表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/74

バカにしないで!

 結城の状況が自意識過剰と言えばまさにその通りだが、今の彼をその一言で切り捨てられる人物は、誰かに恋をした事も、恋をされた事もない人物だろう。

 二人の間で揺れる事を禁じられ、どちらかを選ぶ事を突き付けられて、それでも自身の責任において誰も傷つけない事を義務付けられる。

 本当は誰からもそんな事は思われていないのだが……まぁ、それを弱さと取るか優しさと取るかはその人次第、となる事でもあろう。


「みつけたっ!」

「みつけたよ、結城」


 不意に、暗闇の中に光が差した。今一番聞きたくて聞きたくない二人の声が重なった。

 結城が僅かに目を上げると、そこには、少しだけ息を切らした櫻と静流の姿があった。


 なにをどう言ったら良いか判らない。

 そんな結城に、櫻が声をかけた。


「ねぇ、ゆーき……もしかして、ボクとしずるちゃんの事、バカにしてる?意思決定もできないような、少女漫画に出てくるヒロインみたいな女の子だと思ってる?」


 自然な共通語、櫻が内心怒っている時のサインだ。


「いやそんな事……」

「だったらさ、なんで、ボク達に相談してくれないの?」


 櫻ほど派手でなくとも、静流も思う所はあたのだろう、結城の視界の中で、一つ頷く。


「結城、私たちは、決めたよ。どっちが選ばれても、後悔しない、お互いが大切なのは変わらない」

「まぁ、ボクとしずるちゃんが従姉妹だからってのはあるけど……別に一人で決めた訳じゃないよ?ちゃんと二人で話し合って、ケンカして、想ってる事全部言い合って、決めたんだ」


 どこまでも真剣に、まっすぐに、逃がさない。櫻と静流の目が、結城を捕える。


「結城、私たちは、結城に頼るだけの弱い女の子じゃない、結城だけに重い責任を負わせて、自分たちはそれから逃げようなんて思ってない」


 櫻の右隣で、櫻と同じく、結城の頬に手を当てて、静流もまた、真剣に言う。


「……俺は……」


 ここにきて、まだ根強く結城の中に根を張る、己への自信の無さが顔を出す。

 彼女たちの予想どうりに。

 二人で「しょーがないなぁ」と顔を見合わせて苦笑い。


「判った、今、結城には文字通り勇気が足りないんだべさ」

「なら、私たちが分けてあげる」


 なにを、と考える間もなく、二人分の手で顔を上げさせられる。

 目の前には、櫻の顔が迫っており……

 唇の右半分に、彼女の柔らかな唇が重なった。

 かすかに香る匂い、結城は櫻が薄く香水をかけていることを初めて知った。

 櫻が離れると、すぐに静流の顔が迫る。

 今度は同じ唇の左半分に、静流の、やはり柔らかい唇が重なった。

 彼女の耳に付けられた星のピアスが凛と光る。


「元気、でた?」

「ちゃんとしたのは、選んでくれたらその時に、してあげるべさ」


 二人分の照れた表情が、結城の視界の中で微笑んだ。

 結城は、ため息を吐く。


「……ほんと、なっさけねぇな、俺は……世界一、情けなくてダセぇや」


「うん」

「そうだね」


 容赦ない二人の反応に、思わず苦笑する。


「はは……手加減してくれよ」


「流石に腹に据えかねる所はあるべさ」


「……これだけは、約束して? もう絶対、自分がいなくなれば、なんて考えないで」


 静流の真剣な目に、結城は深く息を吐く。


「……あぁ、約束するよ」


 そうして、結城の中の観測点は、ようやく安定し始めた。

感想、評価などお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ