賭け
あの、巨人。今はなんとか逃げ切れたが、まだやつは私たちを追いかけている。
予想外だったのは、巨人の執念深さだ。
上手く巨人の足を止めて、ユウトを除いた全員、奥へ続く通路に避難できたのだが、巨人は、その通路へ無理やり突っ込んできたのだ。ぎりぎり巨人が入れるぐらいだったので、巨人は壁やら天井やらを破壊しながら、私たちを追いかけてきた。
結局、何個かの部屋を通り過ぎて、脇道に逃げることができたのだが。巨人はまだここらをうろついているようだ。
「それに、その…、ユウトのことは?」ゲンが言いづらそうに、訊いてきた。
「ああ、あいつなら大丈夫よ、きっと」
私はきっぱりと応えると、ゲンは「は?」と口を開いた。
自分でも分からないけれど、何故だかそう感じる。いや、そう思えるのは、あれを、間近で見ていた私にしか分からない。
黒い化物と戦った時。ユウト、あいつは確かに、一人で化物を倒してしまった。
それも、尋常じゃない強さで。
普段のユウトの戦い方は知っている。良い意味でも悪い意味でも、丁寧に、慎重な戦い方をしている。感情に左右されずに、理性を保ったまま行動しているのがよく分かる。
でも、あの時は違った。荒々しく、攻撃されることを分かっていて突き進んでいく、自分の身の安全を顧みない戦い方。普段とは全くの逆だ。
そして、ユウトは勝った。
あれを見て、今までは、本気を出していなかったのかと思った。何かを隠して、戦っていたのかと。
しかし、あの時の記憶はあまり覚えてないという。そのあとの戦闘も、あんなに激しく戦わなくなったし、嘘も、ついていないらしい。あれは何だったのだと不思議に思っていたのだけど。
さっき、コウタを庇った時、私は見逃さなかった。
あの巨人の一撃を、細い剣一本で最小限に抑えていたことを。
あれは、見事な受け流しだった。ああでもしなければ、剣が折れて叩き潰されていただろう。
ユウトに何があったか知らない。
でも、あいつは穴に落ちただけでは死なない。
単純にそう思っているだけかもしれない。
「…なんで、そう言い切れるんだ?」ゲンが私に尋ねた。
「うーん。…女の勘、ってやつ?」
説明するのも面倒なので、適当に言った。
「とりあえず、あのデカブツをどうにかしましょう。あんなのに追いかけられてたら、おちおちユウトを探しに行けないわ」
「何か、手はあるのか?俺の盾や、コウタの槍では全然効いているように見えなかったが」
確かに、今の自分たちのパーティでは、攻撃がほとんど通らない。私のナイフやダガーも無理そうだし。唯一効きそうなのは、ミコトの魔術攻撃だ。
「…一つだけ、思い付いたわ」私は指を一本立ててみせる。
「まじか、それはなんだ?」
「…まあ、けっこう危険だとは思うけど」
他に、方法が見つからない。それに、早く倒して、ユウトを助けにいかないといけない。
あいつには、あの時助けてもらった借りがある。
だから。
勝手に死んでもらっちゃ、後味悪いのよね。
「じゃあ、説明するわね」




