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2学期 本格始動!

 始業式後の教室

 夏休みが終わり、2学期の始業式が終わった教室はざわつきに満ちていた。余市の学校の窓からは秋の気配が漂う風が入り込み、教室の空気を少し涼しくしている。結城は窓際の席に座り、櫻は教卓近くで友達と話しており、静流は自分の席でノートを整理していた。

 そこへ、大崎が教室の後ろからドカドカと入ってきた。眼鏡を怪しく光らせながら、彼がカバンから一束の紙を引きずり出す。

「学校祭でやる演劇の脚本だけどさ、夏休み中で作ってきたよ!」

 教室から「うぉっ」「マジ!?」と驚きの声が上がる。大崎が得意げに眼鏡を押し上げ、ニヤリと笑う。

「ふっふっふ……コミケ前の修羅場だったけど、やり遂げたさ~!」

 結城が窓から目を離し、大崎を見やる。

「コミケって、お前、夏休み何やってたんだよ」

 櫻が教卓から飛び跳ねて近づく。

「なんぼかすごいべさ! さっきー、脚本ってどんなよ? 見せれや~!」

 彼女の白に薄い桜色の髪が跳ね、勢いよく大崎に詰め寄る。

 大崎が「落ち着きなっての」と笑いながら、櫻を制する。

「今くばっからさ。ちょっと待てって」

 彼が紙束を手に持つと、クラスメイトたちが興味津々に集まり始める。

 脚本を巡るざわつき

 静流が席から立ち上がり、穏やかに言う。

「さきさん、えらい頑張ったね。私も見てみたいな」

 彼女が近づくと、白に薄く水色の髪が教室の蛍光灯に映え、静かな雰囲気が周りに広がる。

 大崎が紙束を教卓に置き、一枚ずつ配り始める。

 大崎の台本発表

 教室で大崎が配った脚本のタイトルは『木の下の誓い』。彼が教卓に立ち、眼鏡を光らせながら概要を説明する。

「時代は不明。余市のアイヌと赤井川のアイヌの間で戦いが起こってさ。余市の青年カムチャと赤井川の娘ユキノエが恋に落ちるけど、コタン同士の行き来が禁じられて、人目を忍んで木の下で会うんだ。そこに余市の娘アイノが絡んで、三角関係が悲劇に発展する話だよ」

 結城が台本を手に持つと、櫻が「なんぼかすごいべさ!」と目を輝かせる。静流が隣で静かに読み進める中、大崎が続ける。

「結城がカムチャ、しずがユキノエ、櫻がアイノでどう? 三角関係っぽいべ?」

 教室が「うぉー」「ピッタリじゃん」とざわつく中、三人が顔を見合わせる。


 余市のコタンに暮らす青年カムチャは、赤井川のコタンの娘ユキノエと愛し合っていた。しかし、両コタン間の戦いで行き来が禁じられ、二人は中間の木の根元で密かに会うようになる。それを知った余市の娘アイノは、カムチャに想いを寄せていたが、彼の心がユキノエに傾くのを見て嫉妬に駆られる。アイノが二人の関係を双方のコタンに暴露し、カムチャは捕らえられユキノエに会えなくなる。だが、カムチャは村を脱走し、刀を手にユキノエを奪う。二人は追手から逃げ、あの木の下で逃げ切れないと悟り、命を絶つ。両コタンの人々は二人の死に悲しみ、戦いを終結。アイノは悔やみつつ、生涯その木を守り続けた。(クライマックスは(仮))


 教室では、大崎が配った台本『木の下の誓い』を手に、結城、櫻、静流が配役に盛り上がっていた。結城がカムチャ、静流がユキノエ、櫻がアイノというドラマティックな三角関係が決まり、クラスメイトたちも「楽しみすぎる!」と騒いでいる。

 その時、結城が台本の最後の方をめくり、眉をひそめる。

「ところで、さきさん、これ、クライマックス部分が『(仮)』って書いてあるだけだぞ。何だこれ?」

 大崎が教卓に肘をつき、眼鏡を光らせながらニヤリと笑う。

「あ~、なかなかしっくりこなくてさ。どうせなら最後に結城にどっちか決めてもらっても良いかなって思って」

 結城が「は?」と声を上げ、櫻と静流が同時に「え?」と顔を見合わせる。教室が一瞬静まり、みんなが大崎に注目する。

 大崎が立ち上がり、芝居がかった口調で続ける。

「つ~ま~り~、あんたはコタンから逃げる時に静流を奪い取りに行ってもいいし、櫻を連れて行っても良いのよ。選べるのはどっちか一人! カムチャの最後の選択を、結城に委ねるってわけ!」

 教室から「うぉおおお!」「マジかよ!」「それヤバい!」と歓声が上がる。

 三人の反応と緊張感

 結城が台本を握り潰しそうになりながら言う。

「お前、ふざけんなよ。俺が静流か櫻か選ぶって……何だその展開!?」

 夏休みの水族館やプラネタリウムでの思い出がフラッシュバックし、彼の心が一気に揺れる。櫻の元気な笑顔と静流の穏やかな手握り――どちらかを選ぶなんて、想像しただけで頭が熱くなる。

「揺れが小さくなったと思ってたのに、また試されるのかよ……」

 櫻が勢いよく立ち上がり、大崎に詰め寄る。

「さきさん、なんぼか無茶だべさ! ゆーきがボクか、しずるちゃんか選ぶなんて……ボク、アイノで負けたくないべさ!」

 彼女の白に薄い桜色の髪が跳ね、声が教室に響く。アイノとしてユキノエ(静流)に嫉妬しつつも、結城に選ばれたい気持ちが溢れる。

「ボク、ゆーきに想い届けるよ! しずるちゃんに負けるつもりないべさ!」

 静流が台本を手に持つと、穏やかな声に微かな震えが混じる。

「さきさん、それって……結城が私か櫻ちゃんか、選ぶの? なんかドキドキするけど、怖いよ」

 彼女が結城と櫻を交互に見る。ユキノエとしてカムチャ(結城)と愛を貫く役だが、櫻のアイノに選ばれる可能性が心を締め付ける。夏休みのプラネタリウムでの温もりが、試される瞬間だ。

「結城、私を選んでくれるかな……櫻ちゃんの勢いも、なんぼかすごいから」

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