ウマ娘単話(カクヨミ周回中)
ウマ娘単話③
嘘と嘘とは嘘
「おはようございます!」
「良い返事ですねっ、まるっ!」
2人がトレーナー室に集まる時はいつもこうしてトレーニングの時間が始まる。2人とも元気いっぱいのキャラであるのでトレーナーの俺は毎日が楽しく過ごせている。どんなウマ娘かというと、案外2人は似ているところがあるウマ娘だ。晴れの日が好きで芝も乾いている方が良い。そして言うこと全てはすべで本音ということだ。1番と言って良いのか分からないが、おでこが出ているというところだろう。
「「さあトレーナーさんも!」」
そして2人合わせて言うものだから断る事はまあ難しいだろう。断る理由も勿論なく挨拶をした方が全然気分が良くなるからだ。
「おはよう、2人とも」
「「まるっ!」」
やはりここも合ってしまった。やはりこの2人は俺的には似ている気がする。得意距離はまあ真反対ではあるが。
「さあトップロード先輩!今日も一緒にー?」
「「バックシーン!!」」
そう、担当ウマ娘はサクラバクシンオーとナリタトップロードの2人だ。担当になってくれた経路を話すと長くはなってしまうが、つまりは一目惚れだ。走りに惚れてしまったのだ。一様トップロードのおかげでバクシンオーの長距離挑戦という俺の悩みが一つ解消できたのだが。しかし俺はスピードだけ重点的に育てるというわけではなかった。ウマ娘の希望を捨て切れずこっそりとスタミナトレーニングも少し混ぜているのだ。多分長距離を走るトップロードは気付いているとは思うのだが。
「またスタミナ上がってますよね!バクシンオーさん!」
「おや、そうでしょうか?ではまだまだ!バックしーん…」
いつの間にか結構な距離を走っている2人だったが流石にバクシンオーはスタミナ切れしてしまった。いつもこの練習ではあるが着実に成長していることが目に見えて分かる。一様今は2000mギリギリまでは一様行けるか行けないかくらいだ。…だが、有馬記念は約半年後。そこで走ろうという考えではあるが今のままでは正直難しいのだ。最初の頃のバクシンオーは1200もまともに走る事は出来なかった。1000もギリギリという。そこから約一年二年、現在シニア級一年目。トゥインクルシリーズ三年目の最後のところだ。それでも2000mまでだ。単純計算に置き換えれば一年に500m増えてるといえど有馬まで半年。あと250mしか増えないという計算だ。そんなところでこの頃結構悩んでいる。
「バクシンオーさん連れてきました!」
「まだまだ…、ばくしん…ですよぉ〜」
しかしバクシンオーの良いところは全てのスタミナを使うというところだ。スタミナがありすぎると全てを使えず育てた分が少し無駄になることも多い。
「深呼吸しろ。すぐ回復するはずだ」
流石に深呼吸はバクシンすることなくゆっくりとする。こういうところはちゃんとしているのだ。さすがは学級委員長ということなのだろうか。そういえばトップロードも学級委員長という存在ではある。そこも案外繋がりだとは感じている。ふたりとも優秀な生徒だと先生からも聞いている。まあ一人は補修など受けてしまうウマ娘ではあるが。
「ふ〜。ハイッ!落ち着きました!それではまだまだー、バクシッ」
「待て待て」
俺は走ろうとするバクシンオーの手を掴み引き留めようとしたが勿論ウマ娘の力に敵うわけがなく引っ張られる。それに気づいたバクシンオーはさすがに走るのをやめてくれた。
「ややっ、どうしましたかトレーナーさん!まさか私と走りたいと?」
「違くてだな。深呼吸しただけで体力が回復したわけじゃないと前にも教えただろ…?」
これで何回目かはわからないが両手を使って表せられないくらいではある。だがそのドジもバクシンオーの可愛さというものなのだろう。
「おや、そうでしたか?では休憩します!桜餅に、バクシーン!」
そしてバクシンオーは桜餅を取りにトレーナ室までバクシンしたのだという。トップロードはその話の間にもずっと走っていた。スピードもスタミナも長距離にいいたり適している多さで、彼女は今の年代のウマ娘では一番のステイヤーとも言えるだろう。そしてバクシンオーはもう戻りパックに入った三人分の桜餅を持ってきた。
「トップロードさーん!わたくし、サクラバクシンオーが桜餅を持ってきましたよー!一旦休憩としませんかー!」
さすがバクシンオー。どこまでも響きそうな声を放ちコースの反対側にいるトップロードにこれを知らせられるのだ。さすがに俺ではこんなことはできないのでこの仕事はバクシンオーがやってくれている。その分横にいる俺の耳は案外死に近いようなものではあるが。
「桜餅ですか!?わざわざ私達の分までありがとうございます!」
「それじゃあ、休憩としようか。トップロード、タオルと飲み物ね」
トップロードはそれを受け取りまるで飲料水のCMのように爽やかに水を飲む。そしてタオルを口で拭く姿がなんとも言えない可愛さとなりトップロードの可愛さをさらに引き立てている。それにしてもとても癒やされる動きだ。そして俺達は一旦トレーナー室へ戻った。2人はソファに座り桜餅を頬張る。とても美味しそうに食べこちらも元気が出てくる。俺も椅子に座り桜餅を口へ運んだ。しかし、この休憩時間特に話すこともやることもなく桜餅を食べ休憩するだけになってしまっている。いや休憩とはもともとそのようなものではあるのだが。
「そ、そういえばととっ、トレーナーさん…。あ、あう。あいし…」
何かを喋ろうとするシュペルだがとても止まり止まりで話す。一体何を言おうとしているのだろうか。それに気付いたバクシンオーは言葉を上げた。
「ややっ!もしやトップロードさん!まさか愛してるゲームをやりたいのですね!」
一体どういうことだろうか?愛してるゲームと言えばよく分からないルールで何処でやるかも全く分からないゲームの一つであるが。まさかそれもトップロードは言うのが恥ずかしかったということなのだようか。
「実はですね!今学園では愛してるゲームが流行っているそうです!友達からによりますとトレーナーさんの気持ちがしっかり聞けて良いとのいうことです!」
大丈夫なのかこの学園は。そんなことをしていたらすぐ理事長などに話が行きそうだが。しかもそれをしてしまえば結構危なくたづなさんが結構なスピードでやってくるだろう。あの人は元競走選手だったのだろうか?
「休憩には丁度良いかなって思ったんですけど…」
それもよく分からないが断る事は難しい。がしかし俺も普通に危ない橋を渡ろうとはしているのだ。どうすれば良いかと試行錯誤して考えてみた結果、まだ緩いものを見つけた。
「それならせめて『好き』とかじゃダメか?流石に愛してるじゃ人としての権限が無くなる可能性がありバクシンオーとトップロードのトレーナーをすることが出来なくなるからな」
それを聞くと2人はすぐ理解してくれた。やはりトレーナーという存在はレースをすることに対して重要だと分かっているのだろう。俺もそれで納得してくれて良かった。
「それでは行きますよー!私が合図をしたら開始です!準備は良いですねっ!」
「バクシンオーさん、宜しくお願いします!」
バクシンオーが楽しそうにこのゲームを始めようとする。一様自分の立場を考え真面目にやっていこうと考えた。
「それでは行きますよー!よーい、バク好きです‼︎」
「好きです‼︎」
「「好きです‼︎‼︎」」
いきなりフライングスタートで始まり恥ずかしみよりそのフライングスタートの方で笑いそうになってしまったがギリギリ耐える。しかしゲームは始まったのだ。俺も攻撃しないといけない。やられてばかりなどでは勝ち目がないからだ。
「俺もす」
「好きです‼︎」
「好きです‼︎」
…2人が俺に言わせる隙を与えずずっと好きと連呼する。しかもなんか凄い気持ちが篭っているような感じもありこのままでは間違いなく負けるだろう。しかしどうすれば良いのやら。
「んー!好きです!」
「わたくしも好きですよ〜‼︎」
「LOVE!」「And!」「PEACE!」「です!」
そして言う言葉が変わってきて頭がおかしくなってきそうだった。色々な意味で混乱しているのだろう。もう次は何が来るのかとも考えるようになった。
「トレーナーさん!」「愛してる!」「みんな!」「愛してる!」「さあ!」「このままでは!」「勝てませんよ!」
本当もうこの2人はダメというかもう何も言えなくなってしまった。というか色々ありすぎてもう体力が無い。これでは本当に頭痛くなる。2人はずっと言い続け俺が喋る隙間も無いが言わないといけないと思い俺は集中し、2人に言う瞬間にトレーナー室の扉が開いた。
「すいません、生徒から少々騒がしいとの話が入ってきたのですが…」
「ああ俺も2人のこと好きだよ‼︎大好きだよ‼︎‼︎」
…その一言だけを聞いた理事長秘書はもちろん俺のことを見てにっこりと笑い、恒例の言葉を言った。
「トレーナーさん、あとで理事長室までお越し下さいね?」
多分色々な事で誤解されているとは思うがこの後の俺はどうなってしまうのだろうか。それを考えるともう落ち込むことしかできなかった。俺は2人のことの方を見てみるとそこには俺と目を合わせようとせず横目で何処かを見るバクシンオーと恥ずかしくなった顔を見られたくないので顔を隠すことしか考えられなくなったトップロードがへたっと座っていた。やり始めようと言ったのはそちらなのになぜすぐそうなってしまうのだ。今、攻撃は最大の防御ということわざを破壊することができた。ただ2人の防御力が無かっただけのそう。結局その後理事長に事情を話したら理解してくれ許しが貰えた。正直それで良いのかと普通に思った。なぜそのゲームは公式から許されているのだ。そして俺がトレーナー室に戻った時には2人はとっくにトレーニングをしており競争していた。トレーニング熱心でとても良いと思ったが、どうやら体の熱を冷ます為に走っていたらしい。この頃から2人はトレーニングの効果がとても上昇しそのままバクシンオーは有馬記念に出走した。最終コーナーへ入ってもバクシンオーはバテることなく直線へ入る。しかし後ろからG1勝利ウマ娘が追いかけてきたがバクシンオーはさらにギアを上げ最後のスパートへ入って行った。さすが学級委員長というところ、だろう。俺達は声を上げ最後までバクシンオーを応援した。
「バクちゃん、いっけぇー‼︎‼︎」
「行け、サクラバクシンオーッ‼︎」
その後、彼女はスプリンターであり、ステイヤーという最強最高の称号を手に入れ、世界中に名を轟かせたという。しかしマイルと中距離は走れないという何とも面白いウマ娘に。その後トップロードも元々菊花賞の3000mを勝ったあと有馬や天皇賞・春も勝利したと言う。そして俺は2人を育てたトレーナーとして色々なところで取り上げられた。まさか、誰もあのゲームからこんな事にはなると思わないだろう。それは俺達3人だけの秘密となり、永遠に隠され続けた。
「ハーッハッハッハッハッハッ‼︎大バクシン的勝利です!」