初任務
炎輪たちは自分達の待機室で指令書を読んでいた。
「えー、《進星と春水、一硺中隊と共にオリュンポスの『灰の孤島』の軍事基地を制圧せよ。諸君らが同行する理由は、基地に上ノ六から上ノ五クラスの怪使いがいるとの情報があったからである。》……『灰の孤島』ってダサっ!」
炎輪が吹き出す。
「進星と春水は海軍の主力艦だ。一硺中隊もかなりの実力の特殊部隊だし、何が起きてるんだ?」
出久が疑問を口にするが、朔谷が一蹴する。
「怪狩隊の私達には関係ないでしょ。さっさといくわよ」
『お前ら軍に所属してんだろ知っとけよ』
炎輪が呆れる。
⭐⭐⭐
「肥伸から情報が上がってきました」
暗がりに二つの影が見える。
「何の」
女の冷たい声が聞こえる。
電灯がちらつく。
人影の姿が露になる。
背の高い男が女に写真を差し出す。
七支刀を振りかざした炎輪の姿が写っている。
「こいつ……」
女は紫の瞳を炎輪の持つ七支刀に移す。
『遥か昔、これと同じ刀を持った怪狩りがいた。髪や目の色も同じだ。奴の子孫と思わしき者は全て消してきたはずなのだが……』
女の額に青筋が浮かぶ。
女が立ち上がる。
「始怪様、どちらへ」
男が女に尋ねる。
「『灰の孤島』に行って部下に直々に命令を出す」
女は建物を出ていった。
⭐⭐⭐
出久は双眼鏡で灰の孤島を覗いていた。
「噂どうり要塞化していて灰色だな」
朔谷が尋ねる。
「進星と春水の準備は完了してるの?」
「もうそろそろ発射シークエンスだろう」
「艦砲射撃による内部殲滅か……戦闘機と爆撃機無しで上手くいくわけ無いでしょ」
「グレーゾーンなんだろうな。この作戦自体。出来るだけ関与する人間を減らしたいとかあるんじゃないか?」
「どれだけ犠牲が出るのかねー」
朔谷が溜め息をつく。
「すぐに動けるように準備しておくわよ」
二人が連れ立って歩きだす。
一方炎輪はガチガチになりながら揚陸挺に乗り込んでいた。
「緊張しすぎだろ」
鳴村が笑いながら言う。
「緊張するに決まってるだろ!怪使いと戦うだけかと思ってたら戦争に駆り出されるんだぞ!地球から飛び出して、なんもない田舎惑星で一生を終えるかもしれないんだぞ!」
「いや……基準がわからん。怪使いは良くて戦争は良くないのか?」
「当たり前、怪使いなんて人間じゃ無いでしょ」
「言い方!いや事実だけどもね!」
鳴村が炎輪の発言にびっくりする。
出久と朔谷が揚陸挺に乗り込んでくる。
「ギャーギャーうるさいわよ」
朔谷が文句を垂れる。
「そろそろ作戦開始だ。準備は出来てるか?」
「おう」
「大丈夫……緊張ヤバイけど」
「僕らの実力なら大丈夫さ」
インカムからカウントダウンが聞こえる。
轟音と共に無数のミサイルが『灰の孤島』に襲いかかる。
「怪狩り、出動しろ」
インカムから命令がとんでくる。
「了解」
出久が了解する。