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第41話 あがきと妙案

 かくて、戦線は膠着こうちゃくし、たらい回すような論議にやや終始しかけた頃。

 彼女は肉まん片手にOG気取りでふらりと僕らの前に現れたというわけだった。

「それは困ったのう」

と下唇をなめながら彼女は僕らに冷ややかな視線を送りつつ、そう言った。

 どうやら僕らの平行線の議論にあきれているようであった。

「それは確かに困ったのう」

 少しばかり芝居じみた口調に、僕などのような狭量きょうりょうな心の持ち主はすぐにカチンときてしまった。

 面倒くさがりなわりにこらえ性がないという己の性質に嫌悪しながらも、僕は彼女の余裕ぶった面相めんそうを同じく冷ややかに眺めながら、

「何かおっしゃりたいことでもあるんですか?」

やぶに棒を突っ込むようにつっかかってみる。

 しかし彼女はそのような僕の物言いに動じもせず、

「――僕に腹案がある」

と得意顔を隠しもせずに言ってのける。

「腹案?」

と僕の後ろで自嘲気味な笑いを浮かべながら、バイスが彼女のその発言を受ける。

「腹案だって?」

 言えるものなら言ってみるがいい、とそのまま言葉をつないでも違和感のない声色で、バイスもまた彼女に挑戦的に応える。

 なかなかの迫力。

 僕は素直に自我を引っ込めて部屋のすみにうずくまりたくなったのだが、彼女は意にも欠かさず、

「そう――しかも妙案だ」

と言いながら手を腰に当てて不敵に笑う。

 自信満載の態度がいかに人を不安におとしいれるのかを如実に物語る構図であった。

 僕は動揺しながら彼女とバイスの狭間で二人を交互に見やる。

 古い蛍光管がちりん、と小さな音を立てるのが聞こえた。

 バイスはいまだ微苦笑を崩さない。

 彼は彼で徹底的に自分の論理を信じている。

 不可避と言えば不可避であり、絶後と言えばそれは絶後となるのだ。

 バイスの思想的確信が彼の口から言葉となってほとばしる。

「妙案か――本当ならば確かに助かるな。先ほどからご覧いただいているとおり僕とタケオはすでにお手上げだ。この状況を打破する手立てを見い出せず、失望を余儀なくされ、しばらくうなだれて過ごそうかと悲観していた矢先だ」

 バイスは彼女の芝居じみた口調をトレースしながら、彼女を静かに挑発する。

 どうやら、失望から少しばかりやけになっているようである。

「なるほどなるほど、ならば、渡りに船という慣用句を出すまでもなく、これがバイスにとっても好機・好事・好都合であったというならば、僕もその奇跡的な瞬間にそれなりの妙案をもって立ち会えたことに対して喜びを禁じえないよ」

 彼女も芝居じみたを通り越し、日本っぽい国の一昔前のお嬢様のような奇妙なフレーズをはらんだ日本語でバイスのからみを受け止めて見せる。

 なんなんだ、これは。

「妙案と言うのは他でもないっ!」

 やおら腕組みをして彼女は立ち上がった。

 そしてその小さなあごを天に向けてつき上げてから、

「学校で徹夜作業をして、一晩で修正を完了してしまえばよいのだっ!」

 と言ってから、ばっはっはっはと野武士のように笑った。

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