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pistachio
森の緑がさざめいて
淡い緑の波が
躍動する
湖面に落ちた
一枚の葉がつくる
波紋のようでいて
剥離した
緑柱石の
欠片のようでもある
その色が
生きた緑、と呼ばれるのは
幾百の色を併せても
その一瞬の
光景すら
描ききることが
出来ないからだ
そう言って彼は笑い
悲しげにその瞳を伏せた
彼の目は澄んでいた
何もかもを映すように
その目は
あまりにも無垢で
あまりにも悲痛
そして
あまりにも美しかった
彼の画布に描かれた緑が
彼のいう
生きた緑でなくとも
その瞬間、
確かに
彼の目に映る
その色は
美しかった