静流の挑戦
★ NG動画2 はぷにんぐ!
シャインマスカット飴の試食を終えると、結城、櫻、静流の3人はキッチンに戻り、次なるSNS戦略を話し合っていた。シャインマスカット飴の試作動画が好評だったこともあり、静流は内心で別の目標を立てていた。それは、少しずつ結城に自分の気持ちを伝える土台を作ること。
とはいえ、静流のアプローチはちょっとばかり迂遠で、空回り気味なところがあるのも否めない。彼女はノートに「結城君に気持ちを伝えるステップ」と書き込みながら、さりげなく行動を起こそうと決意していた。
櫻がテーブルのイチゴをつまみながら言う。
「ゆーき、次は何撮るべさ? シャインマスカット飴、なんぼかウケたべさ!」
結城がスマホを手に答える。
「そうだな。視聴者が楽しんでるみたいだし、また何か作る動画でも撮るか。お前ら、何かアイデアある?」
静流がノートを閉じ、穏やかに提案する。
「じゃあ、なんぼか簡単な果物のお菓子でも作ってみない? 結城に食べてもらって感想聞きたいし」
内心では「結城君に私の気持ち、なんぼか伝わるかな」と期待を込めている。
櫻が目を輝かせて言う。
「そーだべさ! ボク、イチゴのゼリーでも作るよぉ! ゆーき、食べるよね!」
結城が頷く。
「ゼリーか、簡単そうだな。じゃあ、撮ってみるか。今回はちゃんと配信って気づけよ」
NG動画2:はぷにんぐ!
キッチンで撮影が始まる。結城がスマホをセットし、「録画開始」と言うと、櫻が勢いよく動き出す。
「はい、櫻だべさ! 今日はイチゴゼリー作るよぉ!」
イチゴを潰して鍋に入れ、砂糖とゼラチンを混ぜるが、勢い余ってイチゴ汁を飛び散らす。
「うわっ、飛びちゃった!」
結城がカメラ越しに呆れる。
「お前、またドタバタだな。ゼリーになるのかよ、それ」
静流が隣で穏やかに進める。
「私は静流だよ。櫻ちゃんのゼリーに、私がちょっと果物を添えてみるね」
彼女はリンゴを薄く切って星形にし、「結城君に食べてもらいたいな」と内心で思いながら、そっと結城に差し出す。
「結城、あ~ん」
結城が少し照れながら口を開け、
「うん、甘くて美味いな」と素直に感想を言う。静流の心が「なんぼか近づけた!」と高鳴る。
だが、ここでハプニングが。櫻がゼリーを冷蔵庫で冷やしている間に、静流が次のステップで結城に気持ちを伝える土台を作ろうと試みる。彼女がリンゴをもう一つ手に持つ。
「結城、もう一個どう? なんぼか気持ち込めて切ったんだ」
そう言って「あ~ん」と差し出した瞬間、手が滑り、リンゴが結城の口に「はぷっ」と当たってしまう。
結城が驚いて言う。
「お、お前! 何だよ、はぷにんぐって!」
櫻が爆笑しながら絡む。
「はぷにんぐ!? しずるちゃん、なんぼか面白すぎるべさ! ゆーき、顔赤いよぉ!」
静流が顔を真っ赤にして謝る。
「ご、ごめんね! なんぼか滑っちゃって……気持ち伝えるつもりが、はぷにんぐになっちゃったよ」
結城が苦笑する。
「気持ちって何だよ……まぁ、いいけどさ。リンゴ当たっただけで済んだからな」
そして3人は気づく。スマホが「ライブ配信中」になっていることを。コメント欄が大盛り上がりだ。
「はぷにんぐwww 静流さん可愛すぎる!」
「結城、櫻ちゃんに続き静流さんにも餌付けされてるな」
「NG動画2確定! はぷにんぐ名シーンすぎる」
櫻がスマホを手に跳ねる。
「なんぼかすごいべさ! またNGだよぉ! 視聴者さん喜んでるべさ!」
静流が恥ずかしそうに言う。
「恥ずかしいけど、結城に気持ちが伝わったなら……いや、はぷにんぐじゃ伝わらないよね」
結城が呆れつつ笑う。
「お前らの空回りでまたNG動画かよ。まぁ、視聴者が楽しんでるならいいだろ。次はちゃんと成功させろよ」
NG動画2の結果と静流の葛藤
「NG動画2 はぷにんぐ!」がSNSで拡散され、イチゴゼリーと「はぷにんぐ」のシーンが話題に。櫻のドタバタと静流の空回りが視聴者の笑いを誘い、余市の農産物への注目がさらに高まる。
櫻が目を輝かせて言う。
「ゆーき、ボクたちのNGでまた有名になったべさ! 次は何作るべさ?」
静流がノートに書き込みながら呟く。
「気持ち伝える土台、なんぼか失敗したけど……まぁ、みんなが笑ってくれたからいいよね」
内心では「次ははぷにんぐじゃなく、ちゃんと伝えたいな」と決意を新たにする。
結城が内心で思う。
はぷにんぐって何だよ……でも、お前らのドタバタと空回り、悪くないな。
NG動画を通じてまた一つ笑いと温かさを広げ、静流の小さな努力が少しずつ形になり始めていた。
★ スケベ騒動!?
(思いっきり失敗しちゃった……)
静流は内心でそう呟きながら、リンゴを結城の口に「はぷにんぐ」してしまったNG動画2の余韻に浸っていた。どうにか「ちょっとしたハプニング」で済ませたものの、その時の彼女は少々冷静さを欠いていたことは否めない。
キッチンでは、櫻がイチゴゼリーを冷蔵庫から取り出し、結城がスマホで視聴者のコメントを確認している。静流は使ったボウルを片付けるため、足台に乗って棚に手を伸ばしていた。作業を終え、降りようとしたその瞬間――
「きゃっ……」
足の運びが悪かったのか、考え事に気を取られて足元がおろそかになったのか、静流は不意にバランスを崩し、落ちかける。咄嗟に両腕で頭を押さえ、衝撃に耐えようと目を閉じる。しかし、想定していた床への衝撃はいつまで経っても来ず、代わりに――
「だ、大丈夫か? 静流」
結城の声が、彼女の下から聞こえた。
目を開けると、結城が静流を支えるように地面に倒れ込んでいた。足を踏み外した彼女をそのまま支えきれず、咄嗟に下敷きになることで怪我を防いだらしい。静流は結城の上に乗り、ほんの数センチ体がずれれば口と口が触れてしまいそうな距離。少しだけ遠く感じていた結城の顔が文字通り目の前にあり、彼女は真っ赤になりながら答える。
「う、うん……ありがと、結城……」
その瞬間、静流の心は沸騰していた。結城君にこんなに近づくなんて……気持ち、なんぼか伝わるかな? と期待が膨らむ。だが、その甘い空気は一瞬で破られる。
「あのさ~、ゆーき?」
櫻のどこか冷えた声がキッチンに響いた。
沸騰していた静流の脳が急速に冷え、次の瞬間、彼女が感じたのは胸を包まれているような感触。見下ろすと、結城の手が静流の胸に触れている。支えるつもりで掴んだ場所が、偶然にもそこだったのだ。
櫻が目を吊り上げて叫ぶ。
「しずるちゃんを支えるのは良いけど……おっぱい触る必要ないべさ! スケベ!」
結城が慌てて弁解する。
「じ、事故だっ! っつーかあの状況で掴む場所まで意識してられるか!」
櫻が「むぅ~!」と膨れながら絡む。
「そんなの判ってるけどむかつくんだよ!!」
静流が真っ赤な顔で立ち上がり、
「ご、ごめんね、櫻ちゃん! 私落ちちゃって……結城も悪気ないよ」とフォローするが、声が震えている。
そして3人は気づく。結城のスマホがテーブルの上に置かれ、「ライブ配信中」の文字が点滅していることを。コメント欄が爆発していた。
「スケベwww 結城やっちまったな!」
「静流さんの赤面可愛すぎる! はぷにんぐからスケベに進化!」
「櫻ちゃんの嫉妬最高! NG動画3確定だろこれ」
櫻がスマホを手に叫ぶ。
「うわっ、また配信中だべさ! なんぼか恥ずかしいよぉ!」
静流が顔を隠しながら呟く。
「なんぼか失敗しちゃった……スケベ騒動になっちゃったよ」
結城が頭を抱える。
「事故だって言ってるだろ……お前らのドタバタでまたNG動画かよ。視聴者が喜んでるのはいいけどさ」
NG動画3:スケベ騒動の波紋
「NG動画3 スケベ騒動!」として録画が拡散され、静流の落下、結城のスケベハプニング、櫻の嫉妬が視聴者の笑いを誘う。コメントには「余市美少女農家のドタバタ最高!」「イチゴゼリーよりスケベがメインになったwww」と賑わい、余市の注目度がさらにアップ。
櫻がソファに座り、結城に絡む。
「ゆーき、スケベはダメだべさ! ボク、むかつく!」
静流がノートに書き込みながら言う。
「櫻ちゃん、ごめんね。私、空回っちゃって……でも、結城が助けてくれたのは嬉しかったよ」
内心では「気持ち伝える土台、失敗したけど……結城君の優しさ、なんぼか感じられたかな」と葛藤が続く。
結城が苦笑しながら返す。
「助けたつもりがスケベ呼ばわりだよ。まぁ、お前らが騒いで視聴者が楽しんでるなら、結果オーライか」
櫻が目を輝かせて言う。
「そーだべさ! 次はスケベなしで成功するべさ! ゆーき!」
結城が内心で思う。
スケベって何だよ……でも、お前らの空回りとドタバタ、悪くないな。
初夏の余市が、NG動画を通じてまた一つ笑いと話題を広げ、静流の気持ちは失敗の中にも小さな進展を見せていた。




