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美少女二人の衣装合わせと殺陣の練習

 学校祭の演劇本番が近づくにつれ、 衣装合わせの日 がやってきた。


 演劇部の部室の扉が開き、静流と櫻がゆっくりと姿を現す。


「……うおっ」


 結城は 思わず息を呑んだ。


 目の前に立つのは、 まるで別世界の住人 のような二人の少女だった。


 ★静流の衣装 ~冬の夜空を纏う娘~

 静流が身に纏っていたのは、 白を基調とした着物風の衣装。

 薄い水色の刺繍が裾や袖口に繊細に施され、まるで 冬の夜空を映したような 静謐な美しさを放っていた。


 袖は長めで、歩くたびにゆるやかに揺れ、 その動きが 柔らかな風を感じさせる。

 帯は淡い銀色で結ばれ、控えめながらも気品を感じさせるデザインだった。


 髪はいつものようにさらりと肩に落ちていたが、 耳元には小さな星の飾りが光る。

 彼女が耳に触れたとき、星型のピアスがかすかに揺れ、その輝きが衣装と調和していた。


 足元には、 白い草履に水色の紐が添えられたもの。


 静流が衣装の袖をそっと掴み、 恥ずかしそうにうつむく。


「……ど、どうかな?」


 その仕草すら、まるで舞台の一幕のようだった。


 ★櫻の衣装 ~燃え立つ炎のような娘~

 対照的に、櫻が纏っていたのは、 深紅のアイヌ風の衣装。

 金色の刺繍が大胆に施され、 力強くも華やかな デザインが際立っていた。


 丈は静流よりも少し短めで、動きやすいようにアレンジされている。

 袖の部分には、アイヌ文様が入り、彼女の快活な印象をさらに際立たせる。


 髪は いつもより高めのポニーテールに結ばれ、 その先端がピンと跳ねている。

 耳には アイヌ伝統の飾りをモチーフにした、小さな三日月型のイヤリング。


「どーよ! ボク、似合ってるべさ!?」


 櫻が 自信満々に腰に手を当て、くるっと回る。


 その動きに合わせて スカートの裾がふわりと広がり、金色の刺繍がきらめく。

 草履の代わりに、 編み込まれた革のサンダル を履いており、より動きやすい印象を与えていた。


「……はっ!? もしかして、惚れた?」


「バカ言え!?」


 結城が 思いっきり目を逸らした瞬間、教室が笑いに包まれた。


「本気で着飾ったら、そりゃ 絵になるに決まってる べさ!」


 櫻が ドヤ顔で言い放ち、静流が顔を赤らめる。


 こうして、 衣装合わせは無事(?)に終わった。


 ★殺陣の訓練 ~男子組、嫉妬の力~

 学校祭の演劇本番が迫る中、 殺陣の訓練 も本格化していた。

 体育館の片隅に設置された特設ステージで、 結城と男子組 は竹刀を手に汗を流していた。


「おらっ、もっと腰入れろや!」


 掛け声とともに 竹刀が勢いよくぶつかり合う。

 指導役を務めるのは、剣道部の主将である 酉城。


 彼の厳しい視線が、演劇部の男子メンバーを射抜く。


「お前ら、舞台の上だろうが、戦う男が迫力なかったら台無しだべ!」


「うぐっ……お前の気迫が一番ヤバいっての……」


 結城が息を切らしながら竹刀を構え直す。

 彼の前には、同じく演劇に参加する 男子たちが並んでいた。


 ★男子組の嫉妬

「けどよー……なんで日野だけ、殺陣シーンで静流と櫻に挟まれるんだよ?」


「しかもさ、静流ちゃんを助けるシーン、めっちゃ熱いじゃん。“ユキノエ! 俺が守る!” って……」


「それに比べて俺たちは追っ手役だぞ!? ひたすら結城に斬られる側じゃねーか!」


 男子組から 不満の声 が上がる。


「お前ら、嫉妬するなら強くなれ!」


 酉城が バンッ! と竹刀の柄で床を叩く。


「そうだな……お前ら、もっと本気でやれよ。舞台上で迫力負けしたら、マジでダセぇぞ?」


 結城が息を整えながら、ニヤリと笑う。


「……チッ、やる気出てきたぜ……!」


 男子組が メラメラと闘志を燃やし始める。


 こうして、殺陣の訓練は 男子たちの嫉妬とプライドをかけた本気の戦い へと変わっていった。


 ★体育館で訓練中

 演劇のクライマックスに向けた 殺陣の練習 は、いよいよ カムチャ vs. カパッチリの一騎打ち に入っていた。


 カムチャ役の 結城 は竹刀を握りしめ、対峙するのは カパッチリ役の酉城とりしろ


「さぁて、いっちょ派手に散ってもらうべか?」


 竹刀を肩に担ぎながら、 余裕の笑み を浮かべる酉城。

 彼は剣道部のエースであり、普段から鍛えられた体格と 戦闘慣れした実力 を持つ男だ。


(……まともにやったら、勝ち目ねぇよな)


 結城は 静かに息を整えた。

 カムチャは 戦い慣れた戦士 ではない。だが、ユキノエを救うために刀を振るう。


「よし、来い」


 酉城が 竹刀を構えた瞬間――


「うおおおおっ!!」


 結城が 全力で突っ込んだ。


 ガキィンッ!!


 竹刀と竹刀がぶつかり合う。

 一瞬の拮抗――しかし、次の瞬間には結城が弾き飛ばされていた。


「ぐっ……!」


 体育館の床に転がる結城を見下ろしながら、酉城が 肩をすくめる。


「おめぇな……力任せすぎるべや」


「……だって、まともにやったら勝ち目ねぇし」


「そりゃそんだ……けどよ、負けられねぇ理由があるんだろ?」


「……」


 結城が 竹刀を握り直す。

 このシーンは、 カムチャがユキノエを奪還するために戦う、最大の見せ場。


 酉城が ニヤリと笑う。


「だったら、お前らしい戦い方を考えろよ」


 戦士としてではなく、 ひとりの男として。

 この舞台で、カムチャは 何を見せるべきなのか――。


 結城の中に、新たな覚悟が芽生えた。


 カムチャ、戦場を駆ける ~七変化の戦術~

 体育館の特設ステージ。

 カムチャ(結城) vs. カパッチリ(酉城)の一騎打ちは、戦場を舞台にした総力戦 へと変貌していた。


「おらぁっ!」


 結城は アイヌ刀 を振りかぶり、正面から突っ込む。

 だが――


「甘ぇ!」


 酉城の竹刀が 横から叩き落とす。


「ぐっ……!」


 結城はバランスを崩しながらも 即座に次の武器へ。

 転がるように 落ちていた和刀(模造刀) を拾い上げ、体勢を立て直す。


「まだまだ!!」


 和刀を構え、カムチャ流の戦いが始まる。

 戦士としての正面勝負では 圧倒的に不利。

 ならば――


 "戦場を使いこなして勝つ"


 結城は 後ろに転がると同時に、竹刀スタンドの一本を蹴り飛ばし、視界を遮る。

 酉城が一瞬ひるんだ隙に、結城は 和刀からストゥ(アイヌの槍)へ持ち替え、突きを繰り出す。


「おっ、切り替えたな!」


 酉城がそれを躱し、カウンターを狙う――だが、その瞬間、結城が 猪俣を盾にする。


「ちょっ、ちょおおお!? なんでオレぇぇぇ!!?」


 猪俣の絶叫とともに、竹刀が彼の背中に直撃。

 酉城の一撃が無駄打ちとなり、結城はすかさず 横へ転がる。


「くそっ、姑息なマネしやがって!!」


「戦い方にルールはねぇんだろ!? 俺はカムチャ、勝つためなら何でも使う!!」


 和刀、アイヌ刀、ストゥ――

 そして 猪俣を含む戦場そのもの。


 七変化の立ち回りで戦場を駆け抜ける結城。

 観戦していたクラスメイトたちが 大盛り上がり する中――


「こりゃ……とんだカムチャが出来上がったな」


 酉城が ニヤリと笑い、竹刀を構え直した。


 カムチャ vs. カパッチリ――

 七変化の戦いは、まだまだ終わらない。


 ★ただでさえ面倒な相手なのに――カパッチリ

「結城、おめぇ、なぁ……!」


 酉城カパッチリの目がギラリと光った。


 体育館の特設ステージ。

 アイヌ刀、和刀、ストゥ(槍)、猪俣(盾)――使えるものは何でも使って戦場を駆け抜ける結城の姿は、まさに七変化の戦士だった。


 だが、それでも――


「カパッチリを甘く見てんじゃねぇぞ!」


 酉城の足が地を蹴り、爆発的な踏み込み。


「くっ――!?」


 結城が 竹刀を受け止めるより速く、次の一撃が飛んできた。


「突けば槍――!」


 竹刀の柄頭が鋭い突き となり、結城の腹を狙う。

 間一髪で身をひねり回避。だが――


「振れば長刀――!!」


 今度は 竹刀が旋回し、横薙ぎに振り抜かれる。

 結城が 身を低くしてギリギリでかわす。


「持てば太刀――!!!」


 一瞬の隙を突き、酉城が 真上から振り下ろす!


「ぐっ……!!」


 結城は アイヌ刀で受け止めるが、圧倒的な力で押し込まれる。


「てめぇの七変化も悪くねぇがな……こっちは、棒術を含む武術だ!!」


 酉城は 竹刀一本を、槍に、長刀に、太刀に変えながら戦う。

 それは、結城の戦場七変化に匹敵する、いや、それ以上の戦闘技術。


「……はは、こりゃ、勝ち目ねぇな……」


 歯を食いしばる結城の目に、カムチャの最期 の映像がよぎる。

 だが――負けるつもりはない。


「だったら――!」


 結城は最後の切り札を使う。


 そう、戦場にはまだ "もうひとつの武器" があるのだから――!

 結城は、近くで見学していた猪俣の襟を掴むと、振り回し――


「ミサイル発射ぁぁ!!!」


 ぶんっ!!


「……へ?」


 酉城が 絶句する間もなく、猪俣の巨体が飛ぶ。


「ちょっ……!? いや、待て――うぎゃああああっ!!?」


 猪俣が 回転しながら酉城に激突!!!

 そのまま二人は舞台の端まで転がっていった。


「ぶほっ……!! てめぇ……猪俣使うなんて卑怯だべ!?」


 酉城が 埃まみれになりながら 叫ぶ。


「戦場では使えるものはなんでも使うんだよ!!」


 結城が どや顔 で竹刀を構えるが――


「ぐはっ、まじで痛ぇ……お前ら、少しはオレの気持ちも考えろや……」


 猪俣が うめきながら 這い上がる。


 しばしの沈黙。


「猪俣!傷は深いぞ、がっくりしろ!」

「いのまたぁぁぁぁぁぁっ!!」


 結城が血を吐くような悲痛な叫びを上げ、膝をつく。


「勝手に殺すなや!!」


 猪俣がすかさずツッコむも、周囲の男子組は完全にノリノリである。


「バカな……あの猪俣が、こんなところで……!」

「お前は強かった……強すぎた……!」

「……くそっ、冗談みたいに頑丈なお前が、こんなことで……っ!」


「だから、勝手に殺すなっつってんべや!!」


 必死に抵抗する猪俣だが、すでに周囲の男子たちが「戦場で散る仲間」の演技に入ってしまっており、もはや彼の意思とは関係なく進行している。


「……おい猪俣、お前の最後の言葉を聞かせろ……」

 結城が涙を浮かべながら猪俣の肩を揺さぶる。


「だから死んでねぇっつーの!!」


 しかし、そこへ酉城が近づき、静かに言い放つ。


「……今のは、いい演技だったべ。これは、本番でも使うべ。」


「使うなや!!!」


 猪俣の叫びが虚しく響く中、男子組の殺陣練習は、今日も なんだかんだで 楽しく進んでいくのだった。


 ★真面目なところは、ちゃんとやる。

「……さて、今のは茶番として――」


 結城がふぅっと息を整え、竹刀を構え直す。

 冗談混じりの戦いとは違い、今度は 本気の殺陣稽古 だ。


 酉城も竹刀を握り直し、静かに結城を見据える。

「遊びはここまで、だな……。きっちり仕上げるべ」


「おう。やるからには、ちゃんとやるぞ。」


 受け身の重要性

 結城はまず、基本となる 受け身の確認 から始めた。

「転ばされるシーン、実際にこけるけど、下手するとマジで怪我するからな。」


 酉城が頷く。

「受け身、甘く見てると肩とか手首持ってかれるべさ。」


 バタンッ!

 そのままきれいな受け身を見せる。


「こんな感じで衝撃を逃す。舞台でもリアルでも、受け身を取れなきゃ戦えない。」


「おっけー、理解。じゃあ実際にやってみっか。」


 道具を使った受け

 次に、酉城は 木の枝や周囲のものを使った受け を披露した。


「例えば、敵が斬りかかってくるとする。剣で受けるだけが能じゃない。」


 パシィン!


 竹刀が飛んできた瞬間、酉城は 舞台の脇に転がっていた木の枝を拾い、それを盾にして受ける。


「こういう不意打ちとか、斬られるシーンの演出にも使える。」


 結城が「なるほどな」と感心する。

「こういうのも、単なる演技じゃなくて、戦場のリアリティを出すための工夫ってわけか。」


「そういうこと。カムチャは戦闘慣れしてる設定だし、実際にアイヌの戦い方をリスペクトするなら、使えるものはなんでも使う のが正しい。戦場で形にこだわるやつは死ぬからな。」


「……にしても、お前、どこでこんな知識仕入れたんだ?」


「……まぁ、本とか、色々な人に教わったりな。」


 酉城は少しだけ目を逸らす。

(剣道やってるといっても、こういう実戦的な発想は別のところから学んだものだしな……)


「ま、いいべ。とりあえず、今日はここまでしとくか?」


 酉城が汗を拭いながら尋ねると、結城が肩をすくめる。

「いや、もう少しだけ。どうせなら最後までやりきろうぜ。」


「……んだよ、お前がやる気出してんの、なんぼか珍しいな。」


 そう言いながらも、酉城もまた竹刀を構え直した。


 真面目な部分は、しっかり真面目に。

 茶番も交えつつ、結城たちの稽古は本番に向けて着実に進んでいくのだった。

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