表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/74

帰りの電車で……

 20分間の振り返り

 櫻が指を折って数えながら言う。


「ふれあい水槽でヒトデ触ったの、気持ち良かったべさ。クラゲも綺麗だったし、アザラシも面白かったよ!」


 結城が頷く。


「クラゲは確かに良かったな。あの幻想的な感じ、ちょっと静流っぽかったけど……櫻が隣で騒いでたから、静かにはならなかったな」


 少し静流の名前を出してしまったが、櫻が気にしないように笑顔で返す。


「ボク、なんぼかうるさいべさって! でも、ゆーきが笑ってくれたからいいよ」


 櫻が少し目を細めて続ける。


「イルカショー、なんぼかすごかったべさ! ボク、呼ばれてびっくりしたけど、イルカと握手できて嬉しかったよ」


 結城が苦笑する。


「あのシャワーは予想外だったけどな。お前、びしょ濡れで慌ててて、ちょっと面白かった」


 櫻が頬を膨らませて抗議する。


「なんぼか恥ずかしかったべさ! 下着透けて、ゆーきに助けてもらわなかったら、どうなってたか……」


 彼女が顔を赤くしてタオルを思い出すと、結城が「悪かったって」と笑う。


「でも、すぐタオル渡しただろ。櫻を守るくらい、俺だってできるよ」


 櫻が「ゆーき、なんぼか優しいべさ」と小さく呟き、結城の肩に軽く頭を寄せる。電車の揺れに合わせて、二人の距離が自然と近づく。

 櫻がペンギンショーを思い出し、笑いながら言う。


「ペンギン、なんもやる気なかったべさ! 」


 結城が同意する。


「あいつら、トレーナー無視してたもんな」


 二人の心の動き

 20分ほどの電車内での会話は、デートの楽しさを再確認する時間だった。櫻は結城との一日を振り返りながら、内心の葛藤が少し和らいでいた。


「ゆーきが楽しんでくれたなら、ボク、なんぼか嬉しいべさ。しずるちゃんのこと考えても、今日はボクだけでいいよね?」


 結城も櫻の笑顔を見ながら思う。


「櫻と一緒だと、ほんと熱くなるな。衝動性ってのもあるけど、守りたい気持ちが強くなる……観測点、ちょっと固定できたかも」


 ノートに書いた「櫻:赤方偏移」が頭に浮かぶが、今日は欲望より愛情が勝っている気がした。

 電車が一駅進み、余市に近づく。櫻が結城の手を軽く握り、小さく言う。


「また、ゆーきと遊びたいべさ」


 結城が「おう、またな」と返す。夕暮れの車内で、二人の心は今日の思い出に温かく包まれていた。


 ★ 帰ってきてから~静流と櫻のメッセージ欄~

 結城と別れ、櫻は余市の自宅に戻った。部屋に入ると、ベッドに寝転がり、淡い緑色のワンピーススカートが少し皺になるのも気にせず、スマホを取り出す。白に薄い桜色の髪が枕に広がり、彼女の心はまだおたる水族館の楽しさで弾んでいた。


「ゆーきと一緒、なんぼか楽しかったべさ……しずるちゃんに教えてあげなきゃ!」


 櫻がメッセージアプリを開き、静流とのチャット欄に指を走らせる。


 櫻と静流のメッセージ欄


 櫻(20:13)

「しずるちゃん、ただいまべさ! ゆーきと水族館、なんぼか楽しかったよ~! イルカと握手して、ペンギンも見てきたべさ!」

(笑顔の絵文字とイルカの絵文字を添付)


 櫻が送信ボタンを押すと、すぐに既読マークがつく。静流の返信が来るのを待ちながら、彼女は今日のことを思い出す。結城がタオルを渡してくれた優しさ、電車で肩を寄せた温かさ――全部が櫻の胸を熱くする。でも、静流のことを考えると、少しだけ複雑な気持ちも混じる。


「しずるちゃんにも、ゆーきと楽しい時間あるべさ……ボク、なんぼか負けたくないけど」


 数分後、静流から返信が届く。


 静流(20:17)

「櫻ちゃん、おかえり。楽しそうで良かったね。私もイルカとペンギン、見てみたかったな。結城と一緒なら、なんぼか賑やかだったでしょ?」

(微笑む絵文字とペンギンの絵文字を添付)


 櫻がベッドでゴロゴロしながら笑う。静流の穏やかな言葉に、ホッとする気持ちと同時に、ちょっとした競争心が疼く。


「しずるちゃん、なんぼか優しいべさ……でも、ゆーきのこと、ちゃんと見ててくれるよね?」


 櫻(20:19)

「うん、なんぼか賑やかだったべさ! ボク、イルカに水かけられてびしょ濡れになったけど、ゆーきが助けてくれたよ~!」

(水滴の絵文字と笑顔の絵文字)


 送信後、櫻が「えへへ~」と笑う。結城に守られたことを自慢したくて、つい詳しく書いた。でも、静流がどう思うか、少しだけ気になる。

 静流は自室でスマホを見ながら、小さく笑う。白に薄く水色の髪が机の灯りに映え、彼女の手には天体望遠鏡の模型が握られている。櫻のメッセージに、楽しそうな様子が伝わってくる。


 静流(20:22)

「櫻ちゃんらしいね。水かけられるなんて、結城もびっくりしたんじゃない? 助けてくれるなんて、結城らしいよ。私も櫻ちゃんのびしょ濡れ、見てみたかったな」

(笑う絵文字と星の絵文字)


 櫻が返信を読んで、頬を膨らませる。


「しずるちゃん、なんぼかからかってるべさ!」


 でも、静流の優しい口調に、櫻の心が温かくなる。競争心はあるけど、静流との友情も大切だ。


 櫻(20:24)

「ボク、なんぼか恥ずかしかったべさ! でも、ゆーきと一緒なら、また行きたいよ。しずるちゃんも今度一緒に行くべさ!」

(ハートの絵文字とイルカの絵文字)


 静流が微笑む。櫻の明るさに引っ張られつつ、結城との時間を想像して少し胸が締め付けられる。


 静流(20:26)

「うん、今度三人で行けたら楽しそうだね。櫻ちゃんの元気、結城も私も大好きだよ」

(ハートの絵文字と月の絵文字)


 二人の想い

 櫻がスマホを胸に抱き、ベッドで笑う。


「しずるちゃんと一緒も、なんぼか楽しそうべさ……でも、ゆーきはボクのこと見ててほしいな」


 静流への友情と結城への想いが混じり、櫻の心は少し複雑だけど温かい。

 静流はスマホを置いて、窓の外の月を見る。


「櫻ちゃんの元気、結城を動かすよね。私も負けないようにしなきゃ」


 結城と櫻のデートを知りつつ、静流の競争心も静かに燃えていた。

 メッセージ欄は、二人の友情と微妙なライバル意識を映し出しながら、夏の夜に穏やかに閉じられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ