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Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
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記憶

「煩わしいだろ?お前の中の、記憶を取り戻したいという衝動」


確かに、煩わしいものであることは間違いない。


戦闘面では、身体が戦い方を覚えてくれているおかげでなんとかなっているが、時々現れる欲求みたいなものは、どうしても抗えない。


それが起こると、意識が分裂して、引っ張られるような感覚に陥る。


厄介なのは、それがいつ起きるか分からないということだ。

今回は戦いの中で衝動は襲ってこなかったが、もし次本当にヤバい時衝動に襲われたら。大変なことになってしまう。


そう思うと、早く取り戻した方が良いとは思うけれど、なんでショウに心配されているのか。


「それを早く取り戻さないと、お前は…」


ショウは何か言いかけたが、途中で口を止めてしまった。何を言いたかったのだろう。分からなかったけれど、溜息を付いた後、ショウはまた口を開く。


「まあいい。これも余計なことだな。…じゃあ、いくぞ」


『…!?』

ショウの言葉が終わった瞬間、びりっと頭から足の爪先に掛けて駆け巡った衝撃。まるで雷にでも打たれたような。身体中の内側で、電気が走っているような。


思念体になっていて、感覚は無いはずだけれど、なぜか刺すような痛みを感じる。

もしかして、おれのもとの身体と思念体がリンクしているから、そちら側の痛みが伝わっている?


分からない。というか、それを考えていられるほど、悠長に構えている余裕はなかった。


痛いし。苦しいし。きつい。

何これ。記憶を取り戻すのに、こんなに痛みが必要なのか?


続いて、脳天が熱くなった。


それが何なのかは分からなかった。ただ、何かがおれの頭の中に流れ込んできているのが分かる。それはさながら、頭を無理やりこじ開けて、熱湯を流し込まれている気分だ。そんなことはされたことがないはずだけど、そんな感覚だ。


頭が割れる。ノイズが走る。雑音が脳内を掻き乱していく。


痛い。やめろ。もういい。おれはただ———。

痛みがピークに達した時。


声が響いた。


その声は、徐々に鮮明になってゆく。それが女の声だと気付くのに、そう時間は掛からなかった。


『———ユウト』

景色は、あまり変わっていない。ショウの真っ白な世界のままだが、おれの目の前には、ぼんやりと誰か映っている。


その誰かが、はっきりと自分の名前を口にした。


『…あなたが』

顔は分からない。ぼんやりとしたままだ。ただ、黒髪なのだろうか。輪郭の外側が、黒くなっている。瞳の色も、どうやら黒だ。


あんたは、誰だ?

その黒髪の女は、おれの問いには答えない。ただただ真剣な雰囲気で、おれを見つめている。


そして、そっとおれに手を伸ばし、小指を立てて見せた。


『あなたが、守ってあげなさい。約束だからね』


凛とした声音が、脳に木霊した。

それは、懐かしさと哀愁を漂わせ、心の奥底へと浸透してゆく。


なぜだろう。心地いい。聞いたことがある。これは、誰?


でも、それは確信へと至らない。段々と、麻痺した脳が、痛覚を取り戻すように——。


「…どうだ?少しはおれのことを信用してくれただろうか?」


女の顔は、いつの間にか、引き攣った笑みを溢したショウに変わっていた。


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