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17話 夕凪の決断

「私を彼女にしてくださいぃっ!!」


は?


え?


なんて?


私を……なに?


して下さい……なにに?


彼女に?


誰の?








はああああああああああああああああああ!!!????


え!?おぉ!?あああ!!??


彼女って……


お、俺のか?


ま、まじでか……!?


………!?



こ、この目……


間違いなく俺を捕捉している……


って事は……


ホントに俺か!!??



まじか……


告白とかされたの……初めてだ……


で……でも……


なんで……俺に?




「あ、あの!!」


おおっ!?なんだ??


「き、今日!!昼にあ、あんな、伊浦君に対して色々言っといてなに言ってるのかと思うかもしれないけど……」


……う、うん


「えーと、えーと……うう!!」


え!?

どうした!?

凄く……見つめて来た……


「わ……私の目を見て!!嘘なんてついてない!!理屈じゃない!!私は!!今!!あ、あなたが好きなのっ!!」




……ッ!!!???


っぐ


か……かわいい……


すごい、目がキラキラしてて……奇麗だ……








で……








でも……ダメだ……








俺は……普通に生きるって……


決めたんだ……


俺が普通に生きてさえ…… 普通の人間でさえあったら……


母さんを亡くすことはなかった……


もう……


俺は……


そんなのは嫌だ……





ブレイカーとつき合うなんてしたら……俺もブレイカーとして生きないといけなくなる……


だから……





「ごめん……君とは付き合えない……」


————


「ごめん……君とはつき合えない……」

心から申し訳なさそうに呟く円……


そしてそれを聞き、なお円を見つめる夕凪……


夕凪は今大きくショックをうけていた……


それは、想い人に思いの丈をぶつけ、そして見事に玉砕したことによるショック……


では……

無かった……


もちろんそれがショックではなかった訳ではない……


だがもとより好かれては無いと思っていた上でのダメもと……

彼女にとってこの告白は、始めから玉砕覚悟であったのだ……


では……

彼女は何にショックを受けていたのか……


彼女がうけたショックは二つ……


一つは円に対して……


もう一つは自分自身に対してである……


————


ふられた……


でも……


そんなことよりショックな事がある……


今、伊浦円が……


凄く悲しそうな顔をした……


私の告白を断る事が……


心底申し訳ないと……


あの澄み切った銀色の瞳を濁らせるような……


悲しい顔を……


私がさせてしまった……


うう……


胸が締め付けられる……


私が彼を悲しませてしまった……


ショックだ……



そして……


もう一つショックな事がある……


自分をふった伊浦円……


その……私をふった伊浦円の事を逆に心配してしまう位、彼を好きな自分……



そして……彼にそんな悲しい顔をさせる事ができる……


あの澄み切った殺意を持つ彼に、こんな可愛い顔をさせる事が出来る……


そんな自分自身への歪んだ喜び……


狂おしい程に、どうしようもない位彼を好きになってしまった……


それもまだであって間もない男に対して……


それほどまでに好きになってしまった……


自分自身の変化が……


凄まじいショックだ……




ふふ……


私は恋愛一つで人格が変わる様な……


そんな人間だったんだな……


でも……


なんだろう……


悪くない……


むしろ……




誇らしい




————


夕凪の告白を断った円とその円を見つめる夕凪……


二人の間に長い沈黙が流れた……


「ねえ……聞いていいかな?」

その沈黙を破る夕凪の小さな声……

その濃紺の瞳には今、何か決意めいた光を感じる。


「ああ……」

夕凪に目をそらしたままそれに小さく答える円……


しかし……


「こっちを向いて!!」

そらしたままの円の顔を自分の方へと向ける夕凪……

「なっ!?」

無理矢理顔を向けられる円……

二人の顔が、息がかかる程近くに接近する……


「正直に答えて」

円の目をまっすぐに見つめ、力の籠った声で問いかける夕凪。

「う……うん」

その圧力に押される円。


「伊浦円が西條寺夕凪をふったのは西條寺夕凪と言う人間が嫌いだから?それとも別の理由?」

まっすぐ……

ただまっすぐ見つめる夕凪……

「ちがう……俺はブレイカーには関わらないって決めてる……だから君とはつき合えない」

その真剣な眼差しに、始めは戸惑うも、それに真摯に答えようと正直に話す円。


二人の真剣な視線が触れ合う……


どこまでも熱く見つめる夕凪に、それに精一杯答えようとする円の申し訳なさそうな視線。


その二つの眼差しは、まるで昼と夜が入り交じる今の夕暮れの様に美しく切なく混じり合っていた。


————


やがて、日が沈み空が夜へと染まる。

流れる沈黙……

しかし……

そこで、夕凪はふと顔を綻ばせる。


「友達!!」

可愛く、無邪気に微笑む夕凪。

「は?」

それに、驚いた声をあげる円。


「だから、恋人がダメなら私と友達になってよ円くん」

美しく微笑む夕凪……

彼女の瞳に、最早迷いは無い……


ときめきを意識し、初恋を認め、己を破壊し、新たな自分を認めた……

最早西條寺夕凪には……

「楓がよくて、私がダメってことはないよね!?」

何の迷いもない……


西條寺夕凪……

彼女は思い込んだら突っ走る女である……


————


「ええっ!?いや……でも……」

突然の事態に狼狽える円……

「もちろん、私があなたを好きなのは変わらない、絶対、だから私があなたの考えを変えてみせる、あくまで友達として」

円の様子など気にもせず話を続ける夕凪……


「いや、だから俺は……」

円は再度つき合えない理由を説明しようとする……

しかし……

「円くん……いや……円!!」

それを遮る夕凪の真剣な瞳……


「あなたにも譲れないものがある様に、私にも譲れない恋がある!!あなたが私を嫌いでないのなら……あなたに私を止める権利は無い!!」


それは夜の空と円の心に、深く響き渡る。

その濃紺の瞳はかつて無い程に強くそして……熱かった……


円はその真剣すぎる瞳と、かすかに震える夕凪の手を見て思う……


はぁ………

嫌いにか……

これは……



なれねぇなぁ……



一度目を瞑り……

そして深呼吸してから再び目を開く円……


その目は何時も通の澄んだ銀色で……

そして夕凪を見つめる……


「わかったよ……よろしく夕凪」


そこには、とても甘い笑顔で握手の手を出す夕凪の姿があった……


————


学園の朝、ホームルームが始まる5分前……


伊浦円は焦った表情で着席をしていた……



ちょっとおおおおおおおお!!


なんか夕凪さんまた俺の教室に向ってるんですけどぉぉぉ!!


ええ!?


なんなの!?


昨日友達になったと思ったら、いきなり「ちょっとやる事出来たから速攻かえるね!!」とかいってあの後速攻で帰っていったし!!


かと思えばまた性懲りも無く教室にくるしぃ!!


もぉー!!


なんなの!?


俺の普通の人生プランは!?





はぁ……


くそ……


もう諦めた……


いや、普通の人生は諦めてないけど……


普通の高校生活は諦めたよ……


どうせ昨日の広場の事件で、めちゃくちゃ目立ってたしね、俺……


はぁぁ……



よし……


よし、上等だ!!


来やがれ夕凪!!


俺が友達として受けて断つぜ!!


一度友達と決めた以上!!


俺はどんな事でも動じないっ!!



ガララ!!


「おはよう円!!」

勢いよく教室の扉をあける夕凪……

「おまえ……なんだそれ?」

その夕凪をみてあっけにとられる円……

「あはは!!マンション引き払っちゃった!!今日から円の家に下宿させて!!」

夕凪は巨大なリュックを背負いにこやかに笑う。


暫しの沈黙……


「はああああぁぁぁっぁ!!」

そしてそれを破る、思い切り動じまくった円の声……

夕凪はそんな円に……


「私たち友達でしょ!!」

軽快にウィンクを決めるのであった……










次回 楓がそこに……


18話 ちょっとゆなちゃんそこに座りなさい!!


夕凪の本領はここからである!!

そう!!彼女はツンデレではなく生粋のデレキャラなのだ!!

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