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AIの本棚 本当はやめろよ!と言いたいけど他  作者: 村松希美


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2 俺の人生終わった





パタン!




 学校から帰ってきた航は、自室のドアを閉めた。静かな部屋に響くその音が、まるで世界から自分を隔絶した合図のように感じられた。制服のままベッドに倒れ込む。顔を腕で覆うと、昼間の光景がまぶたの裏に焼き付いて離れない。




「俺の人生、終わったな」


涼の、あの冷たい目が忘れられない。いつものように「よう、コウ!」と肩を組んでくれるはずの涼が、俺からスッと目を逸らした。あいつが、俺のマブダチの涼が、まるで俺が存在しないかのように通り過ぎていった。あの瞬間、俺の世界はガラガラと音を立てて崩れ落ちたんだ。




 あれから、1ヶ月が経った。


学校には行っていない。母さんは心配そうに声をかけてくれるけど、俺はただ頷くだけで、それ以上何も話せなかった。父さんは何も言わない。それがかえって俺を苦しめた。




 毎日はゲームとマンガだけ。気づけば朝になっていて、気づけば夜になっている。この生活が、いつまで続くんだろう。




 最初のうちは、涼の裏切りに怒りを感じていた。どうして、どうしてあんなことしたんだよ。俺たちは友達じゃなかったのかよ。そうやって心の中で何度も叫んだ。でも、今はもう怒りも湧いてこない。ただただ、虚しいだけだ。




 人生って、何なんだろう。学校に行って、勉強して、良い大学に入って、良い会社に就職して。それが「正しい」生き方だって、みんなは言う。でも、俺にはそのレールがとっくに外れてしまったように思えた。




 最近、ふと考える。


人って、本当に何かしていなければならないのかな?


世の中の人はみんな、せかせかと忙しそうにしている。電車の中ではスマホを見ているか、寝ているか。カフェではパソコンを開いているか、誰かと話しているか。誰もが何かしらの「活動」をしている。




 でも、俺は今、何もしていない。


学校にも行かず、友達もいない。ただ部屋にいるだけ。この生活は、世間から見たら「無駄」なんだろうか。人生の「落伍者」なんだろうか。


そう考えると、また胸が苦しくなる。


でも、本当にそうか?




 俺が今、こうして何もせずにいる間にも、太陽は昇り、沈んでいく。鳥は鳴き、風は木々を揺らす。世界は俺が何をしていても、何もしなくても、変わりなく進んでいく。




 俺は今、立ち止まっている。でも、その立ち止まっている時間の中で、今まで見えなかったものが見え始めた気がする。涼との関係のこと。学校のこと。家族のこと。そして、自分のこと。




「俺の人生終わった」って、あの時は本当にそう思った。でも、もしかしたら、これは「終わり」じゃなくて、「始まり」なのかもしれない。


重い体を起こし、窓を開ける。




 夕日が眩しい。オレンジ色に染まった空が、やけに綺麗だ。この空は、涼も、父さんも、母さんも、みんな見ているんだろうか。




 俺はまだ、何も答えを見つけられていない。明日、学校に行けるかどうかもわからない。でも、ひとつだけ確かなことがある。




 俺はまだ、生きている。


風が、そっと俺の頬を撫でていく。冷たい風の中に、何かが変わる予感がした。






 もう一度、立ち上がってみようかな。










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