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Re:D.A.Y.S.  作者: 結月亜仁
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傭兵ギルド

大通りを突き進んで、さらに左側の路地を抜けると、目的地が見えてくる。


目の前から見ると、明らかに他の建物とは雰囲気が違うこの建造物には、大きな門が設えられている。開かれた門を進むと、その全容が明らかになった。


パッと見教会に近い造りをしているものの、出入りしている人間は皆信徒らしい恰好をしていない。むしろ、無骨な輩ばかりだ。


エントランスを突っ切って、玄関にたどり着いた。


ドアの上の看板には、でかでかとこう書かれている。


“傭兵ギルドアルドラ支部”


ここは、傭兵ギルドが管理している、専用の建物だ。

傭兵。それがおれたちの仕事だ。


おれたちは傭兵ギルドのドアを開けた。ギィ、とドアが軋む音を立てて空いた先には、大きな廊下が見えた。街の大通りほどではないが、多くの人々が廊下を行き来しているところをみると、それなりに繁盛しているようだ。


おれは行き過ぎる人と目が合いそうになって、さっと視線を下に向けた。

やはり、傭兵と言う仕事をしているだけあって、どうも皆威圧的だ。自分がただそう感じているだけで、本当は違うかもしれないけれど、まだ慣れていないというか。こんな場所にいる自分の場違い感がすごい。


けれどゲンたちは全く気にも留めず、奥の方へ廊下を進んでいく。

慣れてるよなあ、皆は。


おれはそれでも人と目が合わないように周りを眺めた。腹筋がバキバキの目つきが鋭い女。ガラの悪い、チンピラみたいな男。上半身の筋肉が盛り上がっていて、短足に見える男。


この人たちは全員、傭兵だ。


そういうおれたちも傭兵の端くれなのだが、ゲンたちの話を聞く限り、まだおれたちは傭兵業を始めて日が浅いようだ。


しかし、いくら日が浅くとも、傭兵であることに変わりはない。


これが、皆に記憶が無いことを言えない要因の一つでもあった。


傭兵は、仕事をする際にパーティという少人数の集団を形成する必要がある。一人で仕事ができないわけではないが、基本的にはこのパーティを組むことは必須だ。


そこで、もし、記憶を失っていることが皆にバレてしまったら。たぶん、パーティを追い出されてしまうことは確実だ。皆の足を引っ張ってしまうから。そうなるとまずい。おれはこの世界の知識をほとんど知らないうえに、他の誰かに頼る宛もない。そんな状況で一人突き放されたら、生きていける保証なんて、どこにもない。


だから、皆の迷惑にならないように、バレないように、一週間を過ごしてきた。上手に隠せていたかどうかは、正直不明だ。たくさんミスをして、何度も死にかけた。今日だって、あのボスザルシュのパンチが当たっていたら、どうなっていたことやら。考えただけでぞっとする。


廊下の突きあたりで左右に分かれた廊下を右側に沿って歩いて行く。


なぜおれたちがこの傭兵ギルドに来たのかというと、依頼達成の報告をするために立ち寄ったのだ。


傭兵には様々な仕事がある。その中で一番ありふれているのは、掲示板に貼られた依頼を遂行する仕事だ。傭兵ギルドには依頼を受け付ける窓口があって、毎日たくさんの依頼が募集される。


依頼内容は魔物の討伐だったり、護衛の仕事だったり。多種多様な仕事が存在する。その中で自分たちに合った仕事を探して、完遂することが目的だ。


大きな廊下を右に曲がると、幾つものカウンターが設置された場所が見えてきた。ここが、依頼完了を伝えるための窓口だ。


「すいません」ゲンが窓口の女性に声を掛けた。


「この依頼を受けていたんですけど」

ゲンは丸めた紙切れを女性に渡した。これは、掲示板に貼られてあった依頼書だ。女性はさっとその依頼書に目を通すと、優し気な口調で応えた。


「はい、確認しました。では、証拠品、素材などがあれば、提示をお願いします」

コウタがゲンの前に進み出て、人の顔より小さめの茶色い袋を差し出す。女性はそれを受け取ると、「少々お待ちください」と言って、奥の方に姿を消した。


袋の中には何が入っているかと言うと、ザルシュの右耳が詰められている。おれは想像しようとしたところで、気持ち悪くなって止めた。


普通にグロいかもしれないが、そうでもしないと、倒したという証拠にならないのだ。仕方がない。


今回受けた依頼は、ザルシュ数匹の討伐だった。


ザルシュは魔物の中でも低級に属する魔物だが、それなりに数が増えると厄介なのだ。群れが大きくなると、街にも被害を与え始める。外壁で守られたアルドラ自体は直接影響が無いと言ってもいいが、アルドラを訪れる、旅人や商人などが襲われる可能性がある。


アルドラはいわば外からの貿易で成り立っている部分が多い街だ。食糧や日用品、農作物は、アルドラの街でほとんど扱われていないため、商人から買い取るしかない。その商人たちが魔物に襲われて商品が無くなってしまったとなると、死活問題に陥るのは目に見えている。


そうならないために定期的に魔物を狩ることを、アルドラの上層部のお偉いさんたちが推奨しているため、この依頼は低級の魔物を対象としているわりに報酬が良いということで、意外と狙い目だった。


暫くすると、女性が拳大の袋を持ってきて帰ってきた。


「お待たせしました。こちらが報酬金です。中身をお確かめください」

ゲンが、金目のものが入っているであろう袋を手に取った。


これが、おれたちが生きていくために必要な、生命線だ。


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