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クラスメイト達の予定調和な反応

 櫻の事は気にかかるが、それでも、静流と結城は出来る範囲を一緒に過ごす。

 この二人の雰囲気が変わった事は、クラスメイト達もそう時間をかけずに知る事となった。


 二人の恋愛は同年代のそれに比べて静かなものだったが、同時にここまでの三角関係に比べれば相当安心できる、と好意的に受け入れられていた。

 ここまでで落ち込む男子が居てもおかしくないような感じではあるが、実の所静流も櫻も結城に対するラブの漏出が強すぎたため、ほぼ全ての男子から対象外となっていたのは、今更になって本人に知らされた事実である


「……そういうわけで、誰も落ち込んでないぞ、結城」


 酉城がどこか楽しげに肩をすくめる。


「むしろ、やっと収まるとこに収まったって感じで、ほっとしてるくらいだべ」


「いや、そんな風に見られてたなんて、正直複雑なんだが……」


 結城が頭をかくと、猪俣が苦笑した。


「いやいや、お前、今更だろ?静流と櫻のラブの漏出がすごすぎて、誰も割って入る余地なかったんだって」


「……マジで?」


「マジで」


「まじまじ」


 酉城と猪俣が同時に頷く。


「俺らなんて最初から観客席だったしな」


「演劇より長ぇ三角関係をずっと見てたべさ」


「だからさ、お前と静流が付き合うって聞いた時も、『ああ、ようやくまとまったか』って感じだったわけよ」


 結城はため息をついた。


「……なんか、俺だけがあれこれ悩んでたみたいで、めっちゃバカみたいじゃねぇか」


「おっそいんだよ」


「まぁ、でも結城らしいべ」


「……うるせぇ」


 からかい半分のクラスメイトたちの言葉に、結城は苦笑するしかなかった。


 一方静流は女子たちに囲まれて尋問……いや、質問攻めにされていた。


「ま、まだキスしか……って何言わせるの!?」


「いやいや、そこ大事だから!」

「うんうん、続けて続けて!」

「それでそれで!?いつ!?どこで!?どっちから!?」


 静流は顔を真っ赤にして、必死に首を振る。


「ち、違っ……だから、そういうのは……!」


「はいはい、じゃあキスはどんな感じだったの?」


「え……っ!?そ、それは……その……」


「うわ~、これはめっちゃいいリアクションいただきました~!」

「静流ってば、普段冷静なのに、こういうのには弱いんだね~」

「で、で!?どっちから!?」


 静流は両手で顔を覆った。


「もうやだ~~っ!」


 女子たちはキャーキャーと盛り上がりながら、なおも静流を追い詰めていく。


「結城助けて~~~~!!」

「いや現状それは火に油じゃね!?」

「そんな事言わないでかばってよ~!!」


 普段の静流からは軽く想像できない絡み方である。

 それを見た女子一同がより楽しそうに追及を強めたのは言うまでもない。

 結城は教室の反対側で繰り広げられる静流の悲鳴を聞きながら、助けに行くべきか迷った。しかし、女子たちの勢いを見ると、今飛び込んだら自分が新たなターゲットになるのは目に見えている。「いや、でも放っておくわけにもいかねぇよな……」と呟きつつ、彼は意を決して立ち上がった。


「よし、ちょっと待てって!」


 結城が声を張り上げると、女子たちの視線が一斉に彼の方へ向いた。その瞬間、静流が隙をついて女子たちの包囲網から抜け出し、結城の背後に隠れるようにして飛び込んできた。


「結城~、助かった~……」


 静流は彼の背中にしがみつき、半泣きのような声で訴える。普段の冷静沈着な彼女からは想像もつかない姿に、結城は思わず苦笑した。


「お、お前、普段とのギャップがすごいな……」

「こ、こういう時くらい頼らせてよ!」


 女子たちはそんな二人を見て、さらに盛り上がる。


「うわ~、今度は結城が静流をかばうターンきた~!」

「やっと恋人らしいとこ見れた!」

「ねえねえ、結城君!静流ちゃんが『キスしか』って言ってたけど、それってどういう状況だったの!?」


 結城は一瞬言葉に詰まり、顔が赤くなるのを感じた。「お前ら、ほんと容赦ねぇな……」と呟きながら、静流を背中で庇ったまま、どう切り抜けるか考えを巡らせた。

 その時、教室のドアが開き、担任の先生が顔を出した。


「おいおい、休み時間とはいえ騒ぎすぎだぞ。授業始めるから席に戻れ!」


 女子たちは「え~!」と不満げな声を上げつつも、渋々散っていった。結城と静流はほっと息をつき、互いに顔を見合わせた。


「……助かったぜ、先生に感謝だな」

「うん……でも、次はもっとうまくかわさないと、私もう耐えられないよ……」


 結城は静流の疲れ切った表情を見て、思わず笑いそうになるのを堪えた。「まぁ、そういうとこもお前らしいっちゃらしいけどな」と軽く肩を叩くと、静流は「何!?」と少しムキになって反論してきた。

 その様子を遠くから見ていた酉城と猪俣が、再びからかい半分に口を開く。


「ほら、また始まったべ。あの二人、付き合っても結局こんな感じだな」

「まぁ、これで収まるとこに収まったってのは間違いねぇけどよ」


 教室は笑い声に包まれつつ、次の授業へと移っていった。結城と静流は、クラスメイトたちの温かい視線の中で、少し照れくさそうにしながらも、自分たちのペースで新しい関係を築いていくのだった。



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