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くちびるを触られた

作者: しろかえで

 この納涼会が私達新人の本格的な“お世話係”デビューだった。

 幹事を務める先輩方の指示の元、配膳から始まり、おつまみや飲み物の補充、食器の入れ替えなど独楽鼠(コマネズミ)となり、息つく暇も無く余興のご披露!!


 今年の新人は……1課の鈴木さんと2課の兵頭くん、3課の私と4課の竹内くんの4人。

 先程、上司先輩に披露した拙い余興も……7月の毎土曜日に4人で“休日出勤”してクソ暑い会社の大ホールで練習した物だ。


 当然、練習の後はビヤガーデンや居酒屋での“お疲れ会”となり、私達はそれなりに仲良くなった。

 特に1課と2課は仕事上の繋がりが強いせいか……鈴木さんと兵頭くんはより仲良しで……この間の日曜日に一緒に映画へ行ったらしい。


 このふたり、ちょっとした隙に揃って席を立ち、まだ戻って来ない。

 さて、どうしたものか……

 斜め前に座っている竹内くん、ちょっと元気が無い??

 ひょっとしたら鈴木さんの事が好きだったりして……それを兵頭くんに先を越されて落ち込んでる?? 鈴木さん、美人だからなあ……

 これは……前に座ってあげた方がいいのかなあ??

 枯れ木も山の賑わいで……って例えが違う??

 とにかく、カレの空のコップにビールを注いであげよう!


「お疲れ!竹内くん」

「あ、ありがと、でも……」

「えっ?!何??」

「そのピッチャー、ビールじゃ無くて発泡酒だよ。瓶の方がビール」

「エ~!いいじゃん!似た様なもんでしょ!?」

「それ、“キミんとこの”3課の佐野課長にやったら怒られるから」

「そ、そうなの?!アリガト」

 私のこの発言に竹内くんは軽くため息をついた。

 私はバカにされた気がして軽くムカついたので言い返してやった。

「そういう竹内くんだって!さっきからちょっとノリ悪くない?!」

「んー!ちょっと今日は酔いが早いかな……あ、でも、これはせっかく注いでくれたから飲むよ」

「いいよ!!どーせ、ビールと発泡酒のチャンポンで気に食わないでしょ?!」

「そんな事、言ってない」

「いいえ!顔が言ってますぅ~!」

 思わず口を尖らせたら……

 竹内くんの人差し指がスーッと伸びて下唇を触られた。

「ええっ?!」

 絶句してしまった私の目の前で竹内くんは自分の人差し指をパクン!と咥えた。

「やっぱ、マヨだ」

「ええええ??!!!」

 こんな事をされたら

 絶対!!怒りのスイッチが入る筈なのに……

 私、ドキドキしてる??


「ごめん!オレ酔ってるワ」

 カレの瞳がトロンと熱い。

「そ、そりゃそうね……皆からあんなに飲まされちゃ……」

 でも、カレ、熱い瞳のまま頭を振る。

「ああ、ゴメン!私がチャンポンさせたんだね!」

「オレ、まだ飲んでないよ」

「じゃあ返して!」

「混ざったものは返せないよ」

「いいから!!私が飲む!!」

 とグラスに手を伸ばすと

「間接キスになるよ」って言われてしまい手が止まった。


 カレはいつの間にかいたずらっ子の目で、グラスに口を付けグビリ!と飲んだ。


「佐藤のくちびるってさ!マヨ味だけど砂糖の様に甘かったよ」


 こんなセクハラを言われて真っ赤になった私だけど……この夜、私と竹内くんは……きっと鈴木さんと兵頭くんより……仲良くなってしまった。




                              おしまい







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― 新着の感想 ―
はぁ? (こういうので深い恋になるん?)
 あらあら、  竹内くんが元気無かったのは、彼女と二人きりになったせい❔  どうやって口説こうと考えてした事ではないですね。  酔っぱらうと人間素直になりますもんね。笑
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