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27話 テンプレかよ!!

「え…… ええー」


円は走り行く美里を見ながらそんな事を口走って惚ける。

本日何度目かの美里に対する「どういうこと?」である。

円は若干呆然としながら考える。



えー?

思いっきり無視されたけど?

え?

何? 俺あの子になんかした?

なんかしたっけ?


………してないな

てか、今日で初対面みたいなもんなのに何か有る筈がない…… よな?


んー

ちがうな……

多分、観だけど俺が何かして嫌われてる訳じゃない…… と思う

さっきのあの子

俺の目を見て少し怯えた様な顔をした

俺の顔と言うより、俺の目に恐怖心を抱いた様な感じだった……

さっきは別に殺気(洒落じゃないぞ)を出してた訳じゃないから

考えられるとすれば……

目の色に反応した?


ふむ

もしかして、あの子は一般人嫌いのブレイカーか?



一般人嫌いのブレイカー。

それはこの社会に置いて珍しい事ではない。

いくら人知を超えた力を有するブレイカーであっても基本は人間。

基本的にブレイカーは目立つ事への耐性があると言われているが、中にはもて栄やされることや異常な視線に辟易してしまうブレイカーもいる。

それで無くても、ブレイカーに悪事を働こうと考える一般人も少なからずいるのだ。

一般人を嫌ってしまうブレイカーがいてもなんら不思議ではない。


円は「そう言えば知り合いの人嫌いも同じ様な目をしていたな」とそんな事を考えると、一人納得した様に頷き、そして再び美里の方を見やる。


「な!?」


美里の方に目を向けた円は声大きくして、目の前の光景を凝視する。


「ちっ、展開はやすぎだろっ!!」


円はその光景を見ると軽く舌打ちをして、全速力で走り出す。

目の前の光景、円がほんの少し考え事をしている間に起きた出来事。


「おい!! あんたぁ!! 動くなよぉっ!!」


美里の置かれた状況。

それは……


「うう……」


崖を移動する際に足を滑らせ、辛うじて崖の窪みを片手で掴んだものの、今にも転落しそうという……


「くそっ!! テンプレだなぁ!! ちくしょうっ!!」


円の言う通りのテンプレな大ピンチであった。


————


平原を一望できる絶景、眼下に広がる青々とした緑、切り立った崖、そこにぶら下がる美少女……


「なんだこりゃぁ!」


そんな光景を見て思わずそんな事を漏らす円。

円が美里を見やると、彼女はは崖の窪みに掛けた右手をプルプルとさせながら顔を真っ青にして硬直している。

円はそんな彼女を見るや、険しい顔をして考える。



まずいな、今にも落ちそうだ

それにさっきから吹いてるこの風……

だんだん強くなって来てやがる

空も曇り始めてるし、一雨くるんだろうか?


まぁ、そんな事今は関係ないか……

とにかく急いで助けないといけない事には代わりない

あの子が風あおられて落ちる前に助け出す!!



円は考えを一瞬でまとめると、素早く崖に手を掛ける進み始める。


「よぉし!! すぐ助ける!! 後少しだけがんばれっ…… って、ああっ!!!????」

「きゃぁあああああっ!!??」


円が今正に崖を登ろうとしたその時。

ゴウッと音を立てて凄まじい強風が崖下から吹き上がる。

そして、その強風は円の予想した「最悪」の通りに……


「あぁっっぅッッ!!!」


美咲の小さな体を吹き飛ばし、宙へと巻き上げる。

目を見開き驚愕の表情を浮かべて宙へと投げ出される美里。

自分の前眼で人がゆっくりと落ちて行くのを見つめる円。


円はそれを見た瞬間……


「くっそッ!!」


そう叫びながら、同時に強く崖に踏み込みを入れる。


ズンッ!!


一瞬でマックスにまで力の込められた円の右足。

それが余す事無く、効率的に崖の岩へと伝えられる。

そして次の瞬間に響く鈍い踏み込み音。

岩場にくっきりと残る円の足跡。

そして……


「つおおおおおあッ!!」


弾丸の様に、はじき出された伊浦円の肉体。

それは崖から勢い良く飛び出すとそのまま高速で、宙を舞う美里の元へと飛んで行く。


「きゃっ!?」

「っし!!」


円は真横から美里の体を抱きとめる事に成功する。

そして、その勢いのまま、進行方向上にある岩の出っ張りへと着地しようと体制を整える。


「よし!!」


円は、見事空中キャッチを成功させ、飛び出す寸前で確認した着地点へと向う。

全てが完璧に円のイメージ通りに決まる。

まるでアクション映画のワンシーンの様に……

そんな中、円は集中した時に訪れるスローな世界の中でふと思う。



俺って、こういうイメージ通りに行く時って、大概イレギャラーが起きるんだよなぁ……



そんなフレーズが一瞬、頭をよぎった直後。

着地点に想定していた岩場に、円の右足が触れようとしたその時。


ゴウゥッッ!!!


強烈な風がまたも崖下から吹き上げた。


「うぉ!!」


盛大にあおられる円。

いくら円が高位のブレイカーであり、高い身体能力を有していようとも。

何もない空中で力を発揮する事は出来ない。

故に……


「俺もテンプレだなぁ!! ちくしょう!!」


円と美里はなす術もなく崖から落ちて行くのであった。




次回 落下する二人、円がとった驚きの行動とは!?


28話 落ちる……


※次回予告のタイトルはもう8割くらい変わるから!

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