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Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
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陰謀

ずる賢く、という言葉で一瞬ショウが頭を掠めた。


そうだった。おれはあいつの指示でここに来たんだった。


忘れちゃいけない。ショウはおれの記憶を奪った張本人だ。何をされるか、想像もつかない。そんなやつがここに行けと言ったのだ。何か起こるに違いない。


唐突に、緊張感が顔を覗かせた。ナイフを持つ手に力が入る。


大丈夫、今回は、もう何かが起こることは確かなのだから、それに気を付ければいい。

それに、確信ではないが、一つ楽観的な考えが頭の片隅にあった。


ショウは、おれを死なせたいわけではないということ。


あんな力が使えるのだ、あいつがおれを殺そうとするなら、いつでもできるはずだ。それをせず、指示だけを送っている。


あの世界じゃ、何もできないからおれに指示を出して死なせようとしているのかもしれないが、それも少しまどろっこしい。やつにとって、おれが何かしらの利用価値があるからこそ、こんな関係になっているのだと思う。


自分の利用価値なんか知ったこっちゃないけれど、むざむざ殺されに行くような指示は出さないはずだ。


もちろん、全部おれの憶測だ。予想外の事態に対処するため、身構えておく必要はあるが。


でも、一週間そこらで、何度か修羅場を潜ってきた。

今度は、知識も経験もある。

仲間もいる。


問題無いはずだ。


しかし、身構えているうちに、おれたちは黒い化物から素材を集め終わってしまった。


あれ?

何にも起こらなかったな?


おれの杞憂だったのか。


おれは改めて、集め終わった素材を眺めてみた。


素材として価値がありそうなのは、爪、牙、そして尻尾だ。どれも鋭く強度もありそうなので、高く売れるかもしれない。


特に、尻尾は格別だ。先端の硬い部分は一メートルほどもあって、担げば、武器のランスみたいだ。これは期待してもいいのではないか。


「おおー…、なんか、高く売れそうな匂いがぷんぷんするぜ…」


コウタが、うへへ、とゲスな笑いを浮かべている。機嫌はもう戻ったみたいだ。


「いや、違うな!高く売れそうじゃなくて、高く売ってやる!」

「どういうこと?」


「あたかも値段が高そうな感じで売るんだよ。言葉巧みにな!ほら、この爪なんか、黒くてカッコよくて、イカしてるだろ?的な感じで」

「なんか、悪徳商法みたいになってる気が…」


「バッカ野郎!こっちは生きていく金が必要なんだよ!善人ぶってる場合かお前!モテねぇぞ!」


「そりゃそうだけどさ…って、モテるかどうかは関係ないだろ…」

まあ、こんな時はコウタに任せておいて大丈夫だろう。金のことになると気合が違うんだよな、この人。


もちろん、誰だって、金は欲しい。誤解を招きそうな言い方になるが、ぶっちゃけ金さえあれば何でも出来てしまうことは間違いない。


でも、金があり過ぎるのはどうなのか。おれはあまり金に執着心が無い方、だと思う。だから、今の貧乏な生活にも、馴染んでいたりする。


それなら、いっそ貧乏でいいんじゃ?いや、貧乏もよくはないけれど。普通に暮らしていけるだけの金が一番だ、と思う自分がいる。


そういう貧乏性な性格だから、たくさんお金を稼ごうと、仕事に対する向上心にも欠けているのかもしれないな、とふと感じた。


じゃあ、おれにとって必要なものって何だ。


そう。おれが欲しいもの。


金でも、強さでも、名誉でもなくて。

それは————。


「…ユウ君、手、止まってるよー?」


ミコトの声で、我に返った。

そうだ。今、集めた素材を袋に入れている途中だった。


何、考えてんだ。


また、あの衝動と違和感が顔を覗かせていた気がするが、もうどこかに消えていってしまった。


そうやって、気を抜いていた。抜いてしまっていた。


「…あれ?」

おれは一瞬手が止まった。

なんだろう、今、少しだけ視界が霞んだような。


目を擦っても、変化はない。やっぱり、うっすらとまだ白んで見える。目が、おかしくなったのか。


「…ねえ」ミコトの声が聞こえた。


「なんか、周り白くない…?」

おれは顔を上げた。本当だ。さっきまで何ともなかったのに。これは自分の目がおかしいんじゃない。


霧だ。


窪地の外側から、真っ白な霧がなだれ込んでいる。風に流されるように、ふわりと優しく、それらはおれたちを包み込む。


ものの数秒で、あたりは白い世界へと変化していった。


背筋がひやりとした。


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