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第33話 創作の日々とお誘い

 日が傾き室内が暗くなった頃、我が校では一度だけチャイムが鳴る。

 このチャイムが鳴ると、警備員が校内の各教室を巡回し始める。

 彼がやってくる前に生徒はいかな理由があろうとも退校しなくてはならないという明文化されてはいないルールがある。

 中途半端なレベルだが一応は進学校であり、周辺校から見ても生徒の統制には比較的ルーズな我が校だがこのルールだけは絶対である。

 作画に不断ならぬ情熱を燃やすバイスであっても当然例外ではなく、僕らはたいていこのチャイムが鳴るところまでを目標に毎日作業をしていた。

「鳴ったよ、バイス」

と僕が言うとバイスは顔を上げてから伸びをした。

「ふん、もうそんな時間か」

 僕としてはようやくこの時間になったと言う気持ちのほうが強いのだが、バイスは真逆の感想である。

 しかし、それをあえて指摘するメリットが見当たらないので、僕は器用に肩をすくめてからカバンに手を伸ばした。

「そうだ、タケオ」

「なんだい、バイス」

「今日はこのあと少しばかり付き合ってくれないか?」

 僕は適切な返答が思いつかずにバイスを見た。

 バイスはにやりと笑っていた。

「どうせ君はこの後いつものコンビニで肉まんでも買ってそれを食いながら家に帰るくらいしか予定がないだろう」

「図星この上ないけどずいぶんな言い方じゃないか」

 僕は自分の無趣味ぶりをいじられたような気分になり、ちょっと強めの口調で言い返す。

 バイスは、はは、と笑い、

「悪い悪い」

と軽めに謝罪をした。

「そういうつもりではなかったんだ」

「なにか問題でも?」

 バイスがこのように誘いをかけてくることは非常にまれであったので、僕は少し心臓を高鳴らせながらそう問うと、

「いや全然そういうわけじゃない」

と少し明るすぎるくらいの声でバイスは答えた。

「前に話をしただろう、例の彼女に対する質問だよ。あれを少し考えておこうかと思ってな」

「はあ」

 確かにそう言えばこの前彼女が去った後にそんな話もした記憶がある。

 しかし、まさか本当に検討の時間が設けられると想定していなかった僕は当惑した。

「たまにはいいだろう、付き合えよ」

 バイスは自分のバッグを肩にかついで僕に言った。

 まあ、バイスは何の目算もなく行動を起こすような人間ではないのは重々承知している。ならば、この突然の誘いにも、それなりの意味があるのだろう。

 盲目的追従に一切の抵抗を覚えず、僕はバイスにうなずき返したのであった。

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