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透明リンゴのペア撮影

★ 大谷地貝塚のゴリラ本領発揮

大谷地貝塚での撮影が一段落し、櫻と結城の「夫婦っぽい」やり取りに櫻の親父さんが満足げにシャッターを切っていた頃、酉城が「俺の出番だぜ!」と動き出した。黒いアットゥシに渦巻き模様が映える彼は、貝塚の森を背景に仁王立ちで腕を組む。

櫻の母親が「次は全員で並んでみようかね!」と提案すると、酉城がニヤッと笑う。

「並ぶだけじゃつまらねぇだろ。俺、ゴリラの本領発揮してやるぜ!」

櫻が目を丸くする。

「とり、ゴリラって何!?」

次の瞬間、酉城が櫻と静流に近づき、片腕で櫻、もう片方の腕で静流を軽々と担ぎ上げた。櫻が「うわぁっ!」と叫び、静流が「わっ、酉城君!?」と声を上げる。アットゥシの裾が風に揺れ、二人が宙でバタバタする。

櫻が慌てて喚く。

「とり! 下ろしてよぉ! なんかこわい!」

静流が冷静さを保ちつつ言う。

「酉城君、私もちょっとこわいよ……高いし」

酉城が豪快に笑う。

「お前ら、軽いぜ! ゴリラの俺ならなんぼか余裕だ! ほら、ジャムの瓶持ってポーズ取れ!」

櫻の親父さんが目を輝かせてシャッターを切る。

「おお~! とり君、ナイスだべや! さくらと静流ちゃんもめんこい! 伝統っぽいぞ!」

結城が少し離れた場所で呆れた顔で見つめる。

「お前、ゴリラって自分で言うか? なんぼかやべぇな……こわいしかねぇわ、この撮影」

酉城が櫻と静流を担いだまま、貝塚の前にドンと立つ。櫻が瓶を手に持つが、揺れて落としそうになる。

「ゆーき! 助けてよぉ! とり君が下ろしてくれないべさ!」

結城が渋々近づき、櫻の手から瓶を受け取る。

「お前、騒ぐ前にしっかり持てよ。ゴリラに担がれてるんだから仕方ねぇだろ」

櫻が「むぅ~!」と膨れる。

「ゆーき、ボクの旦那様ならゴリラ止めてよね!」

静流が酉城の肩から笑う。

「でも、酉城君の力すごいね。アットゥシ着ててもゴリラっぽい動きできるなんて」

櫻の母親が「あらあら、楽しいねぇ!」と手を叩く。親父さんが「次は全員で並んでくれ!」と指示を出す。酉城がようやく二人を下ろし、櫻が「はぁ、こわかったべさ……」と息をつき、静流が「なんぼか緊張したよ」と苦笑する。

四人が貝塚を背景に並ぶと、酉城が中央で腕を広げ、櫻と静流が両脇で瓶を持ち、結城が端で渋々立つ。櫻が結城に寄りかかるように近づき、

「ゆーき、ボクまだこわいからそばにいてね!」

結城が肩をすくめる。

「お前、ゴリラに担がれてた方がこわいだろ」

櫻の親父さんがシャッターを切りながら言う。

「いいべや! とり君のゴリラパワーと、さくらのめんこさ、日野君の落ち着き、静流ちゃんの優しさが揃った! ジャムが映える写真だぞ!」

風が再び吹き、アットゥシの裾が揺れる。櫻が「しゃっこいよぉ!」と結城にくっつき、酉城が「俺は熱いぜ!」と笑う。静流が穏やかに瓶を手に持つ中、結城が内心で呟く。


(こんな場所でも、こういう事、できるんだな)


★ 透明リンゴのペア撮影

大谷地貝塚での撮影を終え、櫻の親父さんの運転で一行は最後の撮影場所、「透明リンゴ」へ向かった。余市町にあるこの巨大なリンゴ型の展望台は、ガラス張りの透明な外観が特徴で、夕暮れ時の風が反射する。車が停まると、櫻の母親が「ここでペア撮りしようね!」と三脚を立て、親父さんが「ジャムが映えるべや!」とカメラを構える。アットゥシ風衣装の四人は、少し疲れつつも気合いを入れる。

結城と櫻

最初に透明リンゴの前に立ったのは、結城と櫻だ。櫻が藍色のアットゥシを着てリンゴジャムの瓶を手に持ち、結城が隣で瓶のもう片方をつかむ。二人が透明なリンゴを背景に並ぶと、櫻が小さく笑う。

「ゆーき、今日はありがとね。付き合ってくれて」

結城が肩をすくめて返す。

「いいさ、面白いしな」

櫻が目を細めて続ける。

「……へへ、そんな感じで、余市も好きになってくれると、嬉しいな」

その笑顔はとても眩しく、まさに弾けんばかりの明るさだった。夕日が櫻の薄桜色の髪を照らし、アットゥシの渦巻き模様が光に映える。結城が一瞬言葉に詰まる。

なんぼか眩しすぎるな……

櫻の母親がシャッターを切りながら呟く。

「あらあら~……」

その一言が、なぜか結城の耳にやけに響いた。

櫻の親父さんが「いいべや! さくらと日野君、なんぼか自然だ!」と満足げに言う。櫻が結城に寄りかかり、

「ゆーき、ボクの旦那様っぽいべさ!」と絡むと、結城が「絡むな」と軽く突き放す。


結城と静流

次に櫻と交代し、静流が透明リンゴの前に立つ。茶色のアットゥシにシンプルな幾何学模様が映え、手には販売予定の商品――リンゴジャムとピクルスが入った籠――を持っている。結城が籠の反対側をつかみ、二人が並ぶ。夕日が透明リンゴ越しに差し込み、静流の白い髪が柔らかく光る。

「今度は、私だね」

静流が穏やかに言う。

「今日は、びっくりしたね」

結城がぼそっと返す。

「そーだな、でも……」

静流が目を細めて続ける。

「楽しかった?」

彼女の頬が少しだけ染まっている。夕日のせいか、それとも別の何かか、結城は気づかず、ただ頷く。

「ああ、なんぼか面白かったよ」

静流がクスッと笑う。

「良かった。余市のいろんな顔が見れて、私も嬉しいよ」

櫻の母親が「あらあら~、静流ちゃんも素敵だねぇ!」とシャッターを切る。親父さんが「日野君と静流ちゃん、落ち着きがいいべや!」と褒める。結城が「なんかこわいわ、このペース」と呟くと、静流が「慣れるよ」と優しく返す。


酉城と静流

結城の順番が終わり、酉城が交代で透明リンゴの前に立つ。黒いアットゥシの酉城と、籠を持った静流が並ぶ。酉城は普通に籠の端を持ち、静流と自然にポーズを取る。

「俺と静流なら、バッチリだぜ!」

酉城がニヤッと笑う。

静流が穏やかに頷く。

「うん、酉城君が落ち着いてて助かるよ。なんぼか安心だね」

櫻の親父さんが「いいべや! とり君と静流ちゃん、バランスいいぞ!」とシャッターを切る。撮影はスムーズに進み、櫻の母親が「安定感あるねぇ!」と笑う。酉城が「ゴリラも静かにできるぜ!」と胸を張るが、特にドタバタは起きず、静流が「ありがとう」と微笑むだけだった。


酉城と櫻

最後に櫻が静流と交代し、酉城と並ぶ。櫻がリンゴジャムの瓶を持ち、酉城が隣に立つと、彼の顔に悪戯っぽい笑みが浮かぶ。

「ほれ、さくら」

ほい、と酉城が櫻を軽々と抱き上げる。櫻が「わきゃっ!?」と叫び、アットゥシの裾が風に揺れる。

「お~ろ~せ~!!」

櫻の羞恥混じりの叫びが響き、酉城の大笑いが重なる。

「ははっ! さくら! 瓶持ってポーズ取れよ!」

櫻がじたばたしながら喚く。

「とり! なんか怖いって! 下ろしてよぉ!」

櫻の親父さんがシャッターを連射する。

「おお~! とり君とさくら、なんぼか賑やかだべや! 最高だ!」

結城が少し離れて呆れた顔で見つめる。

「ゴリラがまた暴れてる……」

静流が隣でクスッと笑う。

「酉城君と櫻ちゃん、楽しそうでいいよね」

櫻の母親が「あらあら、さくらが飛んでるねぇ!」と盛り上がる中、酉城が櫻を下ろし、二人が瓶を持ってポーズを決める。櫻が「もうこわいよぉ!」と息を切らし、酉城が「次はお前も飛ばすぜ、日野!」と笑う。結城が「冗談じゃねぇ」と即座に拒否する。

撮影が終わり、透明リンゴの前で全員が疲れ果てて座り込む。櫻が結城に寄りかかり、

「ゆーき、今日はなんぼか楽しかったべさ!」と言うと、結城がため息をつく。

「なんぼかこわいしゆるくないけど……まぁ、悪くねぇよ」

しゃっこい風の中で、アットゥシとジャムがどんなチラシになるのか……なんぼか楽しみだな

夕日が透明リンゴを染める中、結城は櫻の眩しい笑顔と、静流の穏やかな頬を思い出し、少しだけ余市が好きになった気がした。


翌日


なんだか疲れた様な櫻が教室に入ってくる。

「お、櫻、昨日はお疲れ」

「へっ!?……あ、あ、うん!昨日はありがとね!」

結城の声に一瞬慌てた様な返事をすると、櫻はそそくさと自分の席に座った。

「……なんだ?あいつ」

「さあ?」

酉城と顔を見褪せても、答えは出てこなかったようだ。


櫻は席に着くと、周りをチラッと確認する。誰も見てないのを確かめて、そっとスマホを取り出した。ロック画面を開くと、そこには透明リンゴを背景にした櫻と結城のペア写真が表示される。

ただし、角度が絶妙すぎた。

櫻が結城にキスしてるように見える上に、後ろの透明リンゴが夕日の反射でハートっぽく歪んでる。櫻の藍色のアットゥシと結城の茶色のアットゥシが映え、瓶を二人で持つ姿が妙にロマンチックだ。

櫻がスマホを握り潰しそうな勢いで顔を赤らめる。

「なん、なんかやべぇべさ……!」

心の中で叫びつつ、慌てて画面を消す。でも、すぐにまた開いてチラ見してしまう。

そこへ、静流が教室に入ってきて櫻の様子に気づく。

「櫻ちゃん、おはよう。なんか疲れてるみたいだね?」

櫻が「うわっ!」とスマホを隠す。

「し、しずるちゃん! う、うん、なんぼか疲れただけだよぉ!」

静流が穏やかに笑う。

「昨日はしゃっこい風の中ですごかったからね。私もちょっと疲れたけど、楽しかったよ」

櫻が「そ、そうだねぇ!」と誤魔化しつつ、内心で焦る。

しずるちゃんに見られたら……、なんかこわい! ゆーきとの写真、絶対秘密だよぉ!

結城が遠くから櫻の慌てぶりを見て呟く。

「あいつ、なんか挙動不審だな……昨日より変だぞ」

酉城がニヤッと笑う。

「さくらがお前にキスした写真でも見てんじゃねぇの?」

結城が即座に返す。

「冗談じゃねぇ。そんな写真ねぇだろ」

だが、櫻がスマホを握り潰しそうな手つきで席に縮こまる姿を見て、結城の頭に一瞬疑問符が浮かぶ。

まさか……と頭を振ってくだらない妄想を追い払う。

櫻は誰にも見られぬよう、待ち受けをもう一度開いて小さく笑う。

「ゆーきとボク、なんぼか夫婦っぽいべさ……へへ」

疲れた顔に、眩しい笑顔が少しだけ戻っていた。

教室の喧騒が、昨日からの撮影の余韻と、櫻の小さな秘密を包み込むようだった。

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