22話 今日の朝食
ガラガラガラッ
「いい天気だな……」
朝露が太陽に輝き、鼻を抜ける草木の香りと、小鳥のさえずり聞き、爽やかさを感じる伊浦邸の朝。
その主である伊浦円は縁側の木製の雨戸を開き、家の中に新鮮な空気と眩い朝日を取り込む。
さて
今日も一日が始まるな
えーと……
今日は確か登山学習だっけか?
なんでも学校から1時間ほど行った所にある山を4時間くらいかけて登るのだとか
割とハードな方のハイキングコースらしくて、富士山とかとは程遠いが結構な山を登るらしい
なのでコース内を歩く分には危険が無いが道を外すと人生と同じで危険が一杯だと担任が昨日言っていた
確か学校への集合時間が何時もより一時間早い8時
んで今が5時半
ふむ
この家から学校まで電車に乗る時間込みでだいたい50分
少し余裕をみて7時には出るとして
楓達は6時に起こせばいいかな?
よし
そうと決まれば早速朝飯の用意するか
さて、今朝は何にしようか?
やっぱり運動前だからある程度はがっつり食っといた方が良いよな?
でも女の子って普段どんだけ食うんだろうか?
やっぱり、朝はちょっと…… とか言うのだろうか?
うーん
夕凪はまあ問題なく俺と同じだけ食いそうだけど、楓はどうかなぁ?
多分……
多分コレは俺の感だけど
あいつは朝も弱そうだ
残されたらショックだよなぁ
よし、さっぱりしっかりをテーマに今日は作りますか……
————
トントントン
朝日の差し込む台所。
その中で手際良く調理を行う灰色の髪の青年が一人。
彼は既に学校指定のジャージに着替え、そのままそこにエプロンを掛け、三角巾を着け作業をしていた。
彼の銀色の瞳は、そのまま爽やかな朝日を写しどこか楽し気にきらめく。
さーて、昨日買っといたなすをざっくりと大きめに切ってと……
いやー、夏野菜ってうめーよな
なんて言うか夏野菜って聞くだけでなんか元気でるよな
なんてったって響きがいい
それにここらは田舎の方だから本当にうまい野菜が、安く手に入るのがいい
安くてうまい野菜って最高だろ!
ここら辺は田んぼばっかりの米所だから米もうめーし、本当いい物件だよ
さて、なすを切ったらししとうと一緒に洗ってと……
ししとうもうまいよなぁ
たまに先祖帰りのもの凄く辛い奴がいるけどそれを除けば、なんであんなに炒めたししとうって、うまいんだろうな
あとはトマトも賽の目切りにして下準備と
夏食べるトマトも最高だよな
今朝はパスタにするから火を通すけど、本当はこんだけ良いトマトならそのまんまかぶりつきたいなぁ
風呂上がりに湯涼みをしながら縁側でかぶりつく冷やしたトマト……
間違いなくうまいなそれ
ああ、やばい、最高だろそれ
絶対、今夜やろう
まあ、それはそれとしてパスタも茹で上ったか
こっちはお湯を切って置いておいて、コレで下ごしらえは完了
こっからは早いぞ
えーっと熱しといたフライパンにエクストラオリープオイルをひいて、昨日の豚キムチ丼の残りの豚肉と一緒に野菜を炒める
ジュァアアアアアアアアッ
うん、いい音
本当は刻んだニンニクも入れたいんだけど……
さすがに女の子に朝からニンニク食わす訳にはいかねーよな?
でも、ニンニクとオリープオイルの匂いって本当、反則気味にいい匂いだよなぁ
なんて言うか強制的に腹減るよな
まあ、それは次の機会として
とにかくこの肉と野菜に塩こしょうで下味
ちょっとだけスパイシーにしたいからこしょうを少し強めにするか
んで、ぶたにしっかり火が通って、なすとししとうが少しだけしんなりしてきたら、そこにフレッシュトマト投入!
おーおー
超ぐつぐついってんなあ
なんていうかこのトマトを熱した時の仄かに酸っぱい匂い……
嫌いじゃないんだよね
あーしかしやっぱニンニクいれてぇなあ
トマトとニンニクも相性ばっちりだもんな……
ぜってえうまいよ
でも、俺気がつけばなんにでもニンニク入れようとするからなぁ
単にニンニク好きなだけなのか?
まあいっか、それよりトマトの水気も飛んで来たしな……
ここにケチャップと塩で味を整えて、と
……うん、うまい
特に茄子うまい
よーし、これにパスタ絡めてと
うっし、上にバジルをちらしちゃったりなんかして
夏野菜の簡単、あっさりパスタ完成!
うん、なんかパスタってだけでそれっぽく見えるからいいよな
イタリアンってすげぇ
まあ、パスタなら腹持ちもするし、今回は味も濃く無いし、ほぼ野菜だからもたれないだろう
ちょっと濃くしたかったら、お好みでパルメザンをかけてもらおう
「んぁー、いいにおぃー」
「ん?うわぁ!!なにこれ、凄い美味しそう!!」
お?
起きて来たか
「おはよー円」
「おはよう夕凪」
おふ
こいつって朝がにあうなぁ
めっちゃ爽やかなんだけど
やっぱスポーツ美女は違うなぁ
「ふふ」
「ん?なに笑ってんだ?」
なんだ?
ニヤニヤして?
「いやー、なんか意味も無く新婚みたいだなって思っちゃって」
「へ?」
いや、新婚って
嫁役誰?
俺嫁?
「ジャージにエプロンか…… うふふ、律儀に三角巾着けてる辺りがなんか可愛いね!」
「いや…… 可愛いって言われても」
いやいや、男がんなの着けても可愛い訳ねえだろ
やっぱ、夕凪はどっか変だな
……まあ
そこも面白いけどな
「まあ、ちょっと顔でも洗って待っててくれ、俺は楓を起こしてくるよ」
「はーい」
さて、恐らく100%で寝坊助フラグの楓さんを起こしにいきますか
「あ…… 夕凪」
「なに?」
「そこのポットに紅茶入ってるから飲んでていいよ」
「えへへ、ありがとう、円は優しいね」
ああ
うん……
なんだ
可愛いな
おい
次回 楓、寝ぼける!?
23話 寝ぼける




