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怪狩り  作者: 大和煮の甘辛炒め
9/11

対抗戦に向けて

 空が紫色に煌めくのを救出された出久と鳴村が呆然と眺めている。


 朔谷は医務室にて治療されている。


「あれが三つ柱か?」


「規格外だ.....」


 衝撃波がこちらに到達した。


 旗艦が大きく揺れる。


 炎遠理さんは別格だった。


 アレを一瞬で倒してしまった。


「炎輪さんは無事だろうか」


「あそこに三つ柱がいるってことは、無事なんだろう」


 鳴村が自身ありげに言う。


「俺はそう信じる」






「うぉ、とんでもない重さ!」


「弾き返すのは無理そうですね。いなします」


 水火と炎遠理が渾身の力で斬撃の軌道を上にずらす。


 激しい火花が散り、斬撃が上空へ飛んで行った。


「ふー、骨が折れるなぁ」


 炎遠理が斬撃を見届ける。


「さっきの奴は?」


 水火が地表を見渡す。


 が、先ほどの怪使いの姿は見当たらない。


『始怪と思われる女は逃走しましたか』


 二人は揚陸艇に着地する。


「隊員の回収は完了ですね。まさか死人が出ないとは」


 炎遠理が『意』を解唱して水火に話しかける。


 水火がこくりと頷く。


「すぐに寄生様に報告しないとね」


 二人が深く息をつく。


 こうして『灰の孤島』における極秘作戦は怪狩隊側の勝利で幕を閉じた。





 炎輪と朔谷が怪狩隊の医療機関に入院してから一週間。


 二人ともあばら骨や足が折れる重症だったが、順調に回復している。


 出久と鳴村は任務の合間にお見舞いに来てくれていた。


 今日も今日とてそうなのだが、雪降と炎遠理がついてきていた。


「元気そうだな」


 雪降がぶっきらぼうに言い放つ。


「あ、まあぼちぼちです」


 炎輪が答える。


『あれ、あんまり心配されてない?』


 炎輪は心なしかがっかりしたような表情を浮かべる。


 それを察知したのか雪降が炎輪の肩に手を置く。


「始怪と戦って生き残るとは、俺も鼻が高い」


 そう言って雪降が微笑む。


「そっかぁ、雪降さんの教え子か、当たりだなァ」


 炎遠理が納得したように頷く。


 そして炎輪と置いてけぼりになっている朔谷に話しかける。


「今日は私の可愛い部下たちにとあるお知らせを持ってきました」


「お知らせ、ですか?」


 朔谷が怪訝そうな顔を見せる。


「そ、お知らせ。君たち、第二訓練校って分かる?」


「第二訓練校って、大阪の方にある訓練校ですよね」


 怪狩隊員を育成する機関は二つある。


 東京の第一訓練校、そして大阪の第二訓練校だ。


「正解。そこの子たちとの対抗戦が決まったよ」


「対抗戦、ですか?」


 朔谷が自身の体を見る。


「とても出られそうにないんですが」


「大丈夫大丈夫。明後日ぐらいには治ってると思うよ」


「ええ.......」


 朔谷があきれ返る。


「話を戻して。対抗戦についてだけど、ルールはシンプルな大乱戦。なんせ人数差が凄いからね」


 炎遠理が肩をすくめる。


「それに年々隊員の質が下がってきてる。一つ柱も二つ柱も含めて。怪使いの活動が活発になってるタイミングでもあるし、全体的な実力を底上げしときたいっていうのが上の考えなんだろう」


 雪降も口を開く。


「最近は平隊員が上ノ五や四の掃討にあたることが多くなっている。人員の欠損も多くなり組織が回らなくなる可能性もある」


「ま、私はそんなに心配してないけどね」


 炎遠理が笑顔を見せる。


「なんたって君たち優秀だし、平隊員のなかじゃトップレベルだと思ってるから。んじゃ私は任務があるからこれで。対抗戦に関しては雪降さんから聞いてね」


 炎遠理が病室から出ていく。


「ありがとうございます!」


 炎輪が頭を下げる。


「さて、対抗戦についてだが、さっきも言ったとうり第一第二入り乱れての大乱戦だ。第二は四十人いる。乱戦とは言ったが、恐らく全員が結託してお前らを狙いに来る」


「げ、めんどくさ。炎輪、別行動な」


 鳴村がしかめっ面で炎輪に言う。


「上ノ八の討伐なんて大金星をあげた新入隊員だぞ、嫌でも興味は引くだろうな」


 雪降が炎輪をちらと見やる。


「会場は訓練校の電脳教練棟。ヴァーチャル空間にフルダイブでの対抗戦だ。相手を斬ろうが潰そうが一向にかまわん」


「へー、懐かしいところでやるんだな」


 鳴村が訓練生だった頃を懐かしむ。


「食堂のレベル高かったよな」


「それはそう。めちゃ安かったし.......って懐かしむのそこかよ」


 朔谷が鳴村につっこむ。


「詳細は日を追って伝える。お前たちは治療に専念しろ」


 そういうと雪降も病室から出て行ってしまった。


「対抗戦か、また上ノ八乱入事件みたいなのが起こらなきゃいいけどな」


 鳴村が何気なく呟いた一言が炎輪の心を締め付ける。


『あの時は運が良かったから生き残れたからいいけど.......』


 彼女は考えることを辞めた。


 何が来ようとも自分のなすべきことをなす、それだけだ。

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