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異世界トラック運転手〜神様の下請け業〜

掲載日:2026/02/04

【ドキュメンタリー番組:知られざる職業の世界】

【第127回:異世界転生トラック運転手】


ナレーション:

世の中には、様々な職業があります。

医者、教師、会社員、芸能人。

しかし、中には、誰も知らない職業もあります。

今回、ご紹介するのは、そんな職業の一つ。

異世界転生トラック運転手。

神様からの委託を受け、勇者候補をトラックで轢く仕事です。


【インタビュー:田中太郎さん(45歳)】

場所:某所の喫茶店


インタビュアー(以下、I):

本日は、よろしくお願いします。


田中太郎(以下、田中):

こちらこそ。まあ、緊張しますね。テレビに出るの、初めてなんで。


I:

早速ですが、田中さんのお仕事について教えてください。


田中:

はい。私の仕事は、簡単に言うと、異世界転生のお手伝いですね。


I:

異世界転生、というと……?


田中:

ああ、最近流行ってるじゃないですか。異世界転生もの。主人公がトラックに轢かれて、異世界に転生して、勇者になって、魔王を倒す。あれです。


I:

それは、フィクションではなく……?


田中:

いえいえ、本当にあるんですよ。異世界。そして、転生。私の仕事は、その転生のきっかけを作ることなんです。


I:

つまり……トラックで人を轢く?


田中:

そうです。でも、誤解しないでくださいね。これ、ちゃんとした仕事なんです。神様からの正式な委託を受けてるんです。


I:

神様……?


田中:

はい。具体的には、異世界管理局という組織があって、そこから依頼が来るんです。


【スタジオ収録:異世界管理局について】


ナレーション:

異世界管理局。

それは、神々が運営する、異世界と現世を管理する組織です。

本来、人間には見えない、認識できない存在ですが、今回、特別に取材許可をいただきました。


【インタビュー:異世界管理局 局長・アマテラス様】

場所:異世界管理局本部(天界)


I:

本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。


アマテラス:

いえいえ。こちらこそ、広報活動の一環としてね。


I:

異世界管理局について、教えていただけますか。


アマテラス:

はい。私たちの仕事は、簡単に言うと、世界のバランスを保つことです。現世と異世界、それぞれに問題が起きないように管理しています。


I:

異世界……というのは?


アマテラス:

いわゆるファンタジー世界ですね。魔法があって、モンスターがいて、勇者と魔王が戦う。そういう世界です。


I:

それは、複数あるんですか?


アマテラス:

ええ。無数にあります。世界A、世界B、世界C……数え切れないほど。


I:

そして、そこに人間を転生させる……?


アマテラス:

そうです。異世界には、定期的に勇者が必要なんです。魔王が復活したり、世界が危機に陥ったりするので。でも、異世界の人間だけでは、なかなか勇者が育たない。だから、現世から人材を引っ張ってくるんです。


I:

それが、異世界転生……。


アマテラス:

その通りです。現世で死んだ人間を、異世界に転生させる。そして、チート能力を与えて、勇者として活躍してもらう。Win-Winでしょう?


I:

しかし、なぜトラックで……?


アマテラス:

ああ、それはですね。転生には、一定の条件が必要なんです。事故死、かつ、本人に落ち度がないこと。そうすると、魂が綺麗な状態で転生できるんです。


I:

事故死、かつ、落ち度がない……。


アマテラス:

はい。自殺や他殺だと、魂に傷がつく。病死だと、魂が弱っている。でも、事故死で、突然、理不尽に死んだ場合、魂は綺麗なまま。そして、転生に適している。


I:

なるほど……。


アマテラス:

そして、トラックは、一番手っ取り早いんです。確実に即死できるし、本人に落ち度がないように演出できる。だから、トラック事故が多いんです。


I:

演出……?


アマテラス:

ええ。例えば、子供が飛び出してきて、それを助けようとして轢かれる。これなら、本人は英雄的行為をしたことになるし、魂も綺麗。完璧でしょう?


I:

……複雑ですね。


アマテラス:

まあ、そう言わないでください。私たちも、仕事ですから。


【再び、田中さんへのインタビュー】


I:

異世界管理局のアマテラス様にお話を伺いました。


田中:

ああ、局長ね。お世話になってます。


I:

田中さんは、どのようにして、この仕事を始めたんですか?


田中:

それがですね、元々、私、普通のトラック運転手だったんですよ。


I:

普通の……?


田中:

ええ。運送会社に勤めて、荷物を運ぶ。ごく普通の仕事でした。でも、ある日、事故を起こしちゃったんです。


I:

事故……。


田中:

ええ。人を轢いてしまった。若い男性でした。横断歩道で、信号無視して飛び出してきて……。私は、避けられなかった。


I:

それは……辛い経験でしたね。


田中:

ええ。本当に。私、その後、しばらくトラックに乗れなくなりました。罪悪感で。でも、ある日、夢の中に神様が現れたんです。


I:

神様……?


田中:

ええ。アマテラス様でした。彼女が言ったんです。「あなたが轢いた男性は、今、異世界で勇者として活躍していますよ」って。


I:

え……?


田中:

私も驚きました。でも、アマテラス様は続けて言ったんです。「あなたは良い仕事をした。これからも同じ仕事を続けませんか?」って。


I:

それで……?


田中:

最初は、断りました。人を轢くなんてできない。でも、アマテラス様は言ったんです。「あなたが轢くのは、勇者候補です。彼らは、異世界で英雄になる。あなたは、彼らの人生を変える、重要な役割を担っているんです」って。


I:

そして、受け入れた……。


田中:

ええ。考えました。もし、本当にそうなら、私は人を殺しているんじゃない。新しい人生を与えているんだって。それなら、やってもいいかなって。


I:

具体的には、どのように仕事をするんですか?


田中:

毎月、異世界管理局から、リストが送られてくるんです。今月の勇者候補、みたいな。そこには、名前、年齢、住所、勇者適性、轢くべき日時と場所が書いてあります。


I:

轢くべき日時と場所……?


田中:

ええ。例えば、「12月5日、午後3時、渋谷駅前交差点」みたいな感じです。


I:

それに従って……?


田中:

そうです。その日時に、その場所にトラックで行く。そして、タイミングを見計らって、轢く。


I:

しかし、それは……殺人では?


田中:

法律的には、事故です。ちゃんと、異世界管理局が手回ししてくれて、防犯カメラの映像も、目撃者の証言も、すべて「避けられない事故」になるように調整されてます。だから、私は逮捕されません。


I:

それは……まぁ…便利というか……。


田中:

まあ、神様の力ですから。でも、私も、できるだけ自然に見えるように演出しますよ。例えば、子供を使ったり。


I:

子供……?


田中:

ええ。子供が急に飛び出してきて、勇者候補がそれを助けようとして、轢かれる。これが一番綺麗なパターンです。


I:

子供は、実在するんですか?


田中:

いえ、幻です。神様が作った幻影。勇者候補にしか見えません。だから、周囲の人には、勇者候補が突然道路に飛び出したように見えるんです。


I:

なるほど……巧妙ですね。


田中:

ええ。でも、時々、失敗することもあります。


I:

失敗……?


田中:

ええ。轢き損ねたり、逆に関係ない人を轢いたり。


I:

それは……大変ですね。


田中:

大変ですよ。轢き損ねた場合、勇者候補は転生できません。だから、また別の日に、別の方法で死なせなきゃいけない。それが、面倒なんです。


I:

別の方法……?


田中:

ええ。例えば、電車に飛び込むとか、屋上から落ちるとか。でも、それは、別の業者の担当なんで、私は関与しません。


I:

業者……?


田中:

ええ。異世界転生業界にも、分業があるんです。トラック担当、電車担当、落下担当、溺死担当……。それぞれ、専門の業者がいます。


I:

なるほど……業界なんですね。


田中:

ええ。結構、大きな業界ですよ。年間、何万人も転生してますから。


【ナレーション】


異世界転生業界。

それは、知られざる巨大産業だった。

年間の転生者数は、全世界で約十万人。

日本だけでも、約一万人が転生している。

そして、その裏には数百社の転生業者が存在する。


【インタビュー:業界関係者】

場所:異世界転生業者協会


I:

本日は、ありがとうございます。


協会会長・佐藤(仮名):

いえいえ。この業界のことを知ってもらえるのは、ありがたいです。


I:

異世界転生業者協会について、教えてください。


佐藤:

私たちは、異世界管理局から委託を受けて、転生業務を行う業者の集まりです。現在、登録業者は、全国で約三百社あります。


I:

三百社……。


佐藤:

ええ。それぞれ、専門がありまして、トラック、電車、落下、溺死、火災……。様々な方法で、勇者候補を転生させています。


I:

競争は激しいんですか?


佐藤:

ええ、激しいですよ。特に、トラック部門は人気です。一番確実で、一番演出しやすいので。


I:

田中さんは、その中でもトップクラスだとか。


佐藤:

ええ。田中さんは、成功率が九十五パーセント以上。業界でもトップです。本当、凄いですよ。


I:

成功率……?


佐藤:

ええ。轢くべき人を、確実に轢く。そして、余計な人を轢かない。まさに、プロの仕事です。


I:

なるほど……。


【再び、田中さんへのインタビュー】


I:

田中さんは、成功率が非常に高いそうですね。


田中:

ああ、まあ、そう言われます。でも、別に特別なことはしてませんよ。ただ、丁寧に仕事をしてるだけです。


I:

丁寧に……?


田中:

ええ。まず、リストをよく読む。勇者候補の特徴、性格、行動パターン。すべて把握します。そして、事前に現場を下見する。どこから飛び出してくるか、どのタイミングで轢くべきか、すべてシミュレーションします。


I:

徹底していますね。


田中:

ええ。失敗は許されません。勇者候補を逃したら、異世界が危機に陥る可能性がある。それは避けなければならないですから。


I:

責任感が、強いんですね。


田中:

まあ、仕事ですから。


I:

実際に轢く瞬間は、どんな気持ちですか?


田中:

……正直、複雑ですよ。やっぱり、人を轢くわけですから。でも、同時に、使命感もあります。この人は、異世界で勇者になる。世界を救う。それを信じて、アクセルを踏みます。


I:

信念……ですね。


田中:

ええ。それがないと、できない仕事ですね。


【ドキュメント:ある日の仕事】


ナレーション:

田中さんの仕事を、密着取材させていただきました。

ある日の午後。

田中さんのもとに、異世界管理局から、新しい依頼が届きました。


【映像:田中さんの自宅】


田中:

来ましたね。今月の勇者候補。


(リストを読む)


田中:

佐々木健太、二十五歳、会社員。勇者適性:A。轢くべき日時:明日、午後二時。場所:新宿駅南口。


(カメラに向かって)


田中:

明日ですね。準備しないと。


【映像:現場の下見】


ナレーション:

田中さんは、まず現場の下見に向かいました。

新宿駅南口。

人通りの多い、交差点です。


田中:

ここです。交差点の真ん中。横断歩道を渡ってる最中に、轢く、と。


(周囲を観察)


田中:

防犯カメラは……あそこと、あそこ。管理局が、ちゃんと映像を調整してくれるはず。


(メモを取る)


田中:

よし、シミュレーション完了。明日は、午後一時五十分に、ここに来る。そして、午後二時ちょうどに、交差点に進入。タイミングを合わせて、轢く。


【映像:当日】


ナレーション:

翌日。

午後一時五十分。

田中さんは、トラックで現場に到着しました。


田中:

時間通り。


(深呼吸)


田中:

よし、行くか。


(トラックを発進)


ナレーション:

午後二時。

交差点の信号が、青になりました。

田中さんは、トラックを進めます。

そして、横断歩道に、一人の男性が現れました。

佐々木健太さんです。


田中:

来た。


(集中)


ナレーション:

その時、幼い子供が、突然道路に飛び出しました。

佐々木さんは、子供を助けようとして、道路の中央に飛び出しました。

そこに、田中さんのトラックが……。


(衝突音)


ナレーション:

佐々木さんは、即死でした。


【映像:事故後】


ナレーション:

警察が到着しました。

しかし、田中さんは逮捕されません。

防犯カメラの映像も、目撃者の証言も、すべて「避けられない事故」を示していました。


田中:

(警察に)

本当に、申し訳ありませんでした……。


警察官:

いえ、あなたは悪くない。あの男性が、突然飛び出してきたんだ。仕方ない。


田中:

(カメラに向かって、小声で)

演技も、仕事のうちです。


【インタビュー:事故後】


I:

お疲れ様でした。


田中:

ええ。無事、成功しました。


I:

今、どんな気持ちですか?


田中:

……複雑ですよ。やっぱり。人を轢いたわけですから。でも、同時に、安堵もあります。佐々木さんは、今頃、異世界で目覚めてるはず。新しい人生が、始まってるはず。


I:

確認できるんですか?


田中:

ええ。後日、管理局から報告が来ます。「佐々木健太、無事転生。世界Dで勇者として活動開始」みたいな。


I:

それを見ると……?


田中:

ほっとしますね。ああ、良かったって。自分の仕事が、ちゃんと役に立ってるんだって。


【ナレーション】


数日後。

田中さんのもとに、異世界管理局から報告が届きました。

「佐々木健太、無事転生。世界Dにて、勇者として活動開始。スキル:剣術マスター、魔法適性S。順調に成長中」


田中さんは、その報告を読んで、微笑みました。


【インタビュー:仕事のやりがい】


I:

この仕事のやりがいは、何ですか?


田中:

やっぱり、報告を見たときですね。自分が転生させた人が、異世界で活躍してる。それを知ると、嬉しいです。


I:

具体的には、どんな活躍を?


田中:

色々ですよ。魔王を倒したり、国を救ったり、ハーレムを作ったり。


I:

ハーレム……?


田中:

ええ。異世界転生ものの定番じゃないですか。勇者が、複数の美女と恋に落ちる。あれ、本当にあるんですよ。


I:

そうなんですか……。


田中:

ええ。まあ、私は関係ないですけど。私の仕事は、転生させるまで。その後のことは、勇者次第です。


I:

しかし、中には、失敗する勇者もいるんでしょうね。


田中:

いるみたいです。魔王に負けたり、仲間に裏切られたり、ハーレムで揉めたり。色々あります。


I:

それは……残念ですね。


田中:

まあ、仕方ないです。人生、うまくいかないこともありますから。異世界でも、現世でも。


I:

逆に、成功した勇者の話を聞いたことは?


田中:

ありますよ。例えば、三年前に転生させた人。彼は、今、異世界で王様になってます。


I:

王様!


田中:

ええ。魔王を倒して、国を平和にして、姫と結婚して、王様になった。立派なもんです。


I:

連絡は取れるんですか?


田中:

いえ、取れません。異世界と現世は、基本的に通信できないので。ただ、管理局から、年次報告が来ます。「○○は、現在も健在。国を統治中」みたいな。


I:

それを読むと……?


田中:

誇らしいです。ああ、あの時、ちゃんと轢いて良かったって。


【インタビュー:仕事の苦労】


I:

この仕事の苦労は、何ですか?


田中:

やっぱり、精神的な負担ですね。どれだけ「転生のため」と言われても、人を轢くのは、辛い。


I:

特に、辛かったケースは?


田中:

……ありますね。若い女性を轢いたとき。彼女、まだ二十歳だったんです。大学生で、夢もたくさんあって。でも、勇者適性がSランクで、異世界が本当に危機的状況で。轢くしかなかった。


I:

そのとき、どう思いましたか?


田中:

……本当に、これでいいのかって。でも、轢きました。仕事だから。そして、後日、報告を見たら、彼女は異世界で女勇者として活躍してて、魔王を倒して、国を救って、英雄になってました。


I:

それを見て……?


田中:

少し、救われました。ああ、彼女は現世では叶えられなかった夢を、異世界で叶えてるんだって。


I:

でも、複雑ですね。


田中:

ええ。凄く複雑です。でも、それが、この仕事ですから。


【インタビュー:家族について】


I:

ご家族は、この仕事のことを知ってるんですか?


田中:

妻は知ってますよ。最初は、信じませんでしたけど。でも、管理局の人が説明してくれて、納得しました。


I:

奥様は、どう思ってるんですか?


田中:

……やっぱり複雑みたいです。夫が、人を轢く仕事をしてるって。でも、理解はしてくれてます。「あなたは、人を殺してるんじゃない。新しい人生を与えてるのよ」って、いつも言ってくれます。


I:

支えになってますね。


田中:

ええ。妻がいなかったら、この仕事、続けられなかったかもしれません。


I:

お子さんは?


田中:

息子が一人。高校生です。息子は、知りません。まだ、話してない。


I:

なぜですか?


田中:

……どう説明していいか、わからなくて。「お父さんの仕事は、トラックで人を轢くことです」なんて、言えないじゃないですか。


I:

確かに……。


田中:

でも、いつかは話さないとな、とは思ってます。息子が、もう少し大人になったら。


【インタビュー:業界の問題】


I:

この業界には、問題もあるんでしょうね。


田中:

ええ、あります。例えば、悪徳業者。


I:

悪徳業者……?


田中:

ええ。勇者候補じゃない人を、勝手に轢いて、「転生させました」って報告する業者がいるんです。


I:

それは……。


田中:

詐欺ですよね。でも、管理局も完璧じゃない。たまに、そういう業者を見逃しちゃう。そうすると、無関係な人が死んで、しかも転生もできない。最悪です。


I:

そういう業者への対策は?


田中:

協会が、定期的に監査してます。でも、完全には防げない。だから、私たちプロは、常に正確に仕事をしなきゃいけない。業界の信頼を守るために。


I:

他には?


田中:

あとは、勇者候補の質の低下ですね。


I:

質の低下……?


田中:

ええ。最近、勇者適性が低い人が増えてるんです。昔は、AランクやSランクが多かったんですけど、最近はBランクやCランクが増えてる。


I:

それは、なぜですか?


田中:

わかりません。でも、管理局の人が言うには、現世の人間の質が落ちてるんじゃないかって。


I:

現世の人間の質……。


田中:

ええ。ストレスが多くて、心が弱ってる人が増えてる。そうすると、勇者適性も下がる。困ったもんです。


I:

それで、異世界は大丈夫なんですか?


田中:

まあ、何とかなってるみたいです。質が低くても、数で補ってるみたいで。でも、将来的には心配ですよね。


【インタビュー:将来の展望】


I:

この仕事を、いつまで続けるつもりですか?


田中:

……わかりません。できる限り続けたいとは思ってます。でも、いつか、限界が来ると思います。肉体的にも、精神的にも。


I:

後継者は?


田中:

いません。この仕事、誰にでもできるわけじゃないので。特別な資質が必要なんです。


I:

特別な資質……?


田中:

ええ。まず、神様に認められないとダメ。そして、精神的に強くないとダメ。人を轢いても、平気でいられる。そんな人、なかなかいません。


I:

田中さんは、平気なんですか?


田中:

……平気じゃないですよ。毎回、辛いです。でも、やります。それが、私の使命だから。


【インタビュー:メッセージ】


I:

最後に、視聴者にメッセージを。


田中:

メッセージ……ですか。うーん。


(考える)


田中:

世の中には、色んな仕事があります。私の仕事は、特殊です。理解されにくいし、褒められることもない。でも、必要な仕事だと思ってます。誰かが、やらないといけない。だから、私がやる。それだけです。


I:

……ありがとうございました。


田中:

こちらこそ。


【エピローグ】


ナレーション:

取材を終えて、数週間後。

田中さんから、連絡がありました。

「息子に、仕事のことを話しました」と。


【インタビュー:息子に話した後】

場所:田中さんの自宅


I:

息子さんに話したんですね。


田中:

ええ。もう隠せないと思って。


I:

どんな反応でしたか?


田中:

……最初は、信じませんでした。「お父さん、何言ってるの?」って。でも、管理局の人が来て、説明してくれて。それで、ようやく信じました。


I:

そして……?


田中:

驚いてました。そして、怖がってました。「お父さん、人殺しなの?」って。


I:

何と答えましたか?


田中:

「違う。お父さんは、人に新しい人生を与えてるんだ」って。そしたら、息子は黙り込んで……。しばらくして、言ったんです。「お父さん、すごいね」って。


I:

すごい……?


田中:

ええ。「そんな大変な仕事、よく続けられるね。お父さん、尊敬するよ」って。


I:

それは……。


田中:

嬉しかったです。息子に、理解してもらえて。認めてもらえて。


I:

良かったですね。


田中:

ええ。これで、もう少し、頑張れそうです。


【ナレーション】


異世界転生トラック運転手。

それは、知られざる職業。

しかし、確かに存在する職業。

そして、それを支える、一人の男がいる。

田中太郎さん。

彼は、今日も、トラックのハンドルを握る。

新しい勇者を、異世界へ送るために。


【特別インタビュー:転生した勇者】


ナレーション:

最後に、特別ゲストをお招きしました。

田中さんが転生させた、元勇者です。

彼は、異世界で魔王を倒した後、特別な手段で、一時的に現世に戻ってきました。


【インタビュー:元勇者・山田一郎さん(仮名)】


I:

本日は、ありがとうございます。


山田:

いえいえ。こちらこそ。


I:

あなたは、三年前、田中さんのトラックに轢かれたそうですね。


山田:

ええ。覚えてます。横断歩道を渡ってたら、突然、子供が飛び出してきて。助けようとして、気づいたらトラックが……。


I:

そして、異世界に……?


山田:

ええ。目が覚めたら、草原にいました。そして、女神様が現れて、「あなたは勇者です。この世界を救ってください」って。


I:

それで……?


山田:

最初は、混乱しました。でも、チート能力をもらって、仲間もできて。それで、魔王を倒しました。


I:

すごいですね。


山田:

まあ、大変でしたけどね。何度も死にかけたし。でも、楽しかったです。


I:

今は、どうしてるんですか?


山田:

異世界で、王様やってます。結婚もしました。子供も三人います。


I:

幸せですか?


山田:

ええ。とても。こっちの世界より、ずっと幸せです。


I:

田中さんに、何か伝えたいことは?


山田:

……ありがとうございます、って。あの時、轢いてくれて。おかげで、新しい人生が始まりました。本当に、感謝してます。


I:

田中さん、聞いてますか?


田中:

(スタジオで)

……ええ。聞いてます。


(涙を拭く)


田中:

良かった。本当に、良かった。


【エンディング】


ナレーション:

異世界転生トラック運転手。

それは、人の人生を変える仕事。

辛く、苦しく、理解されにくい仕事。

しかし、誰かが、やらなければならない仕事。

田中太郎さんは、今日も、その仕事を続ける。

新しい勇者のために。

新しい世界のために。


【テロップ】

「この番組は、フィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません」


(でも、本当にフィクションなのでしょうか……?)


【番組終了】


---


【ボーナストラック:未放送インタビュー】


I:

ところで、失敗したこと、ありますか?


田中:

……ありますね。一度だけ。


I:

どんな?


田中:

勇者候補を、轢き損ねたんです。タイミングがずれて。そしたら、その人、普通に生き続けて。


I:

それで?


田中:

異世界は、大変なことになりました。勇者が来ないから、魔王が暴れ放題。結局、別の勇者を急遽転生させて、何とかしましたけど。


I:

その、轢き損ねた人は?


田中:

今も、普通に生きてます。会社員やってます。本人は、何も知りません。自分が勇者候補だったことも、異世界を危機に陥れたことも。


I:

……複雑ですね。


田中:

ええ。でも、それ以来、絶対に失敗しないって決めました。


I:

プロフェッショナルですね。


田中:

仕事ですから。


(完)

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