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第12話 鍛錬と完成

 ともあれこのように、バイスから本格的な漫画の描き方を学び、2人でストーリーを考えて実際それをコマに割り、どのように読者に漫画を読ませるかパズルのようにコマとセリフを当てはめ、進んでは戻り、崩しては積みの格闘を続けること数ヶ月。

 その時点で出しうるベストを紙面に叩きつけた合作第1作目は完成した。

 秋の夕暮れ迫る地学準備室で24ページの原稿をバイスが丁寧に確認し、最終ページをそっと机に置き、

「よし、完成だ」

と宣言した瞬間、これまでの苦労が一挙に報われた気がして大量の脳内快楽物質が駆け巡った。

 ここまで頑張ってきた自分の勇姿がよみがえり、この世界にあるすべてのものに感謝を捧げ、感涙にむせび泣くに至った。

「地方予選に参加を表明するエントリーシートを記入し終えただけだ。そこまで感情むき出しにする奴があるか」

 そんな僕を見て原稿の端をとんとんとそろえつつ、冷徹にバイスは言った。

「さてと。締め切りまでは少しあるが、早速、明日にでも郵送してしまおう」

 封筒にざすりと原稿を詰め込み、それをそのままプラスチック製のカバンに入れる。

「お疲れ様。じゃあ、また明日」

「また明日!」

 いつもの挨拶を返した僕に、バイスはごくごく当たり前の様子で、

「明日から、次の投稿作品のプロット作りを始めるから」

と言いながら、左肩にざっとカバンを乗せる。

 僕は涙をするすると引っ込めながら、

「あ、明日から? プロット作り、ですか?」

とよれよれと問う。

 どんな答えが返ってくるのかなんてもちろんわかりきっているのだが、せっかく手に入れたカタルシスに未練を感じ、僕は彼に問わずにいれなかったのだ。

「ここではもう始まっているよ」

 こつこつと人差し指でこめかみを指さしながら、にこりと笑うバイス。

 あまりのその格好よさに僕は卒倒そうになった。

「実のところ、次の投稿先は完全に絞り切れていないのだが、まあ、それも機を見て同時並行で検討しよう」

 そう告げると、それ以上の質問ないし提案が絞り出せない僕を尻目にバイスはいつものように部屋を出ていった。

 僕は、完成の暁には、抱き合うまではいかないにしろ、手をとってくるくると回るくらいことはする覚悟でいたのだが、突き出した手は完全に宙に浮く形になった。

 しかし、何ら将来の保障が成立したわけでもないのにそれを喜ぶなど、行き過ぎの感は否めない気も確かにした。

 それにバイスはすでに次に向けて動き出しているのだ。

 ということで、僕は涙をぬぐってから、小さく、

「よし!」

とガッツポーズを取るくらいで第1作目完成の儀を終えて、遅れて部屋を出たのであった。

 もってかくのごとく、僕個人としては意気揚々と送付した合作第1作目だったが、残念ながら箸にも棒にもかかることなく実にあっさりと落選した。

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