伏魔
『灰の孤島』の防御兵器がミサイルを撃墜せんと火を吹く。
ミサイルは迎撃をすり抜けて着弾した。
大きな爆発が起き、壁が吹き飛ぶ。
防衛に当たっていた兵士たちが吹き飛んでいく。
揚陸挺が海岸に乗り上げ、兵士たちが走り出す。
炎輪達も駆け出す。
「焦げ臭い!」
「火薬の匂いだ!そんなことより、僕とナリは特殊部隊の援護をするから、炎輪さんと朔谷は怪使いの掃討を!」
何人かの怪使いが此方に走ってくる。
「分かった!」
炎輪がうなずいて『水之意』を解唱する。
朔谷も『毒慈之意』を解唱する。
「水下・疾打・崩波!」
怪使いが吹っ飛ぶ。
「慈愛・天賦!」
朔谷が槍を振り下ろすと優しい光が怪使いたちに降り注ぎ、彼らをどろどろに溶かした。
「私達ってもしかして上澄み?」
技を繰り出しながら炎輪が言う。
「当たり前でしょ、上ノ六を簡単に倒せるし」
毒の波動が周囲を凪払う。
怪使いを一通り全滅させた炎輪と朔谷に出久から連絡が入る。
「現在、敵部隊と交戦中、そっちが片付いたら援護を」
「今行くわ」
朔谷が返事した時。
「君たち」
また声がした。
出久とは違う声だ。
二人が振り向く。
「怪狩りが二人か……」
中肉中背の男が呟く。
彼は目を瞑っていてどのランクか判別できない。
彼から異様な圧迫が押し寄せてくるのを炎輪と朔谷は感じていた。
「あんた、何者だ」
朔谷が槍を構えて尋ねる。
「俺か……?俺は……怪使いだ。名前は忘れた」
男が目を開いた。
炎輪と朔谷が青ざめる。
「もう一つ覚えてる。俺は……上ノ三だ」
上ノ参が不敵な笑みを浮かべる。
両手にガントレットが装着される。
「空波・陸式!」
上ノ三が両手を突き出した瞬間、空気の波動が二人を捉え、吹っ飛ばした。
そのまま強い力で上に引っ張られる。
たったそれだけで二人が大ダメージを受けた。
何とか受け身をとった二人は直ぐに立ち上がる。
二人とも肩で大きく息をしている。
『今までのとは格が違う……』
「上ノ六と上ノ三ではこれほどの差があるなんて……」
「こんな化け物が潜んでたなんて……」
上ノ三が地を蹴る。
一瞬で二人に迫る。
二人がガードしようとするが、後ろに引っ張られ、壁に叩きつけられる。
『意識飛ぶ!』
二人が倒れこむ。
朔谷が槍を杖代わりにして立ち上がる。
「見所がありそうな奴だな」
上ノ参がにやつく。
炎輪が遠くへ引っ張られていく。
「炎輪!」
朔谷が叫ぶ。
朔谷が上ノ三を睨み付ける。
⭐⭐⭐
立派な屋敷の縁側に一人の男が正座をしている。
「私は判断を間違えたのかもしれない。あの四人には重すぎる任務だったろう」
男は後ろに控えている水火と炎遠理に話しかける。
「大丈夫だと思いたいですがねー」
「絶対私達も行った方が良いですよね」
二人が立ち上がる。
「すまないね」
「いえいえ、それでは」
「失礼します」
屋敷を退出した水火と炎遠理が待機している宇宙船に乗り込む。
「さて、お仕事頑張りますか」
「はーい」