3話 助けはしたけど
ふう・・・
なんとか逃げ切ったな・・・
全くほんと何なんだよあの女・・・
結局少年シャンプーも途中までしか読めなかったし・・・
さんざんだよ!!
でも・・・そんな俺と話したいのかな?
もしかして俺、結構酷いことしてんのかな・・・
・・・ん?
この気配は・・・
げっ!?
あの娘なんか殺気だった奴に囲まれてる!!
なんだ?どういう事だ!?
・・・ああ、非戦闘ブレイカーが人気の無い所にいくのは危険ってあれか。
俺には関係ないから忘れてた・・・
って事はあの娘襲われかけてんのか!?
うわぁ、まじかよぉ・・・
やっぱ、俺の事追って来たからだよなぁ・・・
自業自得とはいえ、俺が話くらいには応じてやればこんな事にはならなかったんだろうなぁ・・・
・・・・・・・・くそっ!!
このまま帰ったら後味悪すぎる!!
あんなかわいい子があんなことやそんなことされるなんて羨まし・・・・けしからんしな!!
くそぉ、でもめんどくせぇなぁ・・・
「あ、あのーすみません・・・ちょっとよろしいですか?」
ーーー
「あ、あのーすみません・・・ちょっとよろしいですか?」
突然現れた灰色の少年を、楓と夕凪を取り囲む男達が注目し睨みつける。
夕凪はリーダー格の男に注意を払いながら円を一瞥して驚き、楓は驚きと歓喜の入り交じった表情を浮かべている。
[ま、円くんが!・・・なんで!?どうして!?]
男達は突如現れた円の姿を観察し、髪と目の色が違う事とオーラが無い事を確認する。
「ブレイカー・・・じゃ、ねえ見たいだな、紛らわしい髪の色しやがって!!おい!!てめぇ、なに見てやがる!!」
男達の一人が円の方へと歩みよる。
「おい、俺らの邪魔してんじゃねえよ!!殴られたくなかったらあっちいってやがれ!!」
男は円の胸ぐらを掴み脅しにかかる。
「あ・・・す、すみません!!いや、あの実は相談がありまして・・・」
円は少し怯えた様子を見せていう。
「あ、あなたがリーダーさんですか?」
円は男に胸ぐらを掴まれたまま、夕凪の手首を掴むリーダー格の男の方を見る。
するとリーダー格の男は円を睨みつけ声を荒げる。
「あぁ!?だったらなんだってんだっ!!」
円は震えた様子で鞄の中に手を入れ何かを取り出す。
「あ、あのー、今日の所はこれで勘弁して頂けないでしょうか?」
円が鞄の中から取り出したもの、それは一万円の束、100万円の札束であった。
「なっ!?」
男達は驚愕の表情を浮かべる。
「ま・・・円くん!?」
楓もまた驚愕の表情を浮かべる、話の突然さに頭がついていかないといった感じだ。
「今すぐ、彼女達を解放してくれたら明日、もう一度同じ物を差し上げます、僕の家は大金持ちなので可能です、でも断れば事を大きくしますよ?」
少し怯えた様子を見せながらも気丈に円は言葉を続ける。
「どうですか?悪くない話でしょう?平和的に済ませて頂ければ楽に200万円を手にできるのですよ?逆に大ごとにすればお互いただではすまなくなるでしょう・・・」
円はリーダーの男の目を見てゆっくりと話す。
男達は目の前の大金を見つめ唾をのむ。
「お・・・おい、その金本物か?」
リーダーの男は円の胸ぐらを掴む男に声をかける。
「えっ、は、はい!」
下っ端の男は円の胸ぐらから手を離し、円の手元から札束を奪い取る。
男は大金に少し興奮を見せながらぎこちない手つきで確認していく。
「ほ、本物です・・・100万あります」
その一言で周囲の空気が張りつめるのを楓は感じていた。
リーダー格の男は一瞬考え込む雰囲気をみせる。
その雰囲気を読み取った円はその瞬間、大声をあげる。
「走って!!!!」
周り全体がその大声に一瞬、あっけにとられる。
ただ一人、円が来ても一切リーダー格の男から注意をそらさなかった夕凪を除いて。
「かえ!!行くよ!!」
夕凪は楓の手を強く引き走り出す。
楓はあっけにとられたまま手を引かれ走り出す。
そして、それに続く様に円もまた走り出す。
一瞬の出来事に完全に出遅れる男達。
「まっ!まてぇ!!」
男達は慌てて我に返り円達を追いかけ始める。
しかし接近する男達に向って円は走り様に裏路地にあったゴミ箱を男達に向って押し倒す。
「ぐっ!!き、汚ぇ!!畜生!!」
男達はゴミをかぶり一瞬怯むも、逆上し尚も円を追をうとする。
しかし、そこでリーダー格の男が彼らを止める。
「お前ら、やめとけ」
その言葉に男達は怪訝そうに振り向きリーダー格の男に問いかける。
「マサくん、なんでだよ!」
「もう、無理に追う必要はねえ・・・思わぬ金が手に入ったんだ、無意味に追うとろくな事にならねえぞ」
男はそういって、メンバーから円の金を取り上げ歩き出す。
他のメンバー達は少し納得がいかないといった顔をしていたが、そのまま男についていった。
その時、マサと呼ばれるリーダー格の男は凄まじい冷や汗をかいていた。
あのとき・・・夕凪が彼の手を振り払った時。
その直前にして、百万円が本物と解り皆の注意が札束に向いた直後、彼は円と目があっていた。
そして・・・
その瞬間、彼は殺された。
否、殺されたと錯覚を起す程の明確な殺気を浴びた。
他の誰にも解らない様に、彼だけに絞り放たれた一瞬の殺気。
その瞬間、彼の体は一瞬弛緩し、思考を止めた。
そして、その隙に夕凪は手を振り払い逃げ出した。
彼はその後の数秒間、呆然としており勿論逃げ出す彼らを追う事などできなかった。
いや、追えたとしても追っていたかはわからない。
[なんなんだあの男は・・・あんな人間がいるのか!?]
男は顔を青くして裏路地の奥深くへと歩いていった。
まるで、何かから逃げるように。
ーーー
はぁ・・・
ノリとはいえなんで100万とか出しちゃうかなぁ俺・・・
まぁ退職金を鞄中に入れっぱなしにしといた俺が悪いんだけどさ・・・
まあ・・・
あとでぜってー取り返すけどね。
・・・さて。
大通りついちゃったけど・・・
なんていい訳しようか・・・
「ま、円さん!!」
うぉぉ!!
なんだその笑顔、ま、眩しい!!
くっ!!
キラキラした目で見やがって!!
「お前・・・」
お?
こっちは俺の事怪しんでるみたいだな。
しかし、もう一人のブレイカーさんもエラく美人だな・・・
ここのブレイカーはみんな美形だよな・・・
地味顔の俺に対する当てつけか?
「あ、あのっ!!た、助けてくれて本当にありがとうございます!!で!!あの!!私、ほんと聞きたい事いっぱいあって!!」
うぉ!!
ぐいぐいくるなっ!
「あ、やだ!!どうしよう!!あんなに聞きたい事あったのに!!えと、その!!緊張しちゃって!!」
すごい笑顔を振りまいてる・・・
そ、そんなに嬉しかったのだろうか・・・
ニコニコしながら興奮してテンパってる・・・
ぐぅ・・・
か、かわいい・・・
し、しかしここは俺の平安を守る為に心を鬼にしなくては・・・
ど、どうするか・・・
・・・く、ハート極小だから、この手だけは使いたくなかったが。
背に腹はかえられない・・・
ここは禁断の必殺技・・・
フラグブレイクを発動する!!
はたして円はどう切り抜けると言うのか!?
次回
4話 きになるこの気持ち