表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/42

14話 優しさと初恋と

夕凪は強く強く円を見つめる……


先程までの円の一分の隙もない動作……

大気中に張りつめていた円の殺気……

そしてあの冷酷な銀色の瞳……


夕凪はそれを只々、美しいと思ったのだった。


まるで、鍛えられ研ぎすまされた一本の刀ような……

見る物を魅了する……

あの……ため息が出る様な危険な美しさ……

死を生み出す物の……命の美しさ……


夕凪はその美しさを、円から感じていた……

そして、刀がもっとも輝くのは人を斬り殺したとき……


普通ならショックを受けてもおかしくは無い、人を銃で撃ち、暴行を加えるという光景。


しかし、夕凪はその行為を恍惚の表情で見つめていた……

一秒単位で増す円の殺気、一切の容赦のない戦闘行為、美しく鋭く輝く冷酷な瞳……


刀が……研ぎすまされて行く……


夕凪は、自分でも何を考えているのだろうと思うも、一つの思いが頭をよぎる……


この人になら殺されても……いい……


夕凪はその異常な思考が……何によるものなのか気付いていた……

今日、本当の伊浦円に初めて出会って抱いた感情……

それは……


————


「その……大丈夫だったか?」

先程とはうって変わって優しい表情を浮かべる円。

その表情に息をのむ夕凪……


うう……ずるい……

何なのだその笑顔は……

そんなのを見せられては……

もう……後には引けないじゃないか……


夕凪は悔しそうに何時もの様な気丈な表情を浮かべる。

しかし先程の円の配慮に安堵したのだろう……

その瞳からははらはらと涙があふれ始めるる……


「う……くぅ……」

涙を見られて恥ずかしいと思ったのか……

夕凪は顔を背けて涙を拭おうとする……


ふるふると震える夕凪の体……

それは何時もの勝ち気な夕凪ではない……年相応のか弱い女の子だ……


そんな夕凪を円は安心させようと思い、その肩に軽く手を置く……

突然の接触に驚き、びくりと肩を振るわせたあと、ゆっくりと顔を上げ、上目使いで視線を投げ掛ける夕凪……


唇を微かに振るわせ、頬を朱に染め、不安そうな表情を浮かべ、すがる様に視線を投げ掛ける夕凪……


その表情に円はハッとした様な表情を浮かべる。


円はゆっくりと夕凪に声をかける……

「よかったな……無事で……」

その声はとても優しい響きに満ちあふれていた……


その優しい響きに……

徐々に夕凪の表情が崩れ始める……


「う……あぁ……」

円のの胸元に額を預けて涙を流す夕凪……


「こ…わかった……こわかったよぉ……」

円は何も言わず、夕凪の背中をさする……


その……

円の優しさに……

夕凪は心からの安心を覚える……


今日、本当の伊浦円に初めて出会って夕凪が抱いた感情……

それは……


くそぉ……

私……

好きに……


くそぉ……


まぎれも無く一目惚れであった。


————


「うぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


ふう、安心して緊張が途切れたみたいだなぁ

超泣いてるよ……


まあしゃあないな、レイプされかけたんだからなぁ


さっきも戦場で乱暴された女のと似た様な顔してたし……

同じ様にせなかさすってあげたけど、正解だったみたいだなぁ


まあこれでこの子も無事だし、楓さんが悲しむ事もないな


これで後は……


ん……?


泣きつかれて寝ちゃったか


ふむ、都合がいいな……


これから先のは見せられたもんじゃないからなぁ……


さて


後始末をしますか……


————


気絶して転がっている伊集院隼人。


その男に一人の男が近づく。


その男は……


灰色の髪に……


冷酷に輝く……


銀色の眼光をしていた……



次回 伊集院が……ヤバい!!


15話 伊集院の末路

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ