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AIの本棚 本当はやめろよ!と言いたいけど他  作者: 村松希美


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7 サスペンス教室ー地獄だねー





 チャイムが鳴っても、誰も席にはつかない。


 教室の空気は、ぬるい重湯のように濁っていた。




 ――ここは、三年二組。


 誰もが他人の目を気にして生きる「実験室」だった。




 主人公・新田(にった) (あおい)は、そんな空気を誰よりもよく知っていた。


 昨日、転んだ男子を助けた。


 その瞬間、クラス全員の視線が一斉に刺さった。


 「出しゃばり」


 「良い子ぶり」


 そんな囁きが、空気の裂け目から流れ込む。




 翌日、葵の机の中には、ノートを切り刻んだ紙片が詰め込まれていた。


 笑っているようで、笑っていないクラスメイトたち。


 ホームルームで担任の坂口先生が「最近、空気が悪いな」と言ったとき、


 誰も返事をしなかった。




 「空気が悪いのは誰のせい?」


 そう言ったのは、クラスの中心にいる神崎莉央だった。


 彼女の一言で、全員が空気を合わせる。


 「そうだよね」


 「みんなで仲良くしよう」


 その言葉の裏には、暗黙の支配があった。




 ――できなければ、笑われる。


 ――目立てば、潰される。


 ――意見をすれば、制裁される。




 地獄のルールは、誰も声に出さずとも浸透していた。




 ある放課後。


 葵は黒板の前に立ち、消えないチョークの跡を見つめていた。


 「正義なんて言葉、もう使わない方がいいよ」


 隣に立ったのは、無口な転校生 藤堂(とうどう) (ひかる)だった。




 「どうして?」と葵が尋ねる。


 光は黒板に指でなぞるように言った。


 「この教室は、誰かが悪くなきゃ保てないから」




 葵は息を呑んだ。


 光の机も、すでにマーカーで落書きされていた。


 彼は笑っていた。


 「でも、壊す方法なら、あるよ」




 翌週。


 教室の掲示板に、匿名の紙が貼られた。


 《このクラスは、誰かが犠牲にならないと平和でいられない。》


 《あなたは次に笑う側? 泣く側?》




 その日から、空気が揺れた。


 誰もが隣を信用できなくなり、神崎莉央さえ怯え始めた。


 犯人探しが始まり、教室のバランスは崩壊していく。




 「やったの、君でしょ?」と莉央が葵に詰め寄る。


 葵は静かに言った。


 「もしそうなら、どうするの?」




 教室の中に沈黙が落ちた。


 その沈黙は、誰もが隠してきた「怖さ」を映していた。




 そして、坂口先生が言った。


 「このクラス、いっそ全部壊してしまおうか」




 その言葉に、生徒たちは初めて笑った。


 誰かのせいにすることも、正義を装うこともやめて、


 ただ「怖かった」と口にする者が出てきた。




 泣きながら謝る声が、次々に響く。


 光がぽつりと呟いた。


 「やっと、みんな人間に戻ったね」




 葵は黒板に新しい文字を書いた。


 『ここから始めよう。』




 地獄のような教室にも、


 ほんの少しの「勇気」と「共感」があれば、


 救いは生まれるのかもしれない。




 ――サスペンス教室。


 誰もが被害者で、誰もが加害者だった場所。


 だが、その終わりに芽吹いたものは、


 確かに希望と呼べるものだった。




 教室の窓から、春の光が差し込んでいた。









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