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5話 熱くなる・・・

前後左右を四人の男に囲まれた楓と突如現れた円。

現れた円に目を見開き目を向ける楓。


「円くん!!」

その日一番の笑顔で目を輝かせる楓。

「・・・んん」

その笑顔にぎこちなくはにかむ円。

「なんだぁ!!てめぇ!!」

振り下ろした腕を掴まれるという予想外すぎる事態に動転する男。


次の瞬間。


男の方を一瞥し、掴んだ腕を外側に強く引き寄せる円。

「うぉ!!」

男は思わず引っ張られてよろける・・・

と、同時に”グシャッ!!”と音がする。


円は男が自分側へよろけるのと同時に、僅かに前傾し踏み込む。

そのまま男の手を引きながら、体重を乗せた掌底をその顔面に叩き込む。

男の首が引かれる腕とは逆方向に進み、首がまるでちぎれるのではないかと思う程歪む。

そして衝撃が伝わり切ると同時にその掴んだ腕を離し、そして顔面に打ち付けた掌底をそのまま全力で振り抜く。

男の首が飛ぶ・・・かの様に首から男の全身がふっとぶ。


円のはにかみ後コンマ0,4秒の全てである。


ドグァシャャャ!!!

大の男が宙を舞い、裏路地に乱雑に置かれていたゴミへと突っ込む。


先程まで目の前にいた男が次の瞬間に高速ではじき出される。

その驚愕の光景に・・・

楓と他三人の男達はただ呆然とする・・・


と、呆然とした瞬間に動く灰色、直後裏路地に響く打撃音が二つ。

ドゴゥ!!ダァンッ!!


派手に吹っ飛ぶ男に目を奪われた他三人の男、突然すぎるその衝撃的光景に、言葉と思考を奪われる。

が、それはその為に円が用意した派手さである。

呆然と口を開け、先程吹っ飛ばされ地面に転がる男を見る、楓の右脇にいる男。

その男の開いた口の下、緩み切った顎を目がけて、円は左掌底を全力で叩き込み思い切り振り切る。

体重が十分に乗った掌底が完璧に男の顎をとらえ、砕き、脳を揺さぶり、男を吹っ飛ばす。

円は男を吹っ飛ばし、振り切ってのび切った腕を思い切り引き戻す。

そして引いた腕の勢いをそのまま腰の回転へと伝え、その腰の回転から打ち出す勢いにのった極上の右掌底。

そして、それを今度は楓の左隣にいる男の顔面へと叩き込む。

超高速の右掌底は男の鼻を潰しめり込んで、そのまま男の意識を刈り取って男の体を真後ろへと飛ばす。


こうして生まれた二つの鈍い打撃音。


車にひかれたかの様に地面に転がる三人の男。


それは先程まで楓の前方、右方、左方にいた男達であった。


残っているのは楓の後ろにいる男のみ・・・

リーダー格の男のみであった。


ーーーー


楓は全てを見ていた。

残さず全てを見ていた。

呼吸すら忘れてずっと見ていた。


彼を捜しに戻って、先程の男達にまた絡まれ、殴られそうになって、身構えて、恐る恐る目をあけて、銀色の瞳と目が合って・・・


[それが円くんだと解ってから・・・一瞬もそらさず・・・ずっと・・・]


力強い、刀の様に鋭い銀色の瞳・・・

それに目を奪われ、そして、その直後に円がみせたコウゲキ

それは舞と呼ぶにはあまりに短く、あまりに飾り気がなく、あまりに攻撃的だった。

が、しかし・・・

それは楓にとって、あまりに勇ましく、あまりに美しく、あまりに格好良く映ったのだった。


文字通り、目が離せない・・・

三人の男を瞬間で吹っ飛ばし、優然と向き直り、自分越しに自分の背後の男を睨みつける銀色の瞳。

その怖いくらいの眼光が・・・

[うぁぁ・・・心臓を・・・鷲掴みにされてるみたいだ]

楓は、自分の血圧が激しく上昇をしているのがわかった。

やっと思い出した呼吸は何故か息が詰まりそうで、顔が暑く、頭もくらくらする。

その、彼の、円の瞳を・・・じっと見ているだけで。


ーーーー


三人の男が地面に転げ、横たわる異常な光景。


そこに、三人の男女が立っている。

灰色の髪の男がもう一方の男を睨み、もう一方の男もまた灰色の髪の男を睨む。

そしてその間に、目の覚める様な美少女が、頬を朱に染め灰色の男を見つめている。


場を支配する僅かの間の沈黙。

それを最初に破ったのはリーダー格の男だった。


「その目・・・お前・・・ブレイカーだったんだな・・・や、やっぱり」

男は最初に絡んだ時の、去り際に放たれた異常なまでの殺気を思い出して、冷や汗をかく。

その男の言葉に対し、円は睨む視線をそのままに答える。

「金返せ」

と、ただ一言。

「は!?・・・い、いやだからお前はブレイカーなのか!?」

返されたその言葉に男は戸惑う。

「それを答える義務が俺にはあるのか?好きに考えろ、金を返せ」

円はただ淡々と言い睨む。

「・・・い、いやその前に」

言いよどむ男、それに円は更に言葉を続ける。

「今すぐ金を返せ、お前に今許可しているのは今すぐ金を返すか、俺に殴られて金を返すかだ」

円は眼光をより強くして言い放つ。

「余計な事はいい、金を返せ」

男は冷や汗を流しながら動揺をする。


緊張した空気が場を支配していた・・・


ーーーー


男は考える。


くそう!!

なんでこんな事に!?

一つも解らん!!

こいつこんなに強かったのに・・・何で昼はあんな真似を!?

それに、髪と目が同じ変色なのに・・・ブレイカーのオーラを感じないのはどういう事だ!?

もう・・・訳がわからねぇ!!

くそっ!!くそっ!!


だが・・・このままじゃ・・・

終わらせねえ!!


ーーーー


円は考える。


ああ・・・

やっちまった・・・

一時のテンションって怖いなぁ・・・


どーしよ・・・

思いっきり戦っちゃたじゃん!!

もっと色々と・・・控えめなやり方あったじゃん!!

あーー!!

もう!!

殴ってから冷静になったわ!!


もう・・・なんか、ずっと俺のこと見てるそこのブレイカーさんと怖くて目が合わせられないんですけどぉ!!


と、とにかく・・・余計な情報は言わないぞ!!

もう「金返せ!!」で押し切るしか無い!!


早く金返せよ!!


ん?

なんか・・・怪しい動きしてるなこいつ・・・


ーーーー


「わ、わかった!!金は・・・返す」

男は懐から札束を取り出す・・・

札束で隠す様にして、ナイフと共に。

それが観察されてバレないよう、楓の陰で死角になる様にして隠し、近づく。

「い、いま・・・これをお前に渡す・・・」

そして男は楓に近づくと楓の細い首に手を回しナイフを突きつけた・・・

「ぐはは!!馬鹿がぁ!!って、ええ!!」


が、空振りをした。


ーーーー


楓は混乱していた!


なぜなら・・・

ただ・・・ひたすらに見つめていた円が・・・


いきなり自分を抱き寄せたからだ!


楓は全身が烈火の如く荒れ狂うのを感じる・・・


見ているだけで顔が暑くなる円の瞳、それが、自分の前眼間近に迫り、彼の吐息がかかる距離にくる。

そして、引き寄せる時に感じた手の力強さ、抱き寄せられた胸元の逞しさ、それらが・・・楓の全てに火をつけていた。


[わっ!うわぁ!!ど!そんな!ええっ!!どうしよう!!]

円の胸元で顔を真っ赤にし、目をぐるぐるさせてテンパる楓・・・

その時・・・

ドガァッッ!!!

激しい打撃音が同時に響く・・・

突然の音に振り向く楓。


そこには・・・

100万円とナイフを握りしめ、楓の首があった辺りを抱え込む様にしたリーダー格の男が・・・

円の放った上段蹴りを顎に直撃させていた。


ーーーー


楓は考える。


円くん・・・

これ・・・

私のこと助けてくれたんだ・・・


楓は円の腕に抱かれながら男の様子を見て状況を察する。

そして楓はゆっくりと円の方を向き直る。

円もまた、相手を蹴り倒した時の凛々しい表情のまま楓の方に視線を向ける。


二人の目があった刹那、楓に数多の感情が渦巻き燃え上がる。


前眼にある円の銀色の瞳に・・・顔が、心が、体の芯が、脳の奥が、呼吸が、視線が、全てが熱くなる。

楓はその熱に浮かされ意識がボーっとしていた。


「・・・・かっこいぃ」


そして、そんな一言を思わず漏らしてしまうのだった・・・







次回、円の秘密が少しだけ・・・


6話 きっと君は・・・

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