第一章 喪失
この物語は”人生”をテーマに制作しました。皆さんは今までの自分の人生を振り返ってみて、「自分の人生生きてるな」と胸を張ることはできますか。他人との付き合い、職場、学校などの様々な場所で過ごしていると「自分の人生ってなんだろう」と考えることはありませんか。もしかすると、中には「人生ってしんどい」と思ってしまう方も居るかもしれません。この物語はそんな”人生”を送る方への贈り物として投稿します。この物語では主人公を含めた登場人物には名前を付けていません。なぜなら主人公や登場人物は貴方と貴方の周りの方々だからです。主人公は今読んでくださっている皆さんと同様に「人生、歩いてみた」という本に出会います。皆さんと同じです。人生の悩みは違うかもしれませんがこれを見た皆さんがこの物語の主人公です。これから主人公はこの本の内容を埋める旅に出ます。皆さんも同じように旅に出て主人公と共にこの本を埋めていってください。内容は人それぞれです。急いで完成させる必要はありません。”人生は歩くものですから” 何年、何十年経とうが構いません。ただ大切にしてほしいのは「人の数ほど道はある。誰にも代わりは務まらない貴方だけの道、歩いてみませんか。」という文です。同じ人生を送る人は居ません。同じことをしていても人それぞれ感じ方や考え方は違います。それに気づいてほしいのです。どうかこの小説を通して皆さんの人生が少しでも”自分だけの人生”を見つけることができますように。
「どうしてこんなことになってしまったのだろう」
僕は今まで誰にも迷惑をかけずに生きてきたと思っていた。
でも、そう思っていたのは自分だけだったらしい。
「ただいま、帰ったよ。」僕は妻と息子の三人で暮らしていた。
何よりも大切で、本当に目に入れても痛くないほどかけがえのない存在だった。でも、今はもう居ない。
いつものように声をかけても自分自身の声しか僕の耳には届かない。出ていってしまったのだ。
あの日がきっかけで。
僕は営業職で働いていた。
成績も優秀で部下や上司にも尊敬されていた営業に出れば、必ず契約を勝ち取ってくることから「営業の神様」なんて大層な異名も付けられた。家族との仲も良かった。
息子は将来サッカー選手を目指していたほどのスポーツ少年でいつも元気いっぱいで庭を走りまわっていた。学校では友達も多く、モテていたらしい。
妻は静かで優しい性格をしていて残業で夜遅くに帰っても不満を一つもこぼすことなく笑顔で迎えてくれた。毎日弁当を作ってくれていて涙が出るほど美味しかったのが今でも覚えている。
しかし、それもまるで波が砂浜の足跡を消していくように跡形もなく消えていった。あの日からだ。
忘れることもできないあの日から僕の幸せな人生は姿を消した。
「君、ちょっとこっち来なさい。」突然社長が僕に話かけてきた。
今までの称賛の声とは違って鋭く尖った口調だったため、僕は思わずハッとして応えた。
なんで呼ばれたのかまるで予想ができなかった。
「僕何かやってしまったかな」という思考が頭を駆け巡った。
社長室に行くと社長席の前に置かれているソファに同僚が座っていた。
同僚は涙を流していたのだろうか、ハンカチを自分の目に当てていた。
「そこに座りなさい」社長の一声に訳も分からないまま従って同僚の向かいのソファに座った。座ったときも彼女はヒック、ヒックと泣いている素振りを見せていた。
「どういうことか説明してもらおうか」そう言われて社長から手渡されたのはある写真だった。
そこに映っていたものを見て僕は自分の目を疑った。
そこに映し出されていたのは僕だった。僕が彼女に暴行を加えていた一部始終を映していたのだ。
僕が彼女の顔を殴った結果だろうか、彼女の顔は真っ赤に腫れていてそれを見て僕が笑っている写真だった。
それを見て僕はめまいを起こすほど混乱した。
なぜなら、そんなことをした記憶が頭のどこを探しても見当たらないからだ。
そのことを社長に言っても「どうせ酒で酔って覚えていませんでしたってことだろ」と嘲笑と共に返されて聞く耳を持たなかった。
その後も何度も自分は無実であると訴えても社長は非難、同僚は泣くばかりで口論は平行線を辿っていくばかりだった。
数時間後、僕が声を上げ過ぎて少し間を置いていると、社長がこの機を伺っていたように一枚の紙を僕の前にあるテーブルに置いた。
「君は今日付けでここを出ていけ」その紙には退職通告書と書かれていた。
「受け取れません、納得がいきませんよ」僕はその紙を自分の前からどかした。
それを見た社長がそうかと上から見下げるように言うと今まで黙って聞いていた同僚が声を出した。
「もうこの写真は会社全体のメールに投稿しています」その言葉を聞いて僕の背筋は凍り付いた。
言葉を失う僕を待たずに彼女は言葉を続けた。
「ずっと貴方のことが嫌いでした、仕事ができるのも家族と幸せそうなのも。だから、全部ぶっ壊してやりますよ」
今まで涙を流していたときとは人が変わったように静かに狂った笑みを見せながら。
僕は一体何を言っているのか理解できずに目を見開くことしかできなかった。
その後、社長の一声で僕は社長室から突き飛ばされるように追い出された。
僕はそのときようやく彼女の言葉を理解した。僕は陥れられたのだ、あの二人に。
自分の席に戻ると周囲に社員達からの鋭い視線が返ってきた。
犯罪者を見ているかの如く鋭い目を皆していた。小さい声でひそひそ話している声も聞こえていた。
「あの人実は本当にやばい人だったんだ。今まで契約取れていたのももしかして暴力でなのかな。間違いないよ、絶対そうだよ」
あちこちで小さく僕のあることないことを噂する声に僕は耐え切れず、逃げるように職場を出ていった。
今まで起きたことが夢かどうかも訳が分からないまま僕は足早に帰宅した。
途中で足が動かなくなりいつもより遅く、気づけば夜もとうに更けていた。
やっとの思いで家に帰って「ただいま」と声をかけても誰も返事をしない。
妻と息子の名前を呼んでも帰ってくるのは自分の問いかけの声のみ。
リビングにたどり着くとテーブルに二つの紙が置かれていた。
一つは離婚届、もう一つは二人からの手紙が置いてあった。
「貴方を信じることができなくなりました、息子と共に出ていきます、さようなら」そう紙には書いてあった。
間違いない、妻の字だ。離婚届には僕が書く欄以外の全てが記入されていた。
家の周囲を見渡すと僕の物以外無くなっていた。
朝見ていた光景とは違って家族としての痕跡は消えていた。
僕は変わり果てたその光景を見て、僕は同僚だった彼女の言葉を思い出す。
「全部ぶっ壊してやりますよ」そう、僕は職も家庭もそして幸せだったはずの人生も完全に破壊されたのだ。
随分経ってから分かったことだが、彼女は僕の幸せそうな姿を見て嫉妬し、社長に色仕掛けをして結託して僕を追い出すように仕向けていたのだ。
僕が居ない間に社長が僕の家族に接触し、この件を話して離婚するように画策していた。
さらにあの写真も社長のコネを使って広告系の職人に作らせたものだった。
どうりで記憶になかったわけだ。僕はこの光景を信じられずに膝から崩れ落ちた。めまいも起こし、その場で吐いてしまった。
口から、目から、体中から液体が滝のように流れ落ちた。
五年が過ぎた現在、僕は心身に異常をきたし生活保護を受けながら生活している。
何をするにも気力がない、体力もない。
同僚や社長に対する怒りを思い出すと嘔吐してしまうため考えることもできない。
十分に睡眠をとることもできずに毎日睡眠薬を飲んでから眠る。
それでも十分に寝られずに二時間もすれば起きてしまう。
外に出ると周囲の話し声や視線が過去の職場での出来事と重なり、まるで自分のことを言っているかのように感じて外に出ることもできない。
そんな生活を送っているとある日突然家の郵便受けが僕を呼んだ。
その音につられて玄関に着くと何か分厚いものが入っていた。
何だろうと見てみるとそれは一冊の本だった。
「人生、歩いてみた。」この本の題名だろうか、表紙部分にはそう書いていた。
ペラペラとめくってみるが、ほとんど白紙だった。
一体どうなっているんだと思い始めていたとき、最後のページにたどり着いた。
そこにたったこの文だけが書かれていた。
「人の数ほど道はある。誰にも代わりは務まらない貴方だけの道、歩いてみませんか。」
最後のページの中心書かれたこの文を見た僕の目は意思とは関係なく濡れていた。
私はこれを見た日からまた一歩ずつ人生を歩いてみることにした。
読んでいただき誠にありがとうございます!前書きも長くなりました、読みづらいと思われた方申し訳ありません。私の気持ちが爆発していました。初心者ですので誤字脱字あるかもしれません。(確認はしてますけど…)表現もあまり得意ではないので意味が分からない所もあるかもしれませんので誤字脱字も含めて気軽にコメントしていただくとありがたいです。誹謗中傷と強い口調だと感じるような文は控えていただきますと幸いです。不定期になりますが続きも出していきますので是非気軽に読んでくださり、感想コメントなどしていただくと励みになります!よろしくお願いいたします。




