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第16話 選択と決裂

 ここまで極端な2択であるとは僕も予想外であった。

 ちなみに第1作目を応募した某有名週刊少年漫画誌は業界第1位の人気と知名度を誇る化け物雑誌であったので、そこをターゲットにするのに異論の差し挟まる余地がなかった。

 しかし、バイスが次回作の応募先として我々の力量と募集時期などを考えて選んだ2誌が、ここまで性格を異なものとするとなると話は少しややこしい。

 どちらかにせねばならぬという法もないが、この2誌を持ち出したバイスの吟味にも妥当性があろうと思い、僕はその両方を見つめてみた。

「タケオはどちらに投稿するべきだと思う?」

 バイスはさわりと前髪を揺らし、僕に顔を近づけて決断をうながしてきた。

 かすかにミントの香りがした。

「甚大社、かな」

 僕はちょっぴりどぎまぎしながら、ふと思いついて返答した。

 まったくの思いつきでもなかったような気がしたが、甚大社に決めた理由は脳裏を横切ってあっという間に余韻よいんすら残さずに消えてしまった。

 バイスは僕の即答に、

「甚大社……か」

と言いながら口元に右の拳を当てて、僕の目を見つめてくる。

 わずかに粟色がかった瞳が揺れることなく僕を射抜く。

 その瞳の揺るぎなさに、僕の真意を問うような張りつめた雰囲気を感じてしまう。

 実際、熟慮の末に選び抜かれた答えかと言えばそういうわけでもない。

 何とか理由をこじつけてみれば――こんなところだ。

『ただ単に消力社の女子っ娘重用主義が理解の外であったこと』

 そして、

『甚大社の雑誌に載っている某熱血ドグサレ野球漫画を単行本で読み続けていること』

くらいだ。

 しかしこれも最初から頭の中にあったものではなく、甚大社と決めてから後付け的に用意されたものなのかもしれなかった。

 もっとも、バイスも僕と同じくらい決定材料がないゆえに頭を悩ませていたのであろうから、僕のそのような安易な主張にも真剣に耳を傾けてくれた。

「まあ確かに、タケオの言うように雑誌への愛着というのも自分の作品がその雑誌に入っていくことを考える上では必要かもしれないな……。こと作品の投稿に関しては動機にすらなり得るかもしれん」

 バイスは僕の選択理由を聞き終えた後に一定の理解を示す発言をしてくれた。

 しかし、どこか言葉を絞り出すような苦みを感じたので、僕が不穏な顔をしていると、バイスは僕の視線に気づき、困ったように笑って、

「いや、実は私はどちらかと言えば消力社のほうかな、と考えていたんだ」

と幾分明るい調子で述べた。

 その明るさに反し、発言の内容は実に重いものであると僕には思えた。

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