海と日焼けと
★ 夏の海(夏休みと海)
7月も終わりを迎えれば、学校は夏休みに突入する。とはいえ、果樹農家の多い余市ではこの時期がかき入れ時で、どの家も家族親族ぐるみで忙しく働いている。それでも「遊ぶ時間は必要だべ!」と酉城が言い出し、結城、静流、櫻の三人に加えて彼が付いてくるいつもの形で、四人が海水浴場にやってきていた。
結城たち三人の思い出の場所である余市の海水浴場は、札幌や倶知安、ニセコ、京極といった内陸側から来た海水浴客で賑わっていた。青い空と波の音が夏を彩り、砂浜には色とりどりのパラソルが並ぶ。
結城が海辺を見回して呟く。
「こういう所も、混むんだな」
酉城がビニールシートを広げながら答える。
「ドリームビーチとかはでっかいけど人が大量に来て混むし、ここはタダだからな~」
男二人の着替えはそう時間かからない。ものの5分で水着に着替え終わり、結城と酉城はパラソルやビニールシートを準備しながら、櫻と静流が更衣室から出てくるのを待っていた。結城がパラソルの支柱を砂に刺す手を止めた時、酉城が真剣な表情で声をかける。
「なぁ、結城……そろそろ、話してくれても良いんじゃないか?」
結城が一瞬手を止めて顔を上げる。
「……静流と櫻に告られた……二人同じ日に」
酉城が目を丸くして小さく呟く。
「……Oh……」
微妙な雰囲気や結城が思い悩んでいる理由がそれだと、酉城は内心納得する。彼がパラソルを立て終え、結城の隣に座り込む。
「どうすんだ?」
結城がため息をつく。
「それをすぱっと決められてたら悩んでないと思わないか? ……ほんとどーしよう」
酉城はこれまで聞いた話から考える。櫻と静流の結城への想いは、10年物の初恋だ。多分どこかでセーブしようとしてもできなかったのだろうと、彼なりに目星をつける。酉城が少し遠くを見るような目で続ける。
「どっちにしても、決めなきゃダメだべ……決めないのは、両方ともより深く傷つける」
結城が目を伏せる。
「分かってるよ……けどさ、傷つけたくないよ」
酉城が頷く。
「二人ともめんこいし、いい子だからな」
櫻の太陽のような明るさと、静流の星のような優しさが、結城だけでなく酉城にも印象的だった。でも、彼が真剣な声で続ける。
「けど、どっちか傷つけないと、誰も先に進めないまま最悪の展開だべ……春の終わりに摘果したべや、そのつもりで、より好きな方を選ぶしかないべさ」
結城が黙り込む。摘果――リンゴの実を間引くように、どちらかを選ばなければ未来がない。頭では分かっていても、心がそれを拒む。櫻の「ゆーきが大好きだから!」という笑顔と、静流の「あなたを探し出すよ」という決意が、交互に頭をよぎる。
その時、更衣室の方から櫻の声が聞こえてきた。
「ゆーきー! 遅くなってごめん!」
白に薄い桜色が混じる髪を揺らし、櫻が走ってくる。背中の大きく空いたピンクのワンピース水着が、彼女の明るさを引き立てていた。続いて静流が現れる。白い髪に薄く水色が入った毛先が揺れ、布の少なめな水色のビキニが彼女のスタイルを際立たせる。結城が思わず目を逸らす。夢の中の彼女たちと重なり、罪悪感が胸を締め付けた。
★ 一方女の子達の~改めて見るとこの水着って~
結城と酉城がパラソルを立てて待つ間、更衣室の外では櫻と静流が水着に着替えた姿を改めて確認し合っていた。札幌で「結城にドキッとしてほしい」と興奮しながら選んだ水着だが、実際に着てみると、買った時の勢いが冷めた今、二人はその大胆さに気づいてしまった。
櫻が白に薄い桜色が混じる髪を揺らし、静流をチラッと見て呟く。
「……ねぇ、しずるちゃん」
静流が白い髪に薄く水色が入った毛先を指で触りながら、目を逸らす。
「言わないで、私もいま気づいたの……」
櫻が声を小さくして続ける。
「この水着ってさ」
静流が慌てて遮る。
「お願いだから言わないで……」
櫻が我慢できずに言葉を吐き出す。
「……改めて見ると、攻め過ぎなの通り越して若干えっちだよね」
静流が顔を覆って叫ぶ。
「いやぁぁぁぁ……」
二人は更衣室の外で立ち尽くし、お互いの水着をまじまじと見つめる。買った時には「可愛いべさ!」「綺麗だよ」と褒め合った興奮状態で気づかなかった「色々なえろさ」が、今になって浮き彫りになっていた。
櫻の水着
櫻のワンピース水着は、背中が大きく空いているデザインだ。ピンクの生地にフリルが可愛らしさを添えているが、背中のスリットが予想以上に深い。お尻の少し上まで切り込まれていて、少し腰を曲げれば、小柄な櫻のお尻でもちらりと見えてしまうかもしれない。
櫻が自分の背中を振り返ろうとして首を捻る。
「うわっ、なんぼかやばいべさ! これ、動いたら見えちゃうんじゃないの!?」
白に薄い桜色の髪が背中の開いた部分に流れ、太陽のような明るさが逆にその大胆さを際立たせていた。
静流の水着
静流のビキニはさらに派手だった。薄い水色のベースに白いレースがあしらわれた布の少なめなデザインで、特にショーツ部分が目を引く。サイドが紐――いわゆるサイドストリングになっていて、本体は透明なビニール紐で固定されている。無光沢で透明度の高い素材ゆえに目立たず、本当に細い紐だけで留まっているように見える。
ブラの方もよく見れば、カップ同士を繋ぐ部分が小さなプラスチック製のリングで、胸の谷間を強調する作りだ。静流のスタイルが映え、白い髪に薄く水色が入った毛先が揺れるたび、星のような輝きが水着の「えっちさ」を増していた。
静流が自分の胸元を隠すように腕を交差させる。
「……恥ずかしいよ……これ、結城に見られたらどうしよう……」
櫻が笑いながら言う。
「しずるちゃん、それやばいべさ! 紐だけで留まってるみたいだし、なんぼかえっちすぎるよ!」
静流がさらに顔を赤らめる。
「櫻ちゃんこそ、背中あんなに開いてて大丈夫なの!?」
二人がお互いを指差して「えっちだべさ!」「えっちだよ!」と騒ぐうちに、櫻が急に立ち止まる。
「待て待て、ボクたち、これでゆーきの前に出るんだよね?」
静流が目を丸くする。
「そ、そうだよ……私たち、なんぼか攻めすぎちゃったかも」
櫻が苦笑する。
「まぁ、ゆーきにびっくりしてほしいって思ったべさ……びっくりはするよね、絶対」
静流が小さく頷く。
「うん、なんぼかドキッとするはず……恥ずかしいけど」
二人は顔を見合わせて笑い、更衣室の外から海辺へ向かう覚悟を決める。櫻の背中の大胆なスリットと、静流の紐ビキニが、夏の海で結城をどう驚かせるのか。乙女心と照れが混じったまま、二人は砂浜へと足を踏み出した。
★ 結城と酉城の反応
櫻と静流が更衣室から砂浜に現れた瞬間、結城はパラソルの下でビニールシートを整えていた手を止めた。二人の姿を見た彼は、まず硬直した。白に薄い桜色が混じる櫻の背中が大胆に開いたワンピース水着と、白に薄く水色が入った静流の布少なめなサイドストリングビキニが、夏の陽光に映える。次の瞬間、僅かな間を開けて結城の頬が赤く染まり、彼の視線が泳ぐ。
酉城が隣で呵々大笑しながら声を上げる。
「お~、二人ともよく似合ってるべさ! めっちゃめんこいぞ!」
豪快に褒める彼は、水着の「攻め過ぎ」具合にも動じず、いつもの調子で櫻と静流に笑いかける。
対照的に、結城は二人から目をそらし、砂浜の端を見つめたまま呟く。
「あ、あぁ……いいんじゃね? 二人とも似合ってると思うぞ?」
声が少し上ずり、普段の落ち着いた口調が崩れている。夢の中で見た彼女たちの姿が頭をよぎり、罪悪感と照れが混じって言葉を詰まらせていた。
櫻が結城の反応を見てニヤッと笑う。
「なぁ、ゆーき、なんぼかびっくりしたべさ? ボクの水着、可愛いよね!」
背中のスリットが強調されるポーズを取ると、白に薄い桜色の髪が揺れ、彼女の明るさが砂浜をさらに賑やかにする。
静流が頬を赤らめながら小さく言う。
「なまら恥ずかしいけど……結城、ほんとにいいと思う?」
サイドストリングのビキニを隠すように腕を軽く交差させ、白い髪に薄い水色が入った毛先が風に揺れる。リングで繋がれた胸元が、彼女の穏やかさと大胆さを際立たせていた。
結城がさらに目を逸らす。
「う、うん……いいよ。めっちゃ似合ってる」
照れ隠しにパラソルの支柱を必要以上にいじりながら、内心では「やばい、やばい」と繰り返していた。櫻の背中のスリットと静流の紐ビキニが、札幌での買い物の成果を超えて彼の心を揺さぶる。夢の記憶と現実の彼女たちのギャップに、どう反応していいか分からない。
酉城が結城の肩をバシンと叩く。
「何だべ、結城! お前、顔赤すぎだぞ! 二人にドキッとしたんだろ、正直に言えよ!」
結城が慌てて否定する。
「ふざけんな、してねぇよ!」
だが、声の裏に隠しきれない動揺が滲む。
櫻が笑いながら言う。
「ゆーき、なまら可愛いべさ! 顔赤いの、バレバレだよ!」
静流がクスクス笑う。
「結城、なんも素直じゃないね……」
酉城が「よし、海行くべ!」と叫び、四人が波打ち際へ向かう中、結城は櫻と静流の水着姿に慣れるまで目を合わせられないままだった。彼女たちの「結城にドキッとしてほしい」という願いは、見事に達成されたようだ。




