エピローグ~その星が、未来の誰かにとって夢の星であるように~
夢に向けて、二人は歩き始めた。
それがどれほど遠い道でも、道の先にはいつもゆめのほしが輝き、行く先を示す。
プロキシマを目指す二重連星を櫻という太陽が照らし、それぞれの路を歩みながらもその軌道は決して離れることはない。
地球が太陽を巡る公転から飛び出す事が無い様に。彼らの軌道も安定し、互いに補強し合うものだった。
4.5光年……現代の人類にはあまりにも絶望的に過ぎる距離。
しかし、宇宙の中で、どこかの誰かが確信していた。
いつか、少女の想いが少年に届いたように……
人類の夢もまた、願いの星へと届くのだと。
エピローグ——旅の終わり、旅の始まり
西暦2145年。
人類はついに恒星間航行技術を実用化し、光速の99%に達する宇宙船を建造した。
地球を出発した探査船〈ブレイブ〉は、超光速通信(HLT)を利用しながら4.5光年の旅を経てプロキシマ・ケンタウリ星系に到達する。
目的は、100年以上前に観測された居住可能惑星の本格的な探査だった。
「プロキシマ・ケンタウリ星系への進入を確認。目標惑星の周回軌道へ移行」
ブリッジに響く通信士の声。
スクリーンには、赤い恒星の光を受ける青と緑の惑星が映し出されていた。
この星の名は——
『しずるぼし』
かつて、ある少女が夢に見た星。
その名は今、宇宙探査史に刻まれ、人類が初めて到達する地球外惑星の名として語り継がれている。
「通信リンク確立。リレー衛星〈さくらぼし〉、軌道投入完了」
「……ちらヒューストン、ブレイブ、信号を受信した」
「HLTは状況良好、さくらぼしとの通信テストを行う」
「了解した、こちらもチェックを行う……通信に遅滞なし、安定している」
「こっちもだ、ヒューストン、我々はプロキシマ・ケンタウリ第2惑星に到達した」
〈ブレイブ〉が展開したのは、地球との超光速通信を確立するためのリレー衛星。
それは、しずるぼしの空に浮かび、地球との架け橋となる存在だった。
——まるで、二人の未来を見守るように。
「了解した、ブレイブ……現時刻を持ってプロキシマ・ケンタウリ第2惑星は正式にしずるぼしと名付けられる」
「了解……ドローンからデータが上がってきた。大気組成、地球型に類似。海と陸地を確認……生命存在の可能性あり」
報告を聞いた乗組員たちは、歓喜と興奮に満ちた表情を浮かべる。
探査艇が発進し、史上初めて人類が他の恒星系の地に降り立とうとしていた。
「……静流博士、聞こえていますか?」
管制席に座る女性が、胸元のペンダントをそっと握る。
それは、代々受け継がれてきたもの。
中に収められたデータを再生すると、ホログラムが浮かび上がる。
そこに映し出されたのは——
かつて、星へと夢を託した二人。
日野静流と、日野結城。
「私たちの夢が、この星に届く日が来るなんて……」
微笑む二人の姿を見ながら、管制官の目に涙が滲む。
彼らが願った未来が、今、現実となったのだ。
「さて、彼女への初のタッチだ、焦る気持ちは判るが、優しくいこうぜ、ブレイブ」
〈ブレイブ〉のクルーは、慎重に降下を開始する。
人類が初めて、太陽系を超えた世界へと降り立つために——
夜空に輝く一つの星。その名は、しずるぼし。
その軌道には、地球との絆を繋ぐさくらぼしが浮かぶ。
夢は、いつか叶う。
たとえどれほどの時を経ても、願いの星は人類を導く。
その星が、未来の誰かにとって夢の星である限り
——Fin.
ここまで読んでいただきありがとうございます。
普段からダークファンタジー系統で血と鉄の話ばかりなので、たまに方向性を変えようと頑張ってみました。




