなみにいうと、このアリルという名もゲーム好きの親の所為である。


「今日も友だちと寄り道?」


母が尋ねた。

京野は家族にバレると大変なので、一応そういうことにしている。


「うん」


「そっか。リンクにも友だちがいるのね」


京野は「失礼だなぁ」と呟いて苦笑をもらした。


「そういえば……」


京野の母は一旦味噌汁に口をつけると話を続けた。


「わたし、文化祭のこと全然聞かされてないんだけど、どんなことをするの?」


「うーん、僕もよく聞かされていないんだけど僕のクラスは『召使喫茶』って決まった」


そういうと、母は息を漏らした。


「はぁ、なるほど。今どきの学園祭の定番ね」


「……お兄ちゃん、よくわかんない」


京野は妹のために、簡単に説明した。


「まあ、難しく言わないとすればメイド喫茶と執事喫茶を混ぜたやつだよ」


「……いらっしゃいませ、ご主人様?」


「そうそうそれそれ!」


何故か母が嬉しそうに頷いた。


「他は何かしないの?」


「知らない、自分のクラス以外は本番まで口外禁止ってルールがあるから」


「そうなんだ……」


母は気になっていたのか、つまらなさそうに声をため息の様に漏らす。

すると、妹が気がついた様に聞いてきた。


「ということはさー。お兄ちゃんは喫茶店以外はしないの?」


「うん、喫茶店は午前だけだから。……多分午後からも忙しくなると思うけど」


京野は東雲の顔を思い浮かべて、苦笑した。



食事を終え、京野は妹と風呂に入った。

いい加減体に成長が見られる前に兄離れをして欲しいと思っているのだが、なかなか別に入ることはない。


……しかし東雲の場合を考えると京野はソープランドで働く東雲とだったら今の純粋な妹の方がまだマシかと安堵するのだった。


風呂から上がると、父が帰っていた。


「お父さんお帰り、お疲れ」


「おかえりー!」


「ただいま。最近の子は親にお疲れということが減っているらしいが、うちはそうじゃないんだな……泣けてくるよ」


そういうが顔は完全に笑顔である。

すると、京野の隣にいるアリルをみて真顔になり聞いてきた。


「ところで……アリルは成長していたか?」


一瞬顔が赤くなったがどうでもいいことなので、京野は「上から89.72.91」と言った。


「……グラマラスだな、アリル」


「……?」


妹は聞かなくてもいいことなので、京野はさっさと部屋にいれた。


「お父さん、失礼だよ」


「はははそうだな。それにしても冗談を冗談で返すとはリンクも成長したなぁ。……彼女はまだか?」


冗談目かして言ったのだろうが、京野は風呂上がりにも関わらず、冷や汗が頬を伝った。


その様子をみた父も青ざめた……まではいかないが、仰天していた。


「ま、まさか……嘘……だろ?」


「えっ!リンク彼女出来たの!?」


京野は刹那頭をフル回転させ、とりあえず彼女が出来たことくらいは言ってもいいと判断した。


「……まあ、出来たには出来たけど…。追求はやめーー」


「どんな子!?」


母は話を微塵も聞かずに食いついて来た。

仕方なく、京野は「年上で、背が高くて美人系の人」と答えられる範囲で告げた。


「……俺がお前くらいのときは彼女どころか友達もいなかったのに……」


「……そんなお父さん」


京野の両親はまるで京野自身が万引きをして逃げて来たみたいなリアクションをした。


「……そんな、失礼すぎるよ……」


「だって完璧じゃない!背高いんでしょ!何センチ!?」


「ぼ、僕よりは……」


すると、そんなん沢山おるやんけと言わんばかりのオーラが親から発せられた。


「……う、うちには紹介しないよ!?」


「「なんで!?」」


両親は口を揃えて叫んだ。


「……わ、訳ありなんだよ……」


京野が追い詰められているのをみて、両親(ふたり)は頭を垂れた。


「……ごめんね、でもリンクに完璧な彼女が出来たんだからビックリして……」


「よーし!お父さん、リンクの恋愛応援しちゃうぞー!」


彼女の本性を知らない二人は意気投合した。

京野はそれに申し訳ない気持ちもありながらも苦笑をもらした。


文化祭はもうすぐである。

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