18話 ゆなちゃんなにやってんのぉ!!
「私たち友達でしょ!!」
そう言い放ち、軽快にウィンクを決める夕凪……
そしてその夕凪に唖然として言葉を失う円……
さらにその二人のやり取りを呆然と見つめるギャラリー……
その空間は一瞬だけ時が止まったかの様に停止した……
しかし、そんな中一人だけ、関係ないとばかりに動き出す少女がいた……
その少女は……
「ゆ…な…ちゃ…ん!!」
もの凄く……怒ったかおで……
「ちょ…と!!」
もの凄く……腹ただしそうに……
「なにやってんのよぉー!!!」
それでいて泣きそうであった……
伊浦円のもう一人の友達……
吉名楓もまた円の教室へと乗り込んで来たのであった……
————
「なにやってんのよぉー!!」
泣きそうな顔で夕凪を怒鳴る楓……
「か、かえ!?」
その楓の表情に軽くはにかみながらマズいと言う表情を浮かべる夕凪……
「うー!!」
楓は尚も泣きそうな……いや半泣きで夕凪を睨みつける……
「うっ……」
その半泣きの顔に戸惑う夕凪……
「えー……」
今のところ被害絶大なのに茅の外の円……
暫しの沈黙が場を支配する……
しかし……
キーンコーンカーンコーン!
そこで無情にもホームルーム開始のチャイムが校内に鳴り響く……
「くぅっ……」
ホームルームの開始に悔しそうな顔を浮かべる優等生の楓。
「ふぅ……」
何となく濁せそうだと安心する夕凪。
「はぁ……」
最近嫌にため息の増えた円。
しかし、そこでこのままでは終わらせないと楓が夕凪の方を向く。
「放課後!!」
半泣きのまま楓は夕凪にビシぃっと指を指す。
「え!?」
それに驚く夕凪。
「放課後に話聞かせて!!絶対!!場所は後でメールするから!!」
必死の顔で訴える楓。
「わ……わかったよ……」
その必死さに押される夕凪。
「それまでここに来ちゃダメだからね!!絶対だからね!!」
まるでだだをこねる子供の様に訴える楓。
「うー……わかったから」
泣く子供には勝てないといった素振りでそれに応じる夕凪。
「ホント?」
「ほんと、ほんと」
「ふぅ……」
安心した表情を浮かべる楓……
そしてちらりと円の方を見る……
その後楓はとことこと小走りで円の元へと近づく……
「あ……あの、伊浦くん!!」
「お……おう……」
「め……迷惑かけちゃって……ゴメンね?」
楓は上目遣いで……
モジモジと申し訳なさそうに円へ呟くと……
「じゃ……じゃあね!」
と……
どこか嬉しそうに挨拶をして、楓を連れて教室を出て行くのであった……
ザワザワと騒がしいその後の教室……
「おい、あの吉名さんと西條寺さんが……なんで伊浦なんかと?」
「しかも……凄い親しそうだったけど……」
「昨日も西條寺さんに呼ばれてたし……」
「あいつ……いったいなんなんだ!?」
教室全体が円に注視する……
今日、夏の日射しが爽やかに降り注ぐ午前……
伊浦円の平和な学生生活は……
最早虫の息であった……
「あいつら……やりたい放題だなぁ……」
自分勝手……しかし……にくめない友人達に……
ただただ……頭が痛い円であった……
————
「もう!!ゆなちゃんなに考えてんの!!」
プリプリと怒り夕凪に説教をする楓。
「いや……でも昨日楓にもいったでしょ?」
余り悪びれもせずそれに返答をする夕凪……
「こんな事するなんて聞いてない!!」
楓は夕凪の言動に腹立てながらも先日の事を思い出すのであった……
次回 楓がご乱心!?
19話 私も!!




