―黄昏時の夢・幻夢2―
〈幻夢〜ハイリSide〜〉2
やっと…戦が終わった…。
逢いに来ると言ってたけど……。
―私から少し…逢いに行っても…いいよね?―
ということでハイリはまた城内に潜り込んでいた。
エドワードの部屋を一直線に目指す。
―着いた!―
コンコン。ドアをノック。「…!誰だ?」
久しぶりの声。思わず…、ハイリはドアを開けると、エドワードに抱きついた。
―エドワード久しぶり!―
「ハイリ…か?二年見ないうちに少し痩せたな。髪も伸びて…綺麗になったよ」
そう言うエドワードは身長が更に高くなりしなやかな筋肉も付いたようで昔よりとても頼もしい姿になっていた。軍服も様になって。
―え?軍服…戦は終わったはずじゃ…。―
呟くと躊躇いがちに話してくれた。
「実は…西国島の王が悪魔に取り憑かれていたことが分かってね。もう戦えるのは私と兄とこの国の王立軍のみなんだよ…。」
―南国島…と北国島は?―
「皆は…悪魔に殺戮されたんだ、ハイリ。」
―そんな…メイデル様や、ナディス様、ラディス様達剣豪も…?―
「あぁ…。」
「エドワード様!!」
扉の向こう側からの声。
「隠れて…。」
言われる通りに物陰に隠れた。
「その声は、リズダか!…何があった!!」
「はっ、ご報告致します。東国島王立軍が追い詰められています。一番隊はまだ半数残っていますが……。今は動けません。」
「何故だ、リズダ!?」
「カルティ様がお亡くなりになりまして…隊は凍結をしております。」
「カルティ…が…死んだ、だと…」そして追い打ちをかけるように悪い知らせ。
「病を患っていたエルド様が先程…倒れられまして…お亡くなりになりました」
―嘘っ!―
思わず叫んだハイリはすぐさま口を閉じた。
「今何か声がしたぞ!」
「大回廊だろう急げ!!」
扉が閉じて。エドワードの口が開く。
「どうして…どうしてっ、私の大事な人を、大事な物を奪っていくっ…」ヒューヒューと荒くトーンの高い声が入り交じったせつない声。
―エドワード…。―
近寄りがたい雰囲気。
「ハイリ…こっちにっ…、ハヤクッ…来て、っ、くれっ、ハイリ…」
いつものやつだと感づいたハイリはベットの下から這い出て後ろからエドワードに抱きついた。
―大丈夫。大丈夫よ、私はここにいるわ。落ち着いて…。エドワード、大丈夫だからね?また過呼吸になりかけているからしっかりと息をして。お願いよ。―
「………ありがとうハイリ、もう大丈夫だから。……ハイリ、君を守るために、戦に行って来る。だから、これを預かっててくれよ。お願いできるかな?」
そう言ってハイリの手に、いつもエドワードが首飾りとして首にかけている大粒で向こう側が見渡せる位のクリスタルの様なルビー、イースタンルビー国の国宝が渡ったのだった。
―私に…?―
「あぁ。行って来るよ。 未来の王女…いや、王妃様ハイリ。」
ヒラリとマントが翻って。エドワードは離れていく…
―待って!お願いよエドワード。―
「ゴメン。今は君の傍には居られない」
ソレハソノヒトノサイゴ。
―エドワード!―
「うわぁ!今の…夢?」
日乃瀬琉唯の呟き。