世界の終わり
「ん…」
目を覚ますと、白い布地の天井が視界に広がる。戦場に立てられたテント。怪我人を治療するための、吹けば飛ぶようなペラペラの『安全地帯』だ
「起きた?オーちゃん」
声のした方へ頭を向けると、椅子に座ってこちらを見ている少女と目が合った
「……ピーちゃん…?」
「そうだよ。君の親友ピーちゃんだよ。よかったぁ、目が覚めて」
ふいー。と魂の抜けるようなため息をつきながら、私の手を握る。いや、元々握られてはいたようだ。意識が覚醒してから2分ほどか、ようやく体の感覚が戻ってきた。が、うまく体が動かない
どうやらかなりの重傷だったらしい。それにしては痛みなどは無いが
「まだ体がうまく動かせないや。どれくらい気を失ってたんだ?」
上半身を支えて貰いながらなんとか体を起こし、汗をかいたシャツを脱ぐ。痛みを感じていない、というわけでは無く、やはり大きな傷はついていないようだ
「そうだねぇ…だいたい1週間くらいかな。まぁ体がうまく動かせないのはケガが原因じゃないと思うけどね」
傷自体はあんまり無いし。と言いながら体の汗を拭いてくれる。冷水を絞ったタオルがとても気持ちいい
「『脳喰い』だよ。意識とか記憶に食い違いは無い?自分の事や私の事はちゃんと認識できてる?」
「…マジか。私今10円ハゲできてんの?直径5センチくらいの」
「もっと他に気にする所があるでしょう」
ばしん、とタオルで背中を叩かれた。
『脳喰い』
人間の頭に取り付き、頭蓋に穴をあけ脳を掻き回す生物兵器。なるほど、確かに首から下に傷は無い。頭が重傷だったわけだ
「いやー、人体改造を受けたかいがあったね。普通なら死んでるところだった」
「人体改造されてなきゃ前線に出されて頭に穴を開けられる事はなかったんだけどね。あと、改造されてようがされてなかろうが脳をかき混ぜられたら即死だからね」
オーちゃんは脳を混ぜられるギリギリで『脳喰い』を引き剥がされたんだから。剥がしてくれたキューちゃんに感謝しなさいね。と、真面目に返されてしまった。ちょっとした冗談のつもりだったのだが…
「…じゃあ後でお礼を言っておかなきゃね。キューちゃんは?」
「死んだよ。5日前」
事もなさげに、ピーちゃんはそう言った
「……そう…」
死んだ、と聞かされて、急速に浮ついていた思考が現実に引き戻される感覚がした。そうだ。今は戦争中なんだ。呑気に喋っている場合では…
「…?」
思考が現実に戻ってきて、初めて周りの異常に気付いた。静かすぎる。轟音も、銃声も、人の声すら聞こえてこない。まるで世界が私達2人だけのようだ
「…ピーちゃん、他のみんなは…?」
恐る恐る、尋ねる。返ってきた言葉は、予想を遥かに超えていた
「全滅したよ。生き残りは多分私達だけなんじゃないかな」
「…そっか…。じゃあ、助けが来るまで待ってるしか無いのか…」
返ってきた言葉は
「いや、助けは来ないよ」
予想を遥かに超えていた
「『人間』は負けたんだ。この戦争は、『宇宙人』の勝ちだよ」
初投稿です。愛熊安山と申す者です
暇つぶしに小説を書き始めました。なので暇つぶしにでも読んでいただけたら幸いです
まだモチベもアイデアもあるので、ここ数週間は早く続きを投稿できるといいなと思っています
さて、ここからは『終末散歩』のお話をば。半ば自分語りですがね。興味なければ読まなくても全然構いません
この話は壊滅した世界を行進するお話です。なんというか、私は退廃した世の中を旅したり、冒険するような話が大好物でして。なので自分でもそんな話を書いてみたいな、と。刺さる人が居てくれれば幸いです