表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
32/116

******


不思議な、夢を見た。


覚えているわけじゃない。ただ少し、夢の残像というか、余韻みたいなものが頭の中に残っているだけだ。でも夢って、時間軸が無くて、取り止めが無くて、前後関係があやふやなくせに、妙に、現実味を帯びる時がある。


だから、起きた時、夢と現実が重なって、頭がこんがらがる。本当にこれは現実なのか、と自分自身に問いただす。


寝苦しさから、おれは目を覚ました。


「…気持ち悪」

胃の中が空っぽで、少し吐き気がした。


朝することは決まっている。


顔を洗って、寝癖を直して、夜の間に回しておいた洗濯物を干して、制服に着替える。まるで機械みたいに、同じことの繰り返しだ。頭が働いていなくても、身体が勝手にそういう風に動く。


部屋のドアに手を掛けた時、初めて自覚する。いつの間にか、もう学校に行く準備が出来ている、と。そこでやり忘れたことが無いか何度か確認して、ドアを開け、鍵を閉めた。


今日の天気は生憎の曇りだった。傘、いるだろうか。持っていくと雨が降らなさそうだし、持っていかなかったら雨が降りそうだ。結局、部屋に取りに行くのが面倒だったので、傘は諦めた。


学校までは徒歩二十分程度。あれこれぼーっとしているうちに、目の前には学校の校門が現れる。校門をくぐり、靴を下駄箱に放り入れて、教室へと足を向ける。


「あ、おはよー、勇君」


教室のドアを開けると、本を手にした実琴が自分の席に座っていた。

相変わらず、彼女は学校に来るのが早い。「おはよ」とおれは実琴に軽く手を挙げて応えると、隣の席に座った。


「…何読んでるの?」

「えーっと、今日は、これ!じゃじゃん!」実琴は嬉しそうにおれに表紙を見せてきた。


「…『必見!未解決事件の謎!』?何それ?」

「いやあ、これがなかなか面白いんですよー」

「この前はSF小説読んでなかった?」

「あ、もうその時代は終わったから」

「終わったんだ…」


おれは少し呆れてしまった。実琴は色んなジャンルの本を読むのが好きだ。でも、あまりにも幅が広すぎて、全然付いていけない。


まあ、良いことなんだけどさ。最近の女の子は何が好みか分からなさ過ぎないか。実琴が特殊なだけか。


「お、今日は何読んでんだ?」


不意に後ろから声が聞こえた。振り返ると、元が鞄を担いで、おれを見下ろしていた。こちらは相変わらずでかいし顔が怖い。見下ろされるといつにも増して凄みがある。


「ふっふっふ、時代はミステリーなんですよ」実琴は誇らしげに本を見せつける。


「実琴って、本当によく分からない趣味してるわよね…」


元に隠れて見えなかったが、遥香も一緒に来ていたようだった。耳にはイヤホンのコードがぶら下がっている。


「あれ、今日は早いね、遥香」おれはちょっと驚いた声音で言った。


「別にいいじゃない」遥香は不機嫌そうに呟く。「あいつみたいな遅刻魔と一緒にしないでよね」


「お、噂をすればだ」元は何かに気付いた様子で、廊下の方を見た。


「おーっす!今日も良い天気だなぁ!諸君!」

「曇天だよ…」


勢いよく教室のドアを開けたのは、遅刻魔こと光太だった。おれは思わずツッコまずにはいられなかったが、光太は全く気にしていない。


「えー?光太君が早いの意外だー!」実琴が口元を抑えて驚いている。


「まーね?俺ほどにもなるとね?こんなこと朝飯前っつーか?朝飯は食ったけど?」

光太はぐっと、短い髪を掻き上げて見せた。何を恰好つけているんだろう、この人は。


「…知ってるよ、お前、宿題やってないんだろ」

元が眉をひそめて、光太を睨んだ。ギクッという感じで光太が動きを止める。あ、図星なんだ。


「…元さん!いや、元様!哀れな俺に慈悲をっ…!!」

光太はものすごい素早さで、土下座を決めた。


「ほんとお前な…」はあ、と元は大きく溜息をついた。「恥ずかしいから、顔上げろって」


「あ、私もよろしく」遥香が間髪入れずに元と光太の間に手刀を入れた。


「遥香、お前もか…」元がさらに深い溜息をついた。遥香はふふん、と何故か威張っている。いや、遥香も褒められてないからね?


「あはは、元君モテモテだねぇ」実琴がくすっと、頬を緩ませる。


「そういう問題じゃねえよ」

元は面倒くさそうにしているけれど、少し頬を赤くさせた。実琴に言われて、照れているのだろうか。


おれはちょっとだけ、その光景を見て安心した自分がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。コメントさせていただきます。 やっと学校の課題に先が見えたので今イッキ見してるのですが、やはり現代?と異世界が入れ替わるのは何か理由がありそうでめっちゃ気になります。 他…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ