悪役令嬢は語る
私の名前はクリスティーナ・コール・フローズン、公爵令嬢だ、今処刑台にいる。
罪状は婚約者であるアレクシス・カール・バン・ハイレート王太子殿下の毒殺未遂。
私と茶会をした際、私が持ち込んだ茶葉で淹れた紅茶を飲んで倒れたためだ。
だが私はやっていないし、裁判も飛ばされて公開処刑などおかしい。
だから私はここで私の無実を証明する。
「クリスティーナ・コール・フローズン!最後に言い残すことはあるか!」
「あります。」
この国での公開処刑では一応弁明の時間が与えられる。
それを使うのだ。
「今回の王太子殿下の毒殺未遂についてですが、私には殿下に毒を盛る動機がございません。
そのため、ここで動機がありそうな人物を考えてみましょう。」
民衆や貴族達がざわざわとしている。
ほとんどが私を貶すような内容だ。
「まず王侯貴族の命が狙われる、その場合家の継承権を巡っての場合が多いです。
そのため第2王子殿下について考えてみましょう。
第2王子殿下に王位を狙うつもりがあったかどうか、その可能性は低いでしょう。
王太子殿下は正妃腹で第1王子、勉学や人柄も優秀で、兄弟仲も良かった。
それに第2王子殿下には婚約者がおりその家に臣籍降下し公爵家に婿入り、婚約者のご令嬢との仲も良好でした。
わざわざ王位を狙う必要もありません。
それに第2王子殿下は勉学よりも武芸が優秀、いえ極めて優秀でした。
そのため婿入りしたあとは騎士団で要職に就くことが決まっており、騎士団長になるのは殿下であろうと言われています。
本人も剣を振るのが好きだと言っておりましたので、わざわざ騎士団長になれる可能性を捨て王位を求めるとは思いません。」
周囲の人々はまぁそれはそうだろうといった反応だ。
「では次に側妃殿下、こちらも可能性は低いでしょう。
側妃殿下は当時の貴族間でのバランスを考え、貴族派の有力な伯爵家から嫁入りしました。
側妃殿下は魔力量や、身体能力が高かった、当時はヤンチャと言われるようなご令嬢で、私とお茶をした際も剣が振りたいと言っておりました。
それに第2王子殿下の婚約者のことも大変気に入っており、よく遊びに行っていると聞いております。
そのため、第2王子殿下が王位を継ぐとなれば現在の婚約者とは婚約解消し、別の婚約者を貰うことになりますし、殿下が剣の才がありいずれは騎士団長にもなれる可能性があると聞いて喜んでいた側妃殿下の可能性は低いでしょう。」
「次は側妃殿下の裏側、ご実家や貴族派の可能性。
これは極めて可能性が高いでしょう。」
そう言うとざわめきが広がる。
「貴族派の筆頭であるダンテ侯爵は野心家だと聞いております。
領民に重税を課したりすることはなく、正当な方法で領地を発展、発言権を強化していたためあまり問題視はしておりませんでしたが。
貴族派は王家や王家派が目に余るような横暴ができないようにする、逆もまた然り。
つまりは相互監視のような事をせねばならないため、ある程度発言力などを強めることは必要ですからね。
最近は陛下の善政、王太子殿下も人柄がよく優秀、国民からの人気も高いです。
そのため最近は王家派の力が強くなりすぎていたため、ダンテ侯爵が力をつけることに関してある程度の監視などは必要ではあれ、邪魔をする必要はないとなっておりました。
かくいう私も表情が変わらず怖い、冷徹、人の心がないのではないかなど言われてはいましたが、能力に関しては認められておりましたし、国民にも薬が届くように、研究施設や、薬草の大規模農園を作ったりと評判も決して悪くはありませんでした。
王太子殿下が飴を、その妃である私が鞭を、王太子殿下と話し合い決めたことでもありましたので、私としても多少心は痛めても自分の仕事ができていると満足しておりましたしね。」
そう言うと、そうだったのかとか、王太子殿下との仲も悪くなかったのではないかと声が聞こえ始める。
「そのため、王家の評判を落としより力をつけることは難しいでしょう。
そうなった場合、考えられる択のうちの1つに勉学が優秀な殿下を排除し、側妃殿下のご実家の所属する貴族派の筆頭であるダンテ侯爵が第2王子殿下の後ろ盾となり、殿下を王にすることが出来れば、今よりも遥かに強い力を持つ事ができるでしょう。」
ここまで来ると今まで以上にざわめきは大きくなり、貴賓席にいるダンテ侯爵を見るものも増えてくる。
「私が犯人とされているのは、私が持ち込んだ茶葉で淹れた紅茶を飲んで王太子殿下が倒れた為です。
ですが私を問答無用で捕え、裁判もせずに公開処刑にする理由としては弱すぎます。
それに殿下とのお茶会は基本的に上位である殿下が先に口をつけますが、私が先に飲む場合もあります。
今回は私が持ち込んだ茶葉でしたので、殿下が先に飲む可能性が高いですが、そういったことを気にせず私が先、もしくは同時に飲む場合も有り得ました。
さて、私は命が狙われているのが殿下なのか、私なのか分かりませんでしたので、殿下が倒れ介抱をした後は王城の一室におりました。
その後部屋に入ってきた騎士たちに問答無用で捕えられ、牢に入れられた為詳しく存じ上げませんので無礼を承知でお聞きしたいと思います。
国王陛下、毒が入れられていたのは殿下のお茶のみだったのか、私のものにも入れられていたのか、お答えいただけますでしょうか。」
皆の視線が陛下に向けられる。
「報告書ではアレクシスのお茶にのみ入れられていたと聞いている。」
陛下が低い声で答える。
「なるほど、ではその調査及び報告書をしたためた者、それらはどなたでしたでしょうか。
私は記憶力に自信があるのですが、私の身柄を拘束し、牢に入れたのは貴族派出身の騎士でした。
本来私ほどの身分であれば身柄の拘束をするにしても相応の手順が必要ですし、地下牢ではなく貴族牢に入れられ、裁判も行われるはずです。
しかし、今回はそういった手順が省かれております。
最終判断を下したのは陛下でありましょうが、判断をするに必要であった陛下に届けられた報告書は信用に値するものでしたか?」
そこまで言うと陛下の顔が顰められる。
きっと陛下の元に届けられた報告書が歪められたものである可能性に気づいてしまったのだろう。
ここで私を問答無用で処刑することもできるが、もしきちんと陛下主導で調査をし、私の冤罪が公になった場合、陛下の評判が下がるだけでなく、フローズン公爵家すらも敵に回してしまう。
父上も母上も貴族であるため、もし私本当に犯した罪で裁かれるのならば潔く身を引くだろうが、冤罪で処刑などすればブチ切れ所ではない。
私のことをきちんと愛してくれているし、王太子妃である私のことを誇りに思ってくれていた。
下手をすれば内乱が起こる。
「フローズン公爵令嬢の公開処刑は延期とする、また私主導で今一度調査を行う。
それまでフローズン公爵令嬢の身柄は王城の一室で預かることとする。」
第1段階は私の勝ちだ。




